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第64話【1対2対√3】

「テーブル上面の縦横比についてちょっとした意見があるのですが、」とエリタスサマの〝()()()〟に僕はケチをつけてしまっていた。本当に思わず。

 本来なら『足下に転がした物を拾わせるような真似はやめるべきだ』と言うべきところなのだろう。なのだが、僕の立場は弱くそれは言えない。言えないが抗議の意志だけは示したつもりだ。

「じゃあ言ってみて」とエリタスサマ。声に〝怒気〟は感じない。僕の意志はエリタスサマにはまーったく通じていないよう。

 これでこっちが何も考えていなかったら本当に怒り出しそうだが、エリタスサマの説明を横で聞いていて、ふと感じたことがあった。


「その長方形に対角線を引いて、その対角線の長さを赤い棒二本分にしたらどうでしょう?」そう言った。


「なぜそうしようと思ったわけ?」


「四人で造らせるテーブル六つならひとつ当たり四人掛けでしょう? 四人で縦約1メートル、横2メートルじゃ少し大きいんじゃないかと」


「その分お皿の数は減りそうだけど」とエリタスサマ。


 なにを白々しいことを。僕らにそんな豪勢な食事は無いだろう。まぁほぼ居候状態の全員を食べさせてくれるだけでもありがたいんだけど。


「少し小さくなるその分、となりの人との距離が近くなります」僕は言った。

「ふぅん……」と、こっちをじっと見ながらエリタスサマ。目と目が合うが何を考えているのか、まるで読み取れない。

「わたしは〝より簡単に〟っていう意味でこうしたんだけど、それは話しを却って難しくしているだけじゃないかしら」

「そんなことはありません。彼女たちはこれくらいのこと理解できます」

「じゃあロクヘータ、その場合にできる長方形の短辺と長辺の比率は?」

 え? えーっ!

「えーと、長辺は『るーと3倍』……、」

「よく解ったわね」

 ……言われてしまったな————

 ってな、いくらFラン大だからって、それくらい解るっての。確か、二等辺三角形じゃない方の三角定規の辺の比率が『1対2対√3』だったはず。これを二枚用意して一枚裏返してくっつけた長方形にすると、その三角定規の最長辺はイコール対角線となる。つまり対角線は『2』なんだから短辺が『1』、残った長辺は『ルート3』に決まってる。こんなの〝高校〟じゃないぜ〝中学〟だぜ。

 しかし、こんなのを自慢するのも大学生として情けないぞ。

「まぁ、これくらいは、」以外に言い様がない。


「でもあなた一人が解ってもね、ロクヘータはこのコたちに理解させることができるの?」

「できる!」と、勢いで言ってしまった。

 いや、これくらい誰かは理解できるはずだ。なにせこの僕でも理解できるんだから。元女奴隷の皆さんの方へと身体の向きを変える。

「みんな、この中で『数字には自信がある』と思う人、名乗り出てみて!」

「ハイッ!」と元気よく元女奴隷のコが間髪入れず手を上げてくれた。ラムネさんでもルディアさんでもない。——そして、少しだけ待ってみてもそのコ一人しか手を上げていない……


 ラムネさんとルディアさんって〝数字に強くない〟っていう自覚があるのか?


「じゃあエリタスサマに名乗って」と口にする。実は僕もこのコの名前が分からなくてエリタスサマをダシに使っているのは内緒だ。なにしろみんな髪型〝ロング〟だから。


「わたし『リコルン』といいます、エリタスさま」と元気がいい割に礼儀正しくそのコはスカートの端をつまみ軽くお辞儀した。

「最初は大目にみるけど、わたしのことは『エリタスお嬢様』と呼びなさい」とエリタスサマ。

 そう言えばそうだった。ラムネさんにもルディアさんにもこれ言ってたっけ。

「他のみなさんもね」と他二十一人(?)にも改めて念を押すエリタスサマ。そして返す刀(?)で、

「じゃあロクヘータの授業を楽しみにしてるから」、と来たもんだ。


 ヤナこと言うよなー。そう思いながら先ほどからルゥンさんが広げっぱなしにして持たされている長方形の図が描かれた紙の前へと移動する。

「じゃあ『リコルン』さん、こっちへ」と、そのコに手招きしながら呼びかけた。

 少し子どもっぽい感じのするコなので〝さん付け〟は妙な感じはするが。


「えーとね、この四角の向かい合う角、つまりココとココ、」と言いながら僕は順に二カ所を指さした。確かこれは『対角』と言ったはずだ。

「——この二カ所を〝線を引いて結んだ〟、って考えてみて」

 リコルンさんは三秒ほど目を閉じ、そして開くと、

「ハイ、結びました」と元気なお返事。

「補助線は実際に描いた方がいいんじゃない?」と横からエリタスサマ。筆記用具なんて持ってないんだよ。

「ともかく信じましょう」とエリタスサマに対しては無難な答えに終始しておく。この線は『対角線』で間違いない。ここで傍らに二本の棒を持って立っているラムネさんに向かって「——ちょっとその赤い棒を貸して」と求める。

 ラムネさんから赤く塗られた棒を手渡されると、リコルンさんに目線を合わせる。

「さっき頭の中で引いてもらった線はこの赤い棒二本分の長さだ。と同時にこの赤い棒はこの四角の〝短い方〟の長さでもあったよね」と言いながら僕は四角の短辺を指さす。

「お話し、覚えてます」とリコルンさん。

「そうして新しくつくった四角は元の四角と比べて大きさはどうなっていると思う?」と訊いた。

「少しだけ小さくなります」

「完璧じゃないか!」と言って思わず親指を立ててしまった。

 何の意味か知らなかったと思われるがリコルンさんもにっこりカワイイ笑顔。そして、

「任せてください。テーブルの天板の大きさはもう解りました」と力強いお返事。

 どうよ! という思いでエリタスサマの方を振り返れば、

 〝どうなんだか〟といったような表情。今度は内心が読めるかのようだ。

 この時だ、「エリタスお嬢様、」と、さっきからずっと〝長方形の図が描かれた紙〟を広げたまま持たされているルゥンさんが切り出した。「——もはや限りなく遅刻確定です」


 ……今日から『貴族学校』ってトコへ行くんだった…………

 続きは『カクヨム』で連載中です。

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