意外なご趣味?
「――いやー、それにしても意外っすね。先輩もこういうの好きだったなんて。なんか嬉しいっす!」
「……ええ、意外とね」
それから、2週間ほど経た1月下旬。
柔らかな陽が優しく差し込む森の中にて、ニパッと晴れやかな笑顔で告げる戸波くん。シンプルな白いTシャツが、スタイルも良く爽やかな彼に良く似合ってはいるのだけど……うん、寒くないの?
ともあれ、先ほども言ったように私達がいるのは森の中。電車で40分ほど揺られ、ここまで足を運んできたのは……まあ、いわゆるキャンプのようなことをするためで。
さて、事の経緯はというと――やはりと言うか、私が彼を誘ったからで。尤も、キャンプが好きかと問われれば別段そうでもなく……と言うか、そもそも行った記憶がない。では、なぜキャンプに……それは、数日前のある言葉がきっかけで――
『……そうっすね……正直、虫は苦手っす』
夕方頃、休憩室から届いた声。扉越しなので、微かにしか聞こえなかったけど……それでも、誰の声かは確認するまでもなく明白で。
ともあれ、私の心が俄に震え……そっか、虫が苦手なんだ。それは、何と言うか……うん、見たい。今まで弱点らしい弱点の見当たらなかった彼が、いざ苦手なものを前にしてどんな反応をするのか非常に見てみたい。是非とも慌てふためいてほしい。それこそ、ブルブル震えて抱きついてきてほし――
「――それにしても、ほんとにキャンプ好きなんすね先輩! そんなに嬉しそうな表情して」
「……へっ? あっ、ええ、そうなのよ!」
すると、私の思惑など露知らないであろう戸波くんが何とも無邪気な笑顔で……うん、ちょっと罪悪感。
「ところで、貴方は……いえ、貴方もキャンプが好きなようだけど、だったらよく来たりするの?」
「……うーん、そうっすね。以前はそれなりによく来ていましたが、最近はほんとに時々っすね」
「……へぇ、ほんとに好きなのね。……ちなみに、それは友人と?」
「そうっすね、以前はほとんどそうでしたけど最近は専らソロキャンっすね」
「…………ソロキャン?」
「ああ、ソロキャンプのことっす。文字通り、一人で楽しむキャンプのことっすね」
「……あ、ああ、ソロキャンプね、ソロキャンプ! ええ、もちろん知ってるわ! それはもう、生まれた瞬間から!」
「生まれた瞬間から!?」
ともあれ、そんなやり取りを交わしつつ森の中を歩いて行く。……ふぅ、危ない危ない。うっかりボロが出そうだった。ソロキャンプね、ソロキャンプ……うん、しかと覚えた。




