第50話【エリタスサマ、暇をもてあます女奴隷たちに指示を出す】
「まあまあ、それくらいで、」とラムネさんとエリタスサマの二人の間に割って入る。
「なんか顔が緩くなってない? 女奴隷が来てくれたせいかしら?」とエリタスサマ。
露骨なくらいに分かりやすいことを言うがさすがにこの雰囲気、その空気くらいは分かる。こんなのはテキトーに言っただけに違いない。それにもっと嫌な予感がする。
「いえ、思いは逆です。『昼食』はあくまで表向き。何か別の問題が起こったのでは?」
きっと元女奴隷の皆さんが何らかの問題を起こしているに違いない。すると今度はエリタスサマ、ラムネさんの方に刺すような視線を向ける。
「そうなの?」
「はい、ロクヘータさんの言うとおりです」
「じゃあ奴隷のあなた、早くその問題とやらを言って帰りなさい」と、これまた分かりやすいくらいの応対。
しかしラムネさんは困ったような表情をしながら、
「こんなことはエリタスお嬢さまのお耳に入るべきことではないのですが——」と口にする。
しかしエリタスサマは言い放つ。
「わたしはね、わたしの前で堂々とナイショ話されるのがキライなの。あなたは目の前でナイショ話されるのがスキかしら?」
「——返すことばもありません」とラムネさん。
昔から女子は口喧嘩が強いというイメージあったけど、エリタスサマは典型的にソレだな——「——あの、ロクヘータさん、」とラムネさんに突然話し掛けられ思わずびくっと。『ナイショ話』というあからさまな牽制球を投げられたせいか声が少し大きい。
「——二十三人の皆さんをほっぽりっぱなしは、ふんいき良くないですよ」とラムネさんは僕に伝えた。オブラートにくるんだような言い方だったが。
「確かによくはないわね」とエリタスサマ。
「なんで同意してるのっ?」と思わず訊き返す。っていうかやっぱり聞き耳立ててるな。
「女の子には常にマメに対応しておかないと、モテない、というかそのうち自然と切れるけど、」と戻ってきた。
こっちにはマメにやりすぎるとストーカー案件になるという懸念があるんだけどな。元いた世界が同じなんだからそれくらい察しろっての。この際切れてくれた方が肩の荷が下りるんだろうけど、たぶん切れてはくれない。
「護衛の依頼を受けた件ならもう昨日のうちにみんなに説明してありますよ」
「いわゆる『俺は仕事だから』よね、」とエリタスサマ。
その仕事を造っておいてよく言う。
「ふつう二十三人もマメに対応なんてできないでしょう?」そういう返答になるしかない。
「あれ? 二十四人じゃなかったけ? 女奴隷は」
しまった! ついラムネさんにつられ二十三人と言ってしまったっ。無意識とは怖ろしいもの。
「例外の女奴隷さんは誰なのかな〜?」と、チラとラムネさんに視線を送りながらエリタスサマ。
それを言わせる気か。性格が分かるぞ。
ここで突然横からの参入者。
「これはよくない傾向です」
発言の主はルゥンさんだった。
「——雰囲気が悪くなるというのはそれだけ仕事とは関係の無いお喋りしているということです。主が義務を果たさんと努力している間に奴隷が暇を持て余すなど許されることではありません」
これはまさしく助け船。エリタスサマ、横やりを入れられ多少なりとも機嫌を損ねるかと思いきや、
「言われてみればそうよね。腹立たしいことよね、主人が働いている間に使用人が遊んでいるというのは」とそう同意。エリタスサマではあるが、これまた正論中の正論としか言いようがない。
「はい、その通りです」とルゥンさんも同意返し。
自分で振っておいて〝その通りです〟も無いような、と一瞬思ってしまったがそれより〝助け船〟の方がありがたい。
「暇ならなにか用事を与えればいいのよ」とエリタスサマの提案。
「もっともなことです、エリタスお嬢様。しかし当家は人手は足りていますし、慣れないことをさせるとろくなことになりません」とルゥンさん。
「それもそうよね……お皿を割られたりものを壊されたりするのも困るし……、そう言えばあの住み処にしている倉庫のお掃除はどうなったの?」
「おおむね終わっているようですが、一応当事者に確認した方がよろしいでしょう」とルゥンさんはラムネさんの方へと顔を向けた。ラムネさんもすぐにそれを察したか、
「埃もしっかり拭き取りすっかりきれいになりました」と返答した。
エリタスサマは立てた人差し指をほっぺたにあてなにやら思案中の様子。
「やらかしてもわたしの家に迷惑がかからない用事かぁ……」
突然ニカッとなんとも形容しがたい笑み。
「DIYなんていいんじゃないかしら」
「はぃ?」とルゥンさん。この世界の人には意味が解らないらしい。
「ね、ルゥン、木工用の材料や道具はすぐ手配できるかしら?」
「できますがなにをお考えになったのです?」
「彼女たちの住み処、椅子やテーブルすら無くてお食事の皿も床に直置きとか」
「仕方のない面もあります。当家に雇われている他の使用人との兼ね合いもありますし、あまりに〝手厚く〟というのも難しいかと」
「それよそれ、なら椅子やテーブル、自分たちで造ってもらうのがいいんじゃない? 当分暇なんて無くなりそうだし」
「なるほど、いいお考えです」
「でしょ? きっと微妙に傾いた椅子やテーブルとか、おもしろいものが出来あがりそう」
そーゆーコトを笑顔で言うなっ、と思ったが、情けなくも思っただけ。
「素晴らしいお考えですっ! エリタスお嬢さまっ」と突然実に明るく元気よくラムネさん。
〝微妙に傾いた〟の部分を聞いていなかったのか、聞いていても外したのか、まったく分からない。こういうのがきっと『聖女』の聖女たるゆえんなのだろう。
この対応(?)にはさすがのエリタスサマも固まるのみ。しかしラムネさんの攻勢(?)はまだまだ続く。
「いただく材料の分、なにかお返しできることはありませんか?」
そのお顔、あまりに天真爛漫すぎる。
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