第7話【提案、女奴隷に散財したら?】
「急におかしなことを訊きますが、ロクヘータさんはなにか欲しいものってありますか?」ラムネさんにそんな事を訊かれてしまった。しかし〝答え〟は自然と
「超望遠レンズ」、間髪入れず迷い無くそう口から出てきた。当然鉄道撮影に使う。お値段およそ100万円。到底買えるはずのないシロモノ。
「ちょうぼぅえん?」と復唱してしまうラムネさん。
「あ、いいんだ。この世界には無い物体だから」
「ではロクヘータさんは黄金をもっともっと貯めたいという思いはありますか?」
「う〜ん、どうだろう」と腕組みをして考えてしまう。「ぴかぴかしてて綺麗は綺麗だし、いらないってわけじゃないけど、貯めておくとおかしなのが寄ってくるんでしょ?」
「はい」
「それが〝次の提案〟と関係あるの?」
「わたしの提案はその黄金を使ってしまおうってことです。ヒトの貯めた黄金を〝使っちゃえ〟なんて言うのはかなり非道いことなんですけど」
「なにか買って欲しい物でもあるとか?」
女の子にこういう話しをされれば当然こういう発想にもなる。
「いえ、わたしは欲しくないんです。できれば買って欲しくないんですけど——」
?
「で、それいくらするの?」
「いくらというといくらになるんでしょう、でも最低限生活のための必要な黄金を残すだけにして全部使い切って欲しいんです」
「えーっっ! 有り金ほぼ全てっ⁉ いったい何を買うの⁉」
「女奴隷です」
「はあっ⁈」と言った次の瞬間〝ぐばほっっ〟と咳き込んでしまった。唾がおかしなところへ入り込んでしまった。
回復までにしばらく時間を要する。
「——えっと、それってラムネさんの他に?」
ラムネさんはうなづく。そして、
「何人買えるか分かりませんけど買えるだけ」と言った。
う〜ん、この僕を独占しておきたいとかそういう発想はゼロというわけか。っていうかもしかしてなんか騙されてない?
改めてラムネさんの顔を見てみると真剣で一点の曇りも無いような顔をしている。
『人は顔で判断できない』のか、それとも『目は口ほどにものを言う』なのか、いったいどちらか。しかし〝買う〟という行為には動機というものがあるわけで、『欲しいから』だとか、『使うから』だとかに必然なる、だろう。
女奴隷の使い方って……どう考えても〝性欲を満足させるため〟に行き着くより他無いよなあ——。しかしコレは男の立場で、ラムネさんは女の子だけど……
「やっぱりロクヘータさんには抵抗がありますか?」ラムネさんに訊かれた。
抵抗も何も、女の子の前でコレを公言できるかあ? あれこれ優柔不断化してなんにもことばが出てこない。
「誤解の無いように言いますが、べつに買った女の子たちを裸にしてあれこれいじって遊びましょうとか、そういう目的じゃないんです」
そこまでハッキリ言う?
「今のロクヘータさんに足りないのは何かって考えたんです。それってたぶん〝人〟じゃないかって」
「ひと?」
「はい。〝仲間〟とも言い換えてもいいし、〝協力者〟とも言い換えられます」
「あの、女の子の奴隷はそれくらい頼りになるの?」
「女の子なので基本腕力はありませんっ」
「……」
「だけど集まったらぜったいに力になってくれます。わたしは見てきましたから間違いありません」
褒めておだてて気分を良くしてくれるのか?
「買った女奴隷の半分はいなくなるかもしれないけど半分は確実に残ります」
半分いなくなるのかよ!
う〜ん、さてどうしよう。
他人の金を使っての人助けか。こういうことを思いつく人は善人なのか悪人なのか……
とは言え女の子が奴隷にされているのは可哀想と言えば可哀想だ。〝僕の持ち金分〟しか救い出せないだろうが、どうせこの世界に欲しい物は無い。黄金をタンマリ持っていると言っても地面の中に埋めてあるだけで持ってないのと変わりない。
なら騙されても人助けはアリかもしれない。
「いくらくらい金を持ち出せばいいのかな?」そう訊いた。
奴隷、それも女奴隷など買ったことも無い。もちろん〝買春〟なんてしたことも無い。その筋の〝相場〟など知る由も無い。
「あっ、ありがとうございます。認めていただいて!」
女の子にお礼を言われる事かぁ?、これが。
「まあ今のところ何もしていないけど」
「あっ、〝いくら〟かでしたよね? 取り敢えず小袋ひとつ分くらいでいいです。黄金は重くてかさばりますから」
「たったそれだけ? もっとあるけど」
「あっても持って行けないのでは仕方ありません。それに黄金は人を狂わせるのでなるべく目につかないようにした方がいいです」
「まあ、そうかもしれない」
「では行ってきてください。わたしはここで待ってます」
「え? なんで?」
「わたしに黄金の隠し場所を知られてしまいます」
「……」
「黄金は人を狂わせます。だから注意しないと」
これってどう解釈したらいいんだろう?
「あっ、まあ分かったけど、でもこの森に一人でラムネさんを残していくの?」
「わたしならだいじょうぶです」
どこから出てくる〝大丈夫〟なのか、ラムネさんはそう断言した。
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