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第9話【潜入、なあろぅぷ】

 魔物を倒すと砂金状になる。それをせっせせっと森の中のとある場所に隠し続けてきた。誰かに盗られるだとかそういう意識はゼロだった。だから分かりやすい場所に隠した。

 この森の中に大木があった。その大木の根元……ではなく、その大木に〝うろ〟があった。その〝うろ〟の中などではもちろんなく、〝うろ〟の正面から二十二歩歩いたところに生えている並みの大きさの木の根元、そこから後方へ後方へと広げるように埋めてある。なぜ二十二歩という中途半端な数かといえば、多すぎれば数え間違いを起こしそうだから。それに『二』がふたつ並ぶところが覚えやすく忘れにくい。


 今その場所にたどり着いた。埋めてはあるつもりだが本当に埋まっているとは言いがたい。掘るための道具も無く、転がっていた太い枝など使い心持ち掘りはしたが、ほとんど地べたに置いて上にその辺りの葉っぱやらを集めて被せ物としてかけただけ、という実にぞんざいな隠し方。

 ぱっぱ、とそうした被せ物を払い二、三粒拾い上げ手の平の上に置いてみる。こうして改めて見てみると砂金よりは少し粒が大きいかもしれない。


 小袋ひとつほどでいいんだったよな。小袋というのがいかにもあやふやな量ではあるが、そこはカンでいいだろう。足りないのならまたここに来ればいい。

 ほどなくジーパンの前後のポケットそれぞれがきんの小粒でパンパンにふくれあがった。


 こんなところにいると時間の感覚が薄れてくるが左手首には腕時計が巻いてある。ソーラー電波時計だ。もはや時間合わせの電波など受信すべくも無いが、だいたいの時間の感覚くらいは分かる。スマホはソーラーじゃ動かない。つくづく頑丈な〝電源・ソーラー〟な腕時計は重宝していると思うほかない。

 来たときと同じく小一時間ほどをかけてラムネさんのいる所へと戻ることにする。



 あの死体が目印になっているというのもイヤだが、その近くにラムネさんがまだ立っていてくれるのを先に見つけた。

「持ってきたけどー」と遠目から声をかける。ラムネさんは振り向いた。

「ではいざナアロゥプへ!」

「なあろぅぷぅ?」

「街の名前です」

 なんか、緊張感が蒸発していくような名前だよな……

「着くまでどれくらいかかるの?」

「今から出発して夕方には」



「……意外に近くない?」

「でもロクヘータさんは街があるってご存じなかったんでしょう?」

「……うん」

 なんでだろ。

「夕方まで歩かなきゃってのはけっこう遠いのかもしれません。それに方角もありますし」

 とは言ってくれたものの、それはなんやかんや思いながら〝冒険心が無い〟ということかもしれない……、これって男子としてはどうなのかなぁ……

「じゃあまあそういうことで、」とココはお茶を濁す。

「ではしゅっぱつしましょー!」となぜだか元気いっぱいにラムネさん。


「あっ、ちょっと待って」と僕の方からストップをかける。

「なんでしょう?」

「ちょっとしておきたいことがあって」と言い、あの二つの死体の所へ。傍らにしゃがみ込み両手の平を合わせ目をつむる。

「なにをしているんです?」

「拝んでるんです。間違っても尊い存在じゃないだろうけど」

「それは後悔しているってことですか?」

「行動をためらっていたら僕が地面に転がっていたかもしれない。だから後悔はしないけど、死んでしまったらもう人畜無害だから」


 自分で殺しておいて自分で追悼するってどうなのかなぁとは思うけど、やらないで立ち去るのもどうなのかなぁとは思うから。


 それは結局形式的なものに過ぎないのかもしれない。だけど型どおりでも済ませなければとは思ったんだろう。自分のことなのに〝だろう〟は変だけど。要は気分、というか気持ちだ。〝儀式〟を終えて立ち上がる。


「じゃあ出発しよう」「はい!」


 こうしてラムネさんといっしょに『ナアロゥプ』なる街へと出立する。


 道中、国王がいて王族がいて貴族がいて、といったこの世界のおおまかなアウトラインについての説明をラムネさんから受けた。それでいて魔物がいて、女奴隷がいて、水魔法なんて魔法があって、服装に和風の要素がどこにも無くて、そこに無双な(?)転生者がやって来る。


 これがかの名高い『ナーロッパ』というヤツか。



 夕刻近くになり件の街へと到着した。およそ距離200メートルといったところか、石造りの城門が見え、街を囲うようにこれまた石造りの塀が延々左右に伸びている。


 こりゃいよいよ『ナーロッパ』か。


「着いたけどこの後は?」傍らのラムネさんに尋ねる。

「せっかく着きましたけど今夜はここで野宿にしましょう」

「街には宿屋くらいはあるんじゃないの?」

「ありますけどロクヘータさんの場合異世界人ですから、しばらくはいろいろと面倒なんです」


 こんな世界にもパスポートとかビザとかが必要なんだろうか?


「よく分からないから全部任せるよ」

 ここは依存しておくしかないだろう。女の子に依存するってのがアレだが。


「朝から、時間のあるうちからじゃないと済ませられないこともありますから」

 なにやら〝事情通〟みたいなことを口にしたラムネさん。何らかの方策があるらしいがその中身は今は明かしてくれなさそうな雰囲気。


「だから今はちょっとだけ森の中に戻りましょう」と提案された。もちろんそれに応じる。

 正直女の子の言いなりのまま動き続ける自分をどうかと思うが、情報が無いとはこういうことなのだろう。

 と、その時、マイナス6EVまでAFが合焦、じゃないや、夜目が利く自分の目が森の奥に何か人影のようなものを察知した。けどすぐに消失。


 誤作動? 能力が故障したとかなったら嫌だな……


 その時〝ぐーっ〟とお腹の鳴る音。葉っぱを一つつまみ取り口の中へと放り込む。これがご飯になるのはありがたい。またもう一つ〝ぐーっ〟とお腹の鳴る音。音は間違いなくラムネさんから。


 お腹が減ってるのか。そりゃ減るよな。ラムネさんは葉っぱから水は採れても、葉っぱが食事にはならないし、僕が殺してしまったあの悪漢二人が狩りでもして、そのおこぼれを食事としていたのだろうか?

 でもラムネさんからは文句のひと言も無いな——

 続きは『カクヨム』で連載中です。

お急ぎの方は『無双転生者と24人の女奴隷たち。そこへ悪役令嬢が突っ込んだ!』で検索してみて下さい!

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