第71話【駆け落ちの果てに】
「だけどなんでエリタスサマに〝異能な力〟が備わってるの?」と、思わず訊いてしまっていた。
「転生して〝異能の力〟を授かっておいてなに言うかと思ったら。自分自身にこそ『なんで』って思いなさいよ」と、エリタスサマに言い返されてしまった。
それを言われると〝ごもっとも〟としか言いようがない。
ここで、
「転生者に授けられる能力は決まって『無双』なのだ」〝父君〟が言った。〝なのだ〟とはずいぶん断定調な。〝過去の歴史〟かなにか、根拠めいたことがあるんだろうか?
「しかしエリタスサマも〝転生者〟なのでは? 『無双』ではないのですか?」と訊くと、「はぁ?」と不機嫌そうな声が隣から。もちろんそれはエリタスサマ。しかし即座に〝父君〟が介入。
「いま私は『授けられる能力』と言ったが、別にこれは〝神のみわざ〟というわけではない」と含むような答え。
なにかここには〝情報〟があるような気がする。この世界にいる以上知っておいた方がいい情報が。ここで、
「——外を見給え。もう既に街中だ」と〝父君〟は続けた。
いつの間にかこの〝四頭立ての馬車〟は街中に入っていた。街中だけあって既に軽快な走りではなくなっていて徐行状態。〝あっ!〟と思った。懐かしき(?)あの建物が。少し遠目だが『オテル・ナーロッパ』。その前の道を進んでいる。どんどん近づきその前を通り過ぎる辺りで再び〝父君〟が話しかけてきた。
「——〝この話し〟はいっぺん話し始めると、それこそ一篇の物語になってしまう。そこで要点をかいつまむ」
「——我がフォーエンツオラン家の〝家粋能力〟は錬金術だ。家粋能力とは代々家系に伝わる能力のことをいう。そしてこの能力故に我が一族と無双転生者には浅からぬ縁がある。いまこの時にロクヘータ君という無双転生者と関わりを持てたというのは私としても浅からぬ縁を感じる」
「——はるか以前、無双転生者の中の無双転生者がいた。その無双転生者は『魔王』を倒したという話しが伝わっている。伝説めいた真実か、真実めいた伝説か、解釈はそれぞれだが、」
どこの誰からそんな〝話し〟が? とは言え『魔物』なんてものが実際いる世界だし、それに『強敵を倒せ』とか〝そんな役割〟僕に振られても困るわけだけど。
「——むろんその無双転生者一人でそれを成し遂げたのではなく、仲間を募りパーティーを組んでのことで、我がフォーエンツオラン家の先祖もその中の一人だった。だが問題は〝大成功の後〟に始まった」
「つまり、魔王を倒した後、ってことですか?」
「そうだ。いにしえの無双転生者と我がフォーエンツオラン家の先祖は、俗なことばで言うと〝駆け落ち〟してしまった。その理由は〝懐胎〟。行き先は無双転生者の元いた世界、」
「そこで生まれたのがエリタスサマの本当のお父さんかお母さんか、どちらかって——」まで口にしたところで、
こほんっ、と小さな咳払い。〝母君〟の方だった。なんか失礼をやらかしたようだ。
「いや、もっともっと前の出来事だ。その血筋がいまここにいるエリタスに受け継がれている。さっきエリタスがやってみせた行為がその血筋である証拠というわけだ。かなり端折ってしまったが話しはおおむねこういったところだ」
「その〝血筋〟の人がこちらの世界に来ると誰か困る人がいるんですか?」
「さぁて、しかし困るかどうかは別にして〝目の敵〟にする者は間違いなくいるだろう」
いったいどんな因縁が? とまで思ったとき馬車の揺れがいつの間にかしなくなっていることに気がついた。
コンコン、と外から馬車のドアを叩く音。
「等族学校に到着しました、当主様」
あれ、この声……
「うむ、」と〝父君〟が返事をするとドアが外側へ向かって開いた。
そこにいたのは——
「ルゥンさん?、」
「はい、もちろんです。今回に限り御者を務めさせていただきました」ルゥンさんは言った。
「少なからずきな臭い話しになると思ってね、念のため話しが漏れ聞こえてしまっても大丈夫な者に御者を変えた。密談は馬車の中に限るな」そう言って〝父君〟は中折れ帽を頭に載せた。
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