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古民家カフェで紡ぐ恋〜歳上部下は犬系男子?〜  作者: 暦海


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35/43

仄暗い空間で

「…………ここ、は……」



 ふと、目が覚める。すると、霞んだ視界に映るは広く仄暗い空間。見覚えは……うん、ない。それに、さっきから何だか窮屈で――



「――あっ、起きたんだ? おはよ~」


 すると、不意に届いた陽気な声。いや、喜悦に満ちた声と言うべきか。ともあれ、声の方向――右の方へと徐に視線を移す。すると、そこには長い茶髪を纏う鮮麗な女性。そして――



「――高月(たかつき)ちゃん、だっけ? 久しぶり、2週間ぶりくらいかな? もしかしたら、小夜(さよ)から聞いてるかもしれないけど――私は、中野(なかの)玲香(れいか)。小夜の元カノだよ、よろしくね?」



 そう、尚も愉しそうな笑顔で告げる。どうやら、今ここ――何処かの廃墟であろうこの空間にいるのも、両手首を縛られ後ろの壁に拘束されているのも彼女の仕業のようで。……さて、どうするかな。うん、やっぱりまずは――


「……それで、元カノさん。どうして、このような愚行を?」


 何はさて措き、ひとまずそう尋ねてみる。……まあ、聞くまでもない気もするけど。すると、尚も愉快そうな――それでいて、奥に敵意を滲ませた瞳で私を見据える中野さん。そして――


「……まあ、だいたい分かってるんだろうけど――そろそろ、返してくれないかしら? 私の大事な元カレを」


 そう、不敵な笑みで尋ねる。……まあ、そうでしょうね。そもそも、それ以外に考えられない。記憶違いでなければ、彼女と私はあの日が初対面――如何に私が嫌われ者と言えど、知らない人にまで私個人として恨まれる覚えは流石にないし。


 ともあれ、問われたからには返答を。尤も、返答次第ではあの右手――棍棒らしきなにかを掴む彼女の右手が私めがけ振り下ろされることになるのだろう。……それでも、私は――



「――――高月先輩!」


「…………へっ?」


 

 卒然、空間を切り裂く叫び声。さっと視線を移すと、そこには――


「――お怪我はありませんか!? 先輩!」

「……ええ、心配ないわ。ありがとう……戸波(となみ)くん」

「……そっか、良かった」


 こちらへ駆けつけるやいなや、私の拘束を外しつつ尋ねる戸波くん。どうして、ここが分かって――そう思ったものの、今はいい。今は、こうして来てくれたことに安堵……そして、感謝の念でいっぱいだから。



「……聞くまでもないでしょうけど、一応――これは、貴女の仕業っすか? 玲香さん」


 すると、ほどなくそう問い掛ける戸波くん。彼の背中に――尤も、私を護るために正面(そこ)に立ってくれていることは流石に分かっているけれど――ともあれ、彼の背中にほぼ完全に隠れる形になっているためその表情は見えない。……だけど、その声音……あるいは、雰囲気(くうき)からひしひしと感じられる。彼が、この上もなく怒気を顕にしていることが。それは、あの時――私の鞄が荒らされていた時に見せた以上の、思わず身震いするほどの強烈な怒気(もの)で。



「……ふうん、そっか。随分と大切なんだね、その今カノちゃんのことが」

「……それは、以前(まえ)にも言ったでしょう。そんなわけないって。そんなの、先輩に失礼にもほどがあるって。それより、質問に答えてください。これは、貴女の仕業っすか?」


 すると、ややあって意地の悪い声で答えを返す中野さん。いや、答えてはいないか。少なくとも、質問に対しては。……ただ、それにしても――


「……ええ、そうね。でも、別に何もしてないよ? ただ、ちょっと眠らせて拘束しただけ。その子から、貴方を返してもらうためにね」

「……ふざけないで、ください。そんな……そんなことのために、先輩を危険な目に――」

「――でも、それがその子のためでもあるんじゃない? いつか、貴方がああいう人だって知ったらその子だって幻滅する。それなら、早い内に離れた方がお互いのためだと思うけど」

「…………それは」



 すると、喜悦に満ちた声でそう口にする中野さん。ああいう人……この前の、あの話? 彼が、男として――



「――うん、きっとショックを受けちゃうよね。小夜くんが、女に容赦なく暴力を振るう最低な男だなんて知ったら」






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