精進が大事?
「いやー何とか乗り切れましたね、先輩!」
「ええ、そうね。ただ、次回からはもっと俊敏に隠れられるよう精進をしなくては」
「いや精進の方向がおかしいですよ。なんで隠れること前提なんすか」
その後、ほどなくして。
そっとラックから出てきた後、和やかにそんなやり取りを交わす私達。見る限り、扉は既に閉まっていてこの空間には私達以外の誰もいない。先ほど鍵の音もしたし、もう帰ったとみて間違いないだろう。……ふぅ、良かった。
「……さて、そろそろ帰ろうかしら。遅くまでありがとう、戸波くん」
「いえ、お安い御用です! と言うか、俺の方こそありがとうございます。先輩とケーキ作るの、めっちゃ楽しかったんで!」
「……そう、それなら良いのだけど」
それから、20分ほど経て。
2人でケーキを食し軽く片付けを終えた後、事務室に戻りつつそんな応酬を交わす私達。それにしても……まあ、相変わらずね、彼は。そんな台詞をそんな笑顔で言わないでよ。やっと落ち着いてきた鼓動が、またドクリと跳ねて――
ともあれ、ほどなく事務室に到着。そして、部屋の電気を…………あれ?
「……どうかしましたか、先輩?」
「……いえ、ただ、電気が消えていたので……」
「……ああ、そう言えばつけっぱでしたもんね。でも、それはさっき来た人が消してくれたんじゃないっすか? 俺らが消し忘れたと思っ……あっ」
すると、自身の言葉の最中ハッと気付いた様子の戸波くん。そう、さっき来た人が私達が消し忘れたと思い事務室の電気を消してくれた――うん、そこまでは何ら疑問はない。なにせ、店には誰もいなかったはずなのだから。だけど、ならば同じく誰もいないはずのキッチンの電気も消してくれそうなもの。もちろん、そちらには気付かなかったという可能性もゼロではないけど……それよりも、より考え得るのは――
「………………え」




