第10話 錬金術は一日にして成らず
スケルトンナイトキングを倒し、俺の手元には念願の【錬金術】のスキルスクロールがある。 迷わずそれを使用すると、脳内に無機質なアナウンスが響いた。
『個体名:佐藤正高がスキル【錬金術】を習得しました。スキルマスター(10個)まで残り6つです』
「よっしゃ……これでポーション代ともおさらばだ」
俺は早速、ダンジョン内のセーフティエリアで【錬金術】を試すことにした。 素材は、道中で拾った『回復草』と、ひとりが水魔法で出した『清らかな水』だ。
「いくぞ、錬金開始!」
手をかざし、イメージを注ぎ込む。だが――。
『錬金失敗。素材が灰になりました』
「は?」
目の前には、ポーションどころか、ただの黒い粉が転がっていた。
「マサタカさん、焦げ臭いです……」 「これじゃ飲めないにゃあ。毒薬でも作るつもり?」
ひとりとホノカが冷ややかな視線を送ってくる。 おかしい。スキルさえあれば一瞬で完成するんじゃないのか? 俺は【魔眼】を発動し、自分の手元を解析した。
「……なるほどな。ただ魔力を流せばいいわけじゃない。水の温度、草の成分を分解するタイミング、そしてそれらを結合させる魔力の『回転数』が重要なんだ」
理屈はわかった。だが、それを実際にやるのは至難の業だ。 二回目。魔力を回転させすぎて、水が爆発した。 三回目。温度が足りず、ドロドロの緑色の液体ができた。
「……これ、誰か試飲してみるか?」 「「絶対嫌です(にゃ)」」
二人は即答した。 その後も、俺は数時間、試行錯誤を繰り返した。 ひとりに「もっと冷たい水を出してくれ」と頼み、ホノカには「草を細かくちぎってくれ」と指示を出す。
「マサタカさん、水、もう出ません……魔力が……」 「お腹すいたにゃあ、もう帰りたいにゃあ」
二人が限界を迎え始めた頃。 俺は【魔眼】の焦点を極限まで絞り、魔力の糸を一本一本編み込むように操作した。 ――今だ!
パッ、と手元が淡く発光する。 そこにあったのは、濁りのない、透き通った紅色の液体。
『錬金成功:自家製HPポーション(低級)が完成しました』
「できた……!」
俺はそれを一気に飲み干した。 じわっ、と体に熱が回り、ナイトキング戦で削れた体力が回復していく。 店で買う20万のポーションよりは効果が薄いが、素材費はほぼタダだ。
「これ……これなら、【轟弾】を撃ち放題に近づける!」
まだ使いこなすには手間取るし、成功率も低い。 だが、この苦労の先に「最強」があると確信した。
「よし、あと100本くらい練習するぞ。ひとりは水、ホノカは草だ!」 「「えええええええ!?」」
東京の夜は更けていくが、俺たちの特訓は終わらない。 最強しか目指さない俺にとって、この一歩はとてつもなく大きい。




