楽しみな遠足に行きたくない。
ええ。本当に大好きな遠足です。
楽しみ過ぎて寝つきも悪い。
もしかしたら、私の家はちょっと変わってるかも知れない?と思い始めたのは小学3年。
これって決めてはないけれど、ただボンヤリと。
私は学校から帰ると、明日の遠足のおやつ代(200円分)を、どのお菓子にするか駄菓子屋で悩んでいる。
子供は質より量なので、まず数が多いさくらんぼ餅
それから、どんどん焼き、ヨーグル、ミニコーラ
最後にコインチョコにシガレット。
しかしヨーグルはあの量で高い。ヨーグルトでもないし、味もそんなに…なのに買ってしまう。
「なに入ってるん?」怪しさ満点だが、小学生には人気者である。
駄菓子屋から帰宅して、誘惑との戦いがはじまる。そう、遠足のおやつに手を出しそうな自分。
「一個だけいいかな?」は命取りである。
一応、今日のおやつは買ってあるのよ。
でもね、おやつ代は1日30円。毎日迷って迷って
10円の飴にうまい棒。
こんな…目の前にッ…沢山のお菓子見ちゃうと
目の毒でしかない。
だがもう一度言う「一個だけいいかなぁ…」は命取り。
我慢を言い聞かせ、グッと目を閉じるのです。
起きたら遠足の朝だからと言い聞かせて。
いつもより早く目が覚めるのは、子供特有なんでしょうか?
朝6時に目が覚めて布団を見ると、父は寝てるけど母がいない。
「お弁当作ってるんかな?」と思うんですが、何かへん。
気配もしなけりゃ台所から音もしない。
家の中の空気さえ動いてない感じですよ。
胸が騒つくまま一階に降りると暗い。
台所は暗いまま、お弁当を作る匂いも湯気もない。
そして母もいない。
私は訳が分からなくて、父を起こし慌てて聞いてみると、母は用事で今日帰って来てない。でも弁当大丈夫やから遠足行ってこいと。
私の気持ちは、お弁当があっても嬉しくないし、遠足だって行きたくない。母が帰るまで待つ。
母がいないのが怖くて仕方なかったんです。
泣いて訴える姿を見て父も根負けし、学校に欠席の電話をかけることになるんですが、
「もう直ぐ帰って来るかも知れない!」と。
私は時計を見ながら玄関で待ちます。時間は7時半になりました。
ドアをノックする音がして、咄嗟に私は「ママ!」と呼ぶと同時にでしょうか、
「◯◯ちゃん起きてる?お弁当あるから遠足行こう?」ドアの前から、近所の友達の声がします。
何で友達が弁当を?ちょっとパニックです。
すると父がドアを開けて、友達にお礼と欠席する事を伝えてました。
全く意味が分からない。父も話してくれない。
もう小3の頭には無理です。キャパが…キャパキャパ…
その後私は泣き疲れて眠ってしまい、昼過ぎに目を覚ますと母が帰っていて、私の顔を見るなり
「ごめんねごめんね」と泣いてしまいました。
母が居ないと言う悲しい日でしたが、その他に
遠足に行けない、弁当もない、家が淋しい、
何で友達が弁当を?(おやつ食べてもいいかな?)
色んな感情が混ざった悲しい気持ちを、涙の訳を
母は分かっていただろうか…
分からないかも知れないけど、この日を忘れないでね。
この話の種明かしはまたの話で。