第68話【エリタスサマはいじめられっ子?】
走り続ける馬車の中、〝父君〟が語りかけてくる。
「ロクヘータ君、君はもちろん〝自らの役割〟を理解しているね?」
「もちろんです。エリタスサマの護衛です」
そう言うと〝父君〟は肯いた。「その通りだ。」と言って。
「——ただ、一口に〝護衛〟と言ってもやり方は様々だ。ルゥンはルゥンでギルド育ちらしい〝護衛〟を考えていてくれたが、『等族学校』という場でそれが役立つ可能性は万分の一といったところか」、とそう続けた。
ああいう〝シチュ〟は起こらない?
ではあの丸一日かけた訓練の意味は? と言いたくなるが、たぶんそれは〝この僕が人を殺さないための訓練〟、だったのだろう。
「とすると『学校ならでは』の問題があるのですか?」と訊いた。
さっきから聞いている〝とーぞくがっこう〟というのはなんなんだ? まさか『盗賊学校』なんてことは——まで考えていて、その〝当たっていない〟であろう考察をぶった切ったのはエリタスサマ。
「お父さま、そのお話しをロクヘータにするの? カッコ悪い〜」と駄々っ子のようなことを言う。
「いまはロクヘータ君に正確な事情を知ってもらうのが先決だよ、」と〝父君〟がなだめる。そしてエリタスサマへ向けた顔をまた僕の方へと戻し、極めて真顔で、
「うちのエリタスは性質に申し分なく本当に良い子だ」と——告げられた。
うわぁ、すごい親ばか。
「だが外見上、ひとつ問題がある」
むしろ逆では? 外見上非の打ち所が無くて中身に問題があるという——むろん絶対に口外無用だが。
「〝問題〟どころか、秀でているように見えますが」と、ここは誉めるしかない。事実、外見だけは、いいんだからな。
ふふっとエリタスサマの笑い声。しかし今度は〝父君〟、エリタスサマへ顔を向けるでも無く僕との〝対話〟を続けていく。
「うん、ロクヘータ君、君の場合はそう見えてもさもありなんだ。なにせ君も髪が黒いわけだからな」
「え? 髪の色が黒いとなにか問題でも?」
〝父君〟は身体を前傾姿勢にし、両手の指を組む。
「一目で〝実子〟でないことが分かってしまう。もっと具体的に言うと〝転生者〟だと分かってしまう」
あっそうか、そういうことか——
「——そのことで〝いろいろと〟言う者がいてね、私としてもエリタスが心配なんだ」
優しい〝養父〟じゃないか。
「解ります」思わず返事した。
「ホントに分かってるのかしら?」と隣からエリタスサマ。どこか不服そうな雰囲気を感じる。そう言えば初対面の時、『人間関係は時の運』と僕が言ったらそれを簡単に〝肯定〟していた。こう見えて学校で口をきいてくれる人がいないとか、イジメを受けているのか?
「こうなることは予想されていたから、等族学校に入る前に『髪を染めたらどうだ?』と提案したのだが、『どうしても黒髪がいい』と拒絶されてしまってね、」
「それで〝同じ髪の色〟の僕が——」まで口にした刹那、「ぜんぜん違う」とエリタスサマ。
「私としてはそれもまた少しは成り立つとは思うが……」と〝父君〟。
「お父さまも本当にそう思ってるのかしら?」
「エリタスは何でもお見通しだな」と〝父君〟が苦笑いのような笑みを浮かべ白旗を揚げるようなことを言う。
え? なんだ? 『イジメ』から守って欲しいとかじゃなくて? 〝父君〟が少し困ったような顔で続きを語り出す——
「エリタスが君を雇いたがったのは君が〝無双〟だからだ」
「〝無双〟だから、ですか、」なんとも〝複雑〟なカンジだ。なにか〝元女奴隷の皆さん〟にも通じるような〝話し〟。
「そう。無双の君がエリタスの傍にいる。そこでロクヘータ君、君の心の中に置いておいてもらいたいことがある。エリタスがやり過ぎないよう、時には〝忠言〟もお願いしたい」
「……」
無双転生者を使ってなにやるつもりだ。真性の〝悪役令嬢〟か、コイツ(エリタスサマ)は。
「なに、難しく考えることは無い。ルゥンがやってくれているようにしてくれればいいんだ」
——そう言えば……『何もかも言いなりじゃないんですね』ってルゥンさんに言った覚えが——さらに〝父君〟の話しは続いていく。
「——むろん私はエリタスの性格を前向きに捉えている。我がフォーエンツオラン家は非常にやっかみを受けていてね、多少以上に気が強くないと当主なんて勤まらない家なんだ」
「どう? これでわたしが〝性質に申し分なく本当に良い子〟だって解ったでしょ?」とエリタスサマ。
そのことばって、そういう意味だったのかよ!
「理解できました」
もうそう言うしかないだろう。
「ロクヘータ君、私が先ほど君のことを『もう我が一族同然』と言ったのを覚えているかい?」
「覚えてます」
「これはなにも〝書類上そうなっているだけ〟というわけではない。今後の私たちと君の関係まで考えて、我々の間でだけで共有しておきたい秘密に君も参加してもらいたいんだ」
「わ、〝我々〟というのは?」
「私たち夫婦と、娘のエリタス、そしてルゥンだ。そこに君を加えたい」
〝父君〟は僅かの視線のズレも許さないような目でまっすぐ僕の目を射貫くように見続けている——
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