罪悪の念
「――本日はありがとうございます、高月さん。とても楽しい時間でした」
「……いえ、こちらこそ今日はありがとうございます、岡島さん」
それから、2時間ほど経て。
閑散とした住宅街の交差点にて、柔らかな笑顔でそう告げてくれる岡島さん。失礼とは承知だけれど……ほんと、物好きな人ね。私との時間が楽しいなんて。
さて、あの後だけれど――まあ、改めて説明するほどのこともなく。基本コミュ障で無愛想な私にも笑顔で会話を引っ張ってくれて……この辺りは、彼と似ているところが……いや、そうでもないかな。
「……ところで、高月さん。本当に良いのですか? もうすっかり暗くなっていますし、もし遠慮なさっているのなら――」
「……いえ、決して遠慮などでは。本当に、もうすぐそこですので……お気遣い、ありがとうございます岡島さん」
「……そう、ですか。それでは、お気をつけて。お休みなさい、高月さん」
「……ええ、お休みなさい」
その後、挨拶を交わし反対方向へと歩いていく。伝えた通り、ほどなく到着する家へと足を進める最中、今日のことを思い起こす。
……やっぱり、申し訳ないよね。彼は、私との時間を楽しみに来てくれた。そして、実際に楽しんでもくれていた……と思う。なのに……私は、そうじゃなくて。私はただ、利用しただけ。言ってみれば、戸波くんに対する当てつけのために彼を利用しただけ。彼は、また誘ってくれると言っていたけど――もう、応じるべきではないだろう。もちろん、こんな言い分が適切だとは思わないけど……それでも、彼のために私が出来るとすればこれが唯一の――
「――――っ!!」
刹那、パッと振り返る。だけど、視界に映るは仄かに灯る住宅街――先ほどまでと同じく、人ひとりいない閑散とした風景で。……気の、せい? いや、でも……そう言えば、あの時も――
「…………」
……いや、駄目だよね。うん、流石に申し訳なさすぎる。そもそも、もう部屋はすぐそこ。入ってしまえば流石に危険はないだろうし、そこから警察に連絡するなりすれば十分に対処可能で……なのに、そんな思考とは裏腹に私の手は右ポケットへと伸びていく。そして――
「――ねえ、戸波くん。その……本当に、申し訳ないのだけど――」




