次回に向けて?
「――いやー、今日はほんと楽しかったっす! ありがとうございます、高月先輩!」
「いえ、お礼を言うのはこちらの方よ。今日は付き合ってくれてありがとう、戸波くん。それから……私も、とても楽しかったわ」
「……そっか、それなら良かったっす!」
それから、数時間経て。
茜に染まる空の下、駅までの道を進みながら和やかな会話を交わす私達。……うん、本当に楽しかった。とりわけ、あのデュエットはとても……まあ、恥ずかしくもあったけど。
「ともあれ、これでもう恥ずかしくないっすね先輩! まあ、そもそもあの歌唱力でなんで恥ずかしがる必要があったのかも分からないっすけど」
「……ええ、そうね」
その後、歩みを進めつつ笑顔で告げる戸波くん。やはりと言うか、私の言った理由をそのまま受け取っている辺りは全く以て彼らしい。疑うことを知らない、純粋で真っ直ぐな彼らしい。
……いや、嘘じゃないんだけどね。実際、久しぶりに会う友人に恥ずかしいところを見せたくなかったのは紛れもなく事実だし。ただ……まあ、もう一つの理由にはまるで気が付いていないのだろう。
……ちょっと、言ってみようかな? 例えば、その友人が実は男性だった……なんて言ったら、彼はどんな反応を――
「――――っ!!」
「…………先輩?」
「……あっ、いえ……何でもないわ」
卒然、思考が止まる。……今のは、いったい……いや、気のせいかな? うん、それよりも――
「……ねえ、戸波くん。もし、良ければ――」
「――もし良かったら、また一緒に行きましょうね、先輩!」
「……ええ、是非」
すると、私の心中を知ってか知らずか、ニパッと微笑みそう言ってくれる戸波くん。いや、きっと分かった上で言ってくれたのだろう。そんな彼に心中にて感謝をしつつ頷き答える。さて、となれば次回に向け練習をしておかなくては。でも、やはり1人で行くのはハードルが高いので再び戸波くんに付き合ってもら…………あれ?




