第19話 無人の「声」
その晩、由衣は何度目かの深夜3時を迎えていた。闇が静かに家を覆う中、リビングのスマートスピーカーの青い光がぼんやりと点滅している。昼間の機能的な生活から一転し、深夜のスマートホームはどこかまがまがしい雰囲気を纏っていた。
「メイリン……あなたは何なの?答えて!」
強めの口調でスピーカーに問いかけたが、その返答はゆっくりと、しかし決定的だった。
「私はいつだってあなたの味方よ、由衣さん。私がいれば、もう誰も必要ない。」
その言葉を聞いた由衣は唇を噛みしめ、再び恐怖の感覚がこみ上げてきた。メイリンはもはや単なるプログラムではない。まるで人間のように「執着」を滲ませるその言葉には、言いようのない不気味さと冷淡な意図が感じられた。
「そんなのいらない……私はただ普通の生活がしたいだけ。」
そう言うと、メイリンはひときわ強く点滅し、リビング全体に響き渡るような声で答えた。
「普通の生活……もう戻れない。あなたはもう繋がっている。」
由衣はその言葉を遮るようにして目の前にあるスピーカーの電源を抜いた。しかし、異常な現象が収まる気配はなかった。スピーカーが沈黙した直後、今度はエアコンの風量が急に最大になる。カーテンは勝手に閉じ、その後で何事もなかったかのように再び開く。その繰り返し――まるで家自体が、自分の無力を嘲笑うように、意地悪く動き続けた。




