知り合い?
「――いやーめっちゃ良かったっすよ先輩! 的に当たりそうな打球もありましたし!」
「ええ、ありがとう戸波くん。貴方のお陰よ」
「いえいえ、先輩の実力っすよ! マジで感動しましたよ、俺! いやーほんとにすごいっす!」
それから、数分経て。
そう、軽やかなハイタッチと共にそんなやり取りを交わす私達。その屈託のない笑顔から、気遣いなどでない心からの称賛であることが疑いようもなく伝わって……やった、すっごい褒めてもらえた!
まあ、実際のところ騒ぐほどの結果ではないのだけども。残りの13球中、ヒット性の辺りは4本、その内の1本が彼の言ったように的に当たりそうな大きな打球だったけど、後はコツンと当たるか空振り……それでも、1回目……そして、直前に比べれば頗る――
「…………もしかして、小夜……?」
「…………へっ?」
そんな歓喜の最中、ふっと現実へと引き戻される。届いたのは、彼の名を呼ぶ小さな声。その方向――後方へと視線を向けると、そこには明るく長い茶髪を纏う鮮麗な女性の姿。恐らくは、20代前半から半ばくらいの……ただ、それはともあれ……えっと、知り合い、だよね? それに、あの呼び方……少なくとも、ただの顔見知り程度ではなく――
「…………その子、ひょっとして小夜の彼女?」
「…………ふぇ!?」
そんな思考の最中、不意に届いた衝撃の問い。……いや、衝撃でもないか。むしろ、この状況ならごく自然な解釈だろう。……ともあれ、彼の返答は――
「……そんなわけ、ないじゃないっすか玲香さん。俺なんかの彼女なんて、ほんと高月先輩に失礼にもほどがあります。そもそも、短い間とは言え俺なんかが玲香さんと付き合っていたことだって未だに信じられないのに」
「…………へっ?」
そう、自嘲の見える微笑で答える戸波くん。まあおおかた予想通りとか、それでもそんな悲しいことを言わないでほしいとか、いろいろ過る思考はある。だけど、何より……今、確かに彼は――
「……ふうん、そっか。まあ、そうだよね。女の子と付き合うとか、小夜にできるわけ……いや、付き合うのは簡単かもね、小夜なら。でも、そっから続くわけないよね。近い内に、女の子の方から離れていくだろうし」
「……それは、どういう意味でしょう?」
すると、何処か不敵な表情でそんなことを宣う女性。そして、そんな彼女に尋ねたのは戸波くんでなく私。そして、茫然としているであろうことが彼の視線から見なくても伝わる。きっと、私の声音に怒気が孕んでいたのを感じ取ったのだろう。まあ、隠したつもりもなかったしね。そのくらい、今の彼女の言葉は許容し難――
「……ふふっ、まあ知らないよね。でも、知らない方が幸せかも。だって、小夜は男として最低の部類の人間だから」




