空耳?
「……それでは、次は戸波くんの番だけど……言っておくけれど、私を気遣って手を抜くなんて真似は許さないから」
「ええ、もちろん。そういうの嫌いなことが分かるくらいには見てるつもりっすから、先輩のこと」
「……そ、そう。それなら、良いのだけど」
ともあれ、過ぎたことは仕方がない。いったん切り替え、会話の後バッティングゲージへと向かう戸波くんを見送る。……ただ、それはそうと……全く、また余計なことを。
まあ、それはともあれ――さて、お手並み拝見といこうかな。彼が入っていったのは、140キロのゲージ――私には良く分からないけれど、周囲の会話から判断するになかなかに速いそうで。
と言うわけで、全然ダメだったら思いっきり揶揄ってやろう。自分のことは棚上げに思いっきり揶揄ってやろう。それは流石にどうなんだという声が内部から聴こえた気もするけど……うん、きっと空耳よね?
そういうわけで、内なる天使の声を抑えつけ彼の姿を一心に見つめる。そもそも天使なんていたのかなどというツッコミが聴こえてきそうだけど、それもひとまずスルーし一心に彼を見つめる。さてさて、お手並みのほどは如何に――
「……ふぅ。やっぱり、高月先輩の前だとかなり緊張しますね。でも、わりと良い感じだったかなと」
「…………ねえ、戸波くん」
「はい、どうしました?」
それから、数分経て。
そんな言葉と共に、何とも爽やかな笑顔でゲージから出てくる美男子。汗もしたたる良い男とは、まさしく彼のような人のことを言うのだろう。……まあ、それはともあれ――
「…………いや、上手すぎじゃない?」
さて、ざっくり結果を説明すると――20球中、18本がヒット性。そして、その内の9本がホームラン性。さらには、その中の4本が小さな丸い的に辺り景品まで……うん、思ったよりとんでもないね、この人。
「あっ、先輩。良かったら景品を――」
「いらないわよ」
「そ、そうっすか」
すると、ふと届いた言葉に何とも無愛想に答えてしまう私。まあ、無愛想なのは今に始まったことではないけれど……でも、流石に感じ悪かったかな。そもそも、私から誘っておいてこの態度はいかがなもの――
「……あの、先輩。良かったら、もう一度挑戦してみませんか? 俺も、協力しますので」
「…………へっ?」




