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古民家カフェで紡ぐ恋〜歳上部下は犬系男子?〜  作者: 暦海


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大事な任務?

「…………ふふっ」



 それから、1時間ほど経て。

 思わず、声が洩れる。そんな私の胸中には、溢れそうなほどの昂揚感が沸きに沸いて。それはもう、身体中の水が全部沸騰して水蒸気になっちゃうくら……いや、それはまずいけど。あと、何を言ってるんだろう私は。


 そういうわけで(どういうわけで?)、いったん熱を冷ますべく深く呼吸をする。……よし、落ち着いた。いつものクールで無愛想な私に戻ったはず。


 さて、そんな私の左手には半透明の小さなカゴ――移動中、カブトムシなどやクワガタなどを捕まえ入れた虫カゴがあったりして。……うん、ごめんね? 任務を終えたら、ちゃんと野生に返すから。



「――さてさて、どこにいるのかな~」



 ともあれ、お目当ての人を探すべく軽やかに森の中を進んでいく。こちらから見つけにいくなど、鬼ごっこというゲームにおいて言語道断ではあるのだけど、正直勝ち負けなんてどうでもいい。そもそも、鬼ごっこを提案したのも1人でこっそり虫を捕まえにいくための時間稼ぎのため。こういう場所なら、姿を(くら)ますこともわりと容易だし。


 ところで、どのタイミングで披露しよう? 会った瞬間? それとも、タッチされた後? 彼が勝利に酔いしれ油断しているその瞬間の方が……いや、別に酔いしれないか。まあ、何はともあれまずは彼を見つけることが先決で――



「…………あれ?」


 そんな楽しい思考が、ふとプツリと途切れる。と言うのも……今更ながら、視界にはまるで見覚えのない風景が映っていて。いや、森の中には違いないのだけど、それでも……えっと、もしや――



「………………迷った?」





「…………はぁ」


 それから、しばらくして。

 少し息を切らしつつ、鬱蒼とした森の中を彷徨う。空はもう、すっかり黄昏に染まっていて。……はぁ、疲れた。携帯は……うん、やっぱりまだ繋がらない。


 その後、ほどなく1本の樹にヘタリと凭れ掛かり座り込む。さっきまでは聴こえなかった虫の音が、やけにうるさく響く。なんで、こんなことに……いや、なんでも何もないか。ただ、馬鹿な企みをしたから。準備が整うまでは彼に見つからぬよう、なるべく視界の悪いところを選んで進んでいたから。……きっと今頃、懸命に探してくれているのだろう。何処にいるかまるで宛てもない私を、きっと必死に探してくれているのだろう。……うん、ごめんね()な――



 ――――ポン。



「…………へっ?」


 卒然、肩に伝わる柔らかな感触。しばし茫然――そして、俄に胸が震える。そして、ゆっくり顔を上げ振り返ると、そこには――



「――すみません、お待たせしました。でも……一応、俺の勝ちっすよね? 先輩」



 ――そう、黄昏に映える眩い笑顔で告げる美男子の姿があって。





 

 

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