どうしてだろう。
「……その、すみません。お恥ずかしいところをお見せしてしまって」
「いえ、お気になさらないでください。むしろ、素敵だと思います。あのように一心に集中している姿は」
「……あ、ありがとうございます……」
それから、しばらくして。
夜の帷が下り始めた空の下を、そんなやり取りを交わしつつ進んでいく。……うん、本当に恥ずかしい。幸いなのは、上映中ゆえ暗かったことくら……まあ、それでも十分に恥ずかしいけど。
ともあれ、映画を終え向かっているのは夕食――なのだけど、まだ場所は知らない。先日、夕食の希望を尋ねられ、とりあえずお洒落っぽさを出すべくフレンチと伝え……うん、ほんとなんで無駄な見栄を……まあ、それはもういいか。
ともあれ、そう伝えた結果、希望に沿ったお店を予約してくれたみたいで。そういうわけで、申し訳なさと感謝の念を抱きつつ歩くこと十数分。そして――
「――お待たせしました、高月さん」
「…………へ?」
そう、爽やかな笑顔で告げる岡島さん。一方、私はポカンと呆気に取られて。と言うのも、眼前には見覚えのある高いビル――あの日、戸波くんと一緒に来たあの高層タワーだったから。
「……あの、どうかなさいましたか高月さん」
「……へっ? あっ、いえなんでも!」
すると、ほどなく不思議そうに尋ねる岡島さん。……しまった、ついぼおっとして。いや、それにしてもこんな偶然……まあ、ないこともないか。フレンチでは結構有名だったはずだし、あのお店。……あっ、でも同じビルなだけで同じお店とは限ら……なくはないか。確か、この中ではあそこだけだったし、フレンチ。
ともあれ、動揺を抑えつつ広い玄関口を進みエレベーターにて会場へ。……ところで、どうしてだろう。全く同じ経路を進んできたはずなのに、景色があの日と全く違って見えるのは。




