第81話【無双転生者、『黒髪の乙女三人組』に迫られる】
二時限目の授業が終わった。エリタスサマと同じくまったく同じ髪型をした〝黒髪の乙女三人組〟が、今度はなぜだか僕のところへとやって来る。三人の顔が目の前に並ぶと……
〝普通〟ってこんなカンジだったっけ?
いかん、いかんっっ! こちらの世界に来てからというもの、あまりに近くに生の〝美少女顔〟を見なれているうち、それが〝普通〟だと思ってしまっていた。そうした顔は元の世界では〝液晶画面の向こう側の顔〟であり、もし元の世界でいま目の前にいる〝これくらいの顔の女のコ〟とつき合えていたなら充分御の字であった。しかし——、
「なに人の顔ジロジロ見てんの?」と、〝うち一人〟が言ってきやがった。
そりゃアンタらが目の前に立つからだよ! 人の内心も知らず、顔が普通なら性格でアドバンテージ稼げなかったら詰むぞ、と言いたくなる。もちろん言う勇気は無い。
「えーと、僕になんの用?」代わりに言ったのはこの程度。
「あなた、エリタスさまとどういう関係?」と、その〝一番目〟が再度詰問調で訊いてきた。
明らかに友好的な表情じゃない。こっちが椅子に腰掛け座っている真ん前に立ったままこちらを見下ろしている。
なにかこう、女子にここまで舐められるというのも頭に来る。しかも〝年下〟で間違いない相手だ。当然ガツン、と言ってやらねばなるまい。
「エリタスサマ、言ってやっていいですか?」と、〝言う前〟に一応エリタスサマに許可を求める。しかしエリタスサマが何かを答える前に、
「なんであなたが『エリタスさま』なんて呼んでいいことになってるの?」と今度は〝別の一人〟がおかしなクレームを入れてきた。
「それはそう呼ぶようにわたしがロクヘータに命令したの!」とたまらずエリタスサマが席を立ち上がる。
言ってくれたのはありがたい。——だが〝命令〟は無いだろう、『命令』は。
「命令を出せるってことは、エリタスさまの方が偉いんですか?」と、〝別の一人〟。
なんて質問だよ、お前。
「偉いわね」
……ヲイ、エリタスサマ…………
「じゃあわたしたちと『この男』ではどちらが偉いですか?」とまたも〝一番目〟。
お前ら言ってるコトがほとんど小学生じゃねーか。
「みんななにか勘違いしているみたいだけど、みんなとロクヘータの間に上下関係は無い。わたしとの間にだけにそれはある。だってわたしが雇った用心棒だから」
「ちょっと、エリタスサマ、よろしいでしょうか?」と、小さく手を上げ発言許可を求める。
「なによ、ロクヘータ、」
「『用心棒』じゃなくてそこは『護衛』にしといてくれません?」
要するに『わたしが雇った護衛だから』という表現の方がいい。『用心棒』だと〝時代劇に出てくるヤクザ〟に雇われた〝ならず者のセンセイ〟ってカンジだよな。
「はぁ? エリタスさまに向かって意見する気?」と、また〝一番目〟の介入が始まる。
へ? 意見したらマズいのか? ルゥンさんからは時には〝言っていい〟って許可がでているんだ。そんなことを思っている途中で今度は〝別の一人〟が喋り出している——
「なにが『護衛』なの? 〝騎士気取り〟なんかしようとしてもあなたには『用心棒』の方が似合ってる」
「そうです、間違ってもナイトじゃないです、こんな人は」と、いままでなにも言わなかった三人目までが同調を始めている。なんなんだ? この連中は。
「『騎士』を気取るつもりは無いけど、別に騎士じゃなくても護衛はできますから」そう口にすると、
「じゃあやっぱり『用心棒』なんじゃない」と、また〝別の一人〟に言われてしまう。なぜ女子はこう〝揚げ足取り〟が上手いのか。
「みんな待ちなさい。わたしが『問題ない』としているのに、どうしてみんなはそう敵対的なわけ?」エリタスサマがそう口にした途端、黒髪の乙女三人組は黙り込み、借りてきた猫状態に。
僕の時とはえらく態度が変わるよな。エリタスサマというのはそんなに〝怖い存在〟なのか?
「で……、ですがエリタスさまっ、わたしは心配なんですっ」と、それでも〝一番目〟が食い下がる。ケッ、そっちも〝意見してる〟じゃねーか。
「なにがどう心配なの?」とエリタスサマ。
あれ? エリタスサマ、この声色、僕に対する時と比べて若干優しくないか?
「この男が本当に無双転生者なら、コイツは女奴隷を二十四人も買った〝性欲の塊〟なんですよ!」〝一番目〟がそこまで言い切った。
あれっ? ちょっと待て! 僕が買ってしまった元女奴隷の皆さんの人数が『二十四人』だって知ってるのは奴隷商社は当然として、ここ(学校)にいる人間としては二人しかいないはず。エリタスサマとエリゼさんだけだ。エリタスサマにはそんな数を吹聴する動機が無い。するとエリゼさんが僕の評判が悪くなる噂の出どころということになる。
あんなに親切にしてくれて優しそうだったのに……とは言え『二十四人も女奴隷を買った』は、〝噂〟などではなく〝真実〟だったりするのだが——
ここで次の授業開始を告げる鐘の音が鳴り始める。
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