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第63話【テーブルの寸法】

 僕が〝昼間の間〟いなくなる旨、エリタスサマから告げられた元女奴隷の皆さん。誰一人、反応らしい反応を見せない。

 理屈の上では、喜べば僕の不興を買い、悲しめばエリタスサマの不興を買う、ということになる。それ故の〝無反応〟、なのだろうか。

 とは言え僕が姿を消して落ち込む元女奴隷の皆さんが何人いることやら。ラムネさんしかいない。


 しかしエリタスサマはみんなのそんなどっちつかずの態度に何事か言うでもなく、〝本題と思われる話し〟を切り出す。

「ロクヘータが買った二十四人のみんな、話しはロクヘータから聞いてるかしら。あなたたちのテーブルと椅子のこと、」

 そこまで言ってエリタスサマは〝うち一人〟を指名した。

「ラムネ、どうなの?」と。


 たぶん〝知ってる名前〟が()()()()()()()、だからなんだろう。

 指名を受けたラムネさんは「そのことなら知っておりますエリタスお嬢さま」と即答。


 しかしエリタスサマは顔に微笑みを浮かべながら、

「本当かしら? 知っているのはあなただけだったりして、」と口にして、「あなたたち二十四人の手であなたたちがお食事で使うテーブルと椅子を造ってもらおうというお話しなんだけど、」と続けた。


 明らかに僕が〝その事〟を告げた時と比べ、元女奴隷の皆さんの態度は正反対。僕がそれを口にしたとき半数ほどはぶーぶー何かを言っていた。

 なのになんで黙っている? 僕が困るじゃないか。誰か何かを言ってくれ!

しかし今は誰もが萎縮したように押し黙ったまま。


 そう思っていると「はい、昨日聞いておりますお嬢さま」とルディアさんが()()()()()()()()くれた。

「そう、」とエリタスサマは返事をして、「あなた、お名前は?」と訊いた。

「ルディア、と申しますお嬢さま」

「それじゃあどこの〝お嬢さま〟か分からないわ。これからは『エリタスお嬢様』と呼びなさい」と、ラムネさんに言ったのと同じことばを口にした。

「はい。以後気をつけますエリタスお嬢さま」とルディアさん。

 元女奴隷の皆さんが誰も返答を率先して行おうとはしなかったのはこういう展開を予想してのことなのか。


「ルゥン、紙を、」と急にエリタスサマは話しを変えた。ルディアさんの顔のアザについてはなにひとつ触れない。僕は無意識に視線をルゥンさんに切り換えていたようで、ルゥンさんはいつの間に手にしていたのか〝巻いた紙〟をもうエリタスサマに手渡すところとなっていた。

「まず先に、テーブルの方から造りなさい。とは言ってもあなたたちは素人。凝ったものは造れないでしょ? だから当たり前の形が一番なのよ——」

 そう言いながらエリタスサマは巻いてあった紙を両手でもって開き、みんなに示して見せた。僕もまた立ち位置を移動して〝その紙〟をのぞき込む。


 描いてあったのはただの〝長方形〟。


「結局、単純な形こそいちばん美しい」と、加えてエリタスサマは言った。「——ただ、二十四人もの人がいっしょに使えるテーブルは大きすぎるし造るのはたいへん。だからある程度取り回しがし易い大きさに造って、それらを縦につなげて使えばいい」


 みんなエリタスサマの話しに温和しくじっと耳を傾け続けている。


「——そこであなたたちは四人でひと組をつくりなさい。四人で協力してひとつのテーブルを造るの。四人ずつなら全部で六組できる。つまり全部で六つテーブルができる。それを縦につなげて並べるの」


「——でもね、ひとつひとつのテーブルの大きさが揃ってないとつなげた時に美しくはないわ——」と、ここで少しの間をとって、

「ルゥン、次を。」とルゥンさんに指示出し。


 言われたルゥンさんは、これまたいつの間にか〝ほうきの柄〟のような木の棒を二本、手にしていた。一本は赤い色で塗られていて、もう一本は無塗装。赤い棒の長さはおよそ1メートルほど、無塗装の方は1メートルには満たないが50センチは優に超えているといった長さ。それら二本をエリタスサマに手渡した。

 入れ代わりにルゥンさんはこれまでエリタスサマが広げていた紙の方を受け取る。


 エリタスサマは無塗装の棒を床に垂直に立ててみせた。

「こっちの色が塗ってない方の棒、テーブルの高さはこれの長さと同じにしなさい」そう言い終わると無塗装の棒から手を離し、当然無塗装の棒はカランカランと音を立て床に倒れた。

「——そして次、」と言いながら今度はエリタスサマは赤い色で塗られた棒を掲げながらルゥンさんが広げている長方形の図の短辺を指さした。

「この四角の短い方、これの長さをこの赤い棒と同じ長さにして——、」

 と、今度は長方形の図の長辺の方を指さし、

「この四角の長い方、これの長さをこの赤い棒二本分にしなさい」と命令した。


「じゃあラムネ、棒を受け取りなさい」とエリタスサマ。

 無塗装の棒はエリタスサマの足下、床に転がっているので棒を拾うため必然ラムネさんがエリタスサマにひざまずく形となる。そしてほぼそのままの体勢でもう一本、赤く塗られた棒の方をエリタスサマの手から受け取る——


 その様子に何かを〝()()()()()()()()()〟としか言い様が無い。

「テーブル上面の縦横比についてちょっとした意見があるのですが、」とエリタスサマの〝()()()〟に僕はケチをつけてしまっていた。本当に思わず。

 続きは『カクヨム』で連載中です。

お急ぎの方は『無双転生者と24人の女奴隷たち。そこへ悪役令嬢が突っ込んだ!』で検索してみて下さい!

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