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プロローグ

いわゆる「ネトゲ廃」であるところの俺ーー篠原(しのはら)伊那波いなば、高校一年生ーーは現在警察病院のとある個室に入れられている。


白い壁に、パイプ椅子が一つ。


しかしその椅子には俺は座っていない。


俺は部屋にあるもう一つのものーー仮想現実世界にダイブする装置<Virtual Reality Diver>通称<VRD>の中にいた。


「接続はどうかね?」


パイプ椅子に座った男が尋ねる。


警視庁の人間だそうだ。


「はい……はい、OKです。 チェック終わりました」


ジェル状のベッドに横たわりながら身体全体を薄暗い色のドームに覆われた俺は、眼前に<body reaction check has finished>という文字が表示されるのを待って答える。


男は腕時計を見つめて、


「そうか。 よし、それじゃあ宜しく頼んだ」


マジックミラーになっていてよく見えないはずのこちらにピシッと敬礼をし、そして振り返ることなく部屋を出て行った。


この後も何人か俺のような人間が控えているらしいので、忙しいのだろう。


俺は予定時刻まで、一連の流れを振り返ることにした。


あれはほんの数時間前ーーーーー



◇◆◇◆◇



「あー、始業式とかの校長のハナシってなんであんなに長いんだろうな、イナバ?」


「さあ……最早全国どこでもお決まりだよな」


今日は都立高校が一斉に入学式の日、都立第三高校に通うことになった俺も入学式だった。


30分ばかりの校長の話を聞き終え、ご入学おめでとうございますで始まる形式ばかりの電報を紹介された後、自教室へと戻ってきた。


適当な席に座り、真新しい制服を早速着崩している幼馴染の少年、青木将人(まさと)と他愛もない雑談を交わしていると、担任の教師が入ってきた。


「はい、席について。 みんな、入学おめでとう。 私は今年一年間みんなの担任をすることになった森誠太(せいた)だ、よろしくな」


よろしくおねがいしまーす、と唱和し、森が事務連絡に移っていると、


ガラっ


と音を立ててスーツ姿の男が3人入ってきた。


その場でピシッと敬礼をする。


右手を降ろし、真ん中の男が


「失礼。 私は警視庁インターネット犯罪取締課の渡部(わたべ)だ。 ある生徒を呼び出させてもらう」


教室中がざわつく。


そんな中、森が、


「その生徒とは誰の事でしょうか?」


と尋ねると、男は、胸ポケットから紙切れを取り出し、


「篠原伊那波君だ」


俺の名を告げた。


「伊那波っ!? なんで」


将人が声を上げるのを制し、


「何のご用でしょうか」


ゆっくりと立ち上がる。


「そう睨むな。 何も君が何か罪を犯して、逮捕しに来たという訳ではない」


「では、一体」


……何なのでしょうか、と続ける前に男に遮られる。


「詳しい話は車中でしよう。 来てくれ。 万が一拒否するようならば、これも使わせていただく」


言葉と同時に右端の男が手にしていたカバンから少し大きめの紙を取り出す。


「出頭書ですか」


「そうだ」


つまりお願いに見せかけた命令ということだ。


観念して、


「……わかりました」


男に続いて教室を出る。


「イナバっ!!」


呼びかける将人に手を振り、深呼吸を一つ吐いて黙ってついていく。


玄関を出るとパトカーではなく一般車両が一台止まっていた。


中から若い男が出てきて、後部座席の扉を開ける。


「どうぞ」


男二人に挟まれる形となった俺は、助手席に座った、先程話していた男に話しかける。


「では、その、話というのを聞かせていただいても宜しいですか?」


「うむ。 単刀直入に聞こう。 君は感覚ダイブ型インターネットゲームが得意かね?」


「……はい?」


聞き間違いかと、問い返す。


「通称VRMMORPGと呼ばれるゲームのことだ。 君は<イナバ>という名で<マジックウォリアーズ>というタイトルをはじめとして様々なタイトルで上位ランカーのはずだ。 違ったかね?」


……どうやら聞き間違いではないらしい。


それどころか、俺の個人情報まで調べているらしい。


マジックウォリアーズとは、現在世界中で大人気のVRMMORPGだ。


「確かに、VRMMORPGは得意ですが」


「そこでだ。 資料を見てもらいたい」


俺の右の男が紙を取り出す。


「これは……?」


そこにはこのような文章が記載されていた。




親愛なる日本政府の諸君。

インターネットは好きかね?

このご時世、インターネットは本当に世界中を繋いだ。

一軒の民家からでも、世界中に情報を広めることが出来る。

我々はあるゲームを創った。

VRMMORPGだ。

ただのRPGではない。

昔から想像されてきたデスゲームだ。

が、ゲーム内のHPが0になれば現実でも死ぬ、というものではない。

ゲーム内で一度でもHPが0になれば、そのプレイヤーは二度とこのゲームをプレイできない。

サーバ―内のプレイヤーデータも抹消される。

一度ログインすれば、ゲームクリアまでログアウトは出来ない。

そんなデスゲームだ。

このゲームを半年以内にクリアしたまえ。

出来なければ、世界各国の政府機関のサーバーをハッキングし、情報を改竄する。

間違って米国のミサイルを発射してしまうかもしれないぞ?

対応をよく考えたまえ。


「先日、政府のウェブサイトがハッキングされたという事件を知っているかね?」


「はい」


「その事件時に、首相官邸に投げ入れられていたのだ、この文章と、一枚のディスクの入った封筒が」


「そのディスクが、文章にある<ゲーム>ですか」


短い首肯と共に、透明なケースが渡される。


中に入っているのは、CD-ROM。


表面に<THE GAME>と黒バックに白文字で記載されている。


「封筒に入っていたのは、白いCD-ROMだけだった。 それは複製だ」


さて、と置いて男は、


「その複製というのが問題なのだ。 ゲームをクリアするだけなら、数で押し切ればいい。そう思い、そのゲームのデータを大量にコピーした。 しかし、だ。 501枚目からはデータが破損するようにプログラミングが施されていた。 今も職員がプログラムを解読しようとしているが、全く目途がついていない。 しかしそうこうしている間に期限の半年が来てしまう。 だから、」


「……全国から腕の良いプレイヤーを集めようというわけですか」


「その通りだ。 伊那波君、君の力を貸してくれないか」


暫し、逡巡する。


それをどう捉えたのか、


「勿論、報酬は出すし、休学期間の出席日数についても考慮する。 親御さんに連絡をすると、「本人に任せる」とのことなので、後は君の意志次第なんだ」


躊躇う。


突然の事態に頭がついて行っていないのか?


違う。


状況は理解している。


これは、喜びなんだ。


様々なゲームの中で自分が政府の命を受けて死地へ向かったことは数知れずある。


だが、実際にそんなことは起こりえないと思っていた。


ゲームのやりすぎで現実との境界がはっきりしなくなっているだけだ、と。


己に言い聞かせてきていた。


今日この時までは。


「やります。 俺に任せて下さい」


身体の状態をチェックするため、ということで病院に連れていかれ、体中に電極を貼り付けてVRDの中に入り、最後の説明を受けて男が出ていき、今に至る、というわけだ。


「今更不安になってきたんだが……ゲームバランスはちゃんと考えてあるんだろうな? 鬼畜ゲーじゃ、ないんだろうな?」


そんなことを考えているうちに時間が経ったらしい。


眼前に、アラームと共に<後一分でログインします>との表示が浮かぶ。


「よし、気合入れるか」


両の頬をパシッ、と叩き、深呼吸を一つ吐く。


<5,4,3,2,1、START>


視界が白に包まれた。

どうも、朝比奈です。


いろんなVRMMOモノ読んでて、影響されて書いてしまいました……


暇な時間にちょっとずつ書いていくんで、宜しくお願いします。

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