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古民家カフェで紡ぐ恋〜歳上部下は犬系男子?〜  作者: 暦海


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気配

「おはようございます、高月(たかつき)先輩! 今日が俺が淹れますよ。何が良いっすか?」

「……おはよう、戸波(となみ)くん。そうね……それなら、紅茶をお願いしても良いかしら?」

「畏まりました!」



 それから、1週間ほど経た朝のこと。

 目を覚まし、夢現の意識にて徐に身体を起こす。すると、ほどなくそっと鼓膜を揺らす柔らかな声。その方向へ視線を移すと、声音に違わぬ柔らかな微笑を浮かべる美男子の姿。……あれ、起きてるよね? 実は、まだ夢の中なんてオチで……いや、よそう。とぼけてみても仕方がないし。


 さて、この状況に関して説明を。本件――ストーカーの件が解決するまで、ひとまずここ高月海織(みおり)の部屋で一緒に暮らしてほしいとの旨を昨夜お願いしたわけで……うん、説明するまでもなかったね。



「――それにしても、1週間も経つのに未だに信じられないっす。こうして、高月先輩とルームシェアをしているなんて」

「……いや、ルームシェアって……まあ、間違ってはいないのかもしれないけど……こう、もっと適切な表現がある気がするのだけど。……こう、どう、どうせ……いえ、何でもないわ」


 それから、数十分経て。

 軽い朝食を取りつつ、そんな他愛もない応酬を交わす私達。……いや、ルームシェアって。まあ、確かにルームはシェアしているけども……こう、なにか違う。


 まあ、それはさて措き……今はさて措き、その気持ちは理解できる。私だって、自分でお願いしておきながら未だに信じられない。随分な矛盾だと我ながら思うけれど……それでも、こんな日々がずっと続けばなんて思ってしまう自分がいて。


 

 


「……いやー今日は特に忙しかったすね先輩。でも、それがなんか楽しくもあったり」

「ええ、そうね戸波くん。流石に少し疲れたけれど、それがむしろ充実感に繋がっていたように思う」

「そう、そうなんすよ! 流石先輩!」



 それから、およそ半日ほど経て。

 すっかり夜の帷が下りた帰り道を、未だ残る昂揚感と共に歩いていく私達。この会話が示すように、今日は本当に忙しかった。それで、仕込みなどの時間も後にずれ込んでしまい、結果として閉店作業も平時より遅くなってしまい……まあ、良いんだけどね。彼の言うように楽しかったし、お客さんがたくさん来てくれるのはありがたいし嬉しいから。……ただ、それはそれとして――



「――ところで、いつまで付いてくるつもりっすか?」


 すると、ふと振り返りそう問い掛ける戸波くん。それは、私に対して……ではなく。そもそも私は隣にいるのだし。それでは、誰に対してかと言うと――


「…………あっ、えっと、その……」



 少し後方、電柱の陰でオロオロする華やかな顔立ちの女性――カフェ『TAKATSUKI』の大事な戦力たる大学生スタッフ、藤巻(ふじまき)さんに対してで。



 ――ここ数日、何度か気配は感じていた。そして、彼女である可能性もあるとは思っていた。だからこそ、通報することは避けたわけだし。


「……あっ、えっと、その……ごめんなさい!」

「あっ、ちょっと待っ――すみません、先に帰っててください先輩!」

「……へっ? あっ、ちょっと待っ――」



 すると、困惑の様子でそう言い残し脱兎の如く去っていく藤巻さん。そして、そんな彼女を一心不乱に追っていく戸波くん。……まあ、そうなるよね。流石にこのまま逃がすわけにもいかないし。



 ともあれ、このまま佇んでいても仕方がないのでそのまま帰路を進むことに。……それにしても、可能性は考慮していたものの……正直、違っててほしかったという思いはあって。尤も、理由はおおかた察せられるけ――



「――――っ!!」


 刹那、背筋が凍る。どうしてか、去ったはずの……いや、違う。これは、もっと異質(べつ)の――


 ……そもそも、どうして気付かなかった。あの日――戸波くんに来てもらった日に感じた視線は……恐怖は、ここ数日の――さっきの比なんかじゃなかった。……つまりは、彼女とは別の――



「――――っ!!」



 瞬間、口が何かに覆われる。そして、ほどなく意識が途絶え――




 



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