第46話【無双転生者、能力発動のパターン判明する】
「とあっ!」「やあっ!」「きえーっ!」
二十メートルほど先に、横一列に薪が立てて並べてある。その薪を狙って能力を発動。すると即座にAFみたいな正方形が視界に現出し合焦。目標物を木っ端微塵に破壊してしまう——はずだった。しかしこの自分がなにをやろうと立てた薪はたったの一本すらも倒れない。
バカな。街で暮らし夜も安眠をむさぼれるようになり、そのうちに〝能力〟が無くなってしまったとでもいうのか?
「あは、あはははははっ」とエリタスサマ。
さぞかし滑稽だろう、見ている分には。意味も無いかけ声掛けて、身体動かして、それでいて何一つ起こらないんだから。
けどな、こっちは笑いをとろうとしてるんじゃないんだ。芸人じゃあるまいし。
しかしルゥンさんの方は笑顔も見せずこう言った。
「では〝二つに割ること〟はもう意識しないでください」
なんともふがいないが、それなら今までもやってきた。要は何も考えずにぶっ放せばいいだけだ。
「えいっ!」「とおっ!」「砕けろーっ!」
とまたおんなじことを繰り返している。さっきからずっとなんも起こらない。——そんなバカな……
「なにそれなにそれっ」とすっかり笑い上戸な状態になってしまってるエリタスサマ。
しかし僕が笑えるわけもない。あんな薪一本粉砕できないなんて。僕は〝無双能力〟があったから雇われたわけで〝無能力〟になったら即刻解雇されるじゃないか!
それってクビだよ、クビ。
そしたらラムネさんを始めとする二十四人の元女奴隷の皆さんともども路頭に迷う。どーすんだよこれからの生活は。
平穏に森で暮らしていたら強盗団がやってくるし、街へ出たらこのザマ。いったいどーすればよかっ——
「ステータス・オープン」唐突にルゥンさんの声が響いた。顔を上げると空中に拡張現実の如きウインドウが現出している。
「おかしいですね、数値はあくまで66666……、無双のままなのにいったいなぜ……」
「〝6〟ばっかりというのがよくないんですかね?」
これはやはり悪魔数字なのか、それともEF66の呪縛か?
ルゥンさんは何事か思案中のよう。やおら歩き出し、並べて立ててある薪のところまで行くと、うち一本を手に取った。
「ロクヘータさん、」
「はい」
「これ、ロクヘータさんへ投げていいですか?」
ええっ⁈ アレが顔面に当たったら重傷だぞ!
〝ダメですダメ〟と言って拒否りたいトコだけどそんな選択肢はきっと無い。
「それは修行的なにかってことで?」
「もちろんです」
だめだぁこりゃあ。
「じゃ、投げていいです」
ルゥンさんはこの返事にうなづくとエリタスサマに向かって、
「エリタスお嬢様は危ないので三十歩ほど向こうへ離れていてください」と、距離と方向についての指示を出す。エリタスサマがぐずぐずしていると、
「危ないですから」と少し声の調子が強くなる。渋々エリタスサマは「いーっぽ、にーほ、」とこれ見よがしに声に出しながら三十歩距離をとった。
それを見て〝まだ見捨てられてはいない〟と感じとることはできた。取り敢えずいまこの時は。この処置、どう考えても破片が散ったら危ない、ということなんだろう。
準備が整ったとみえて、
「それじゃあ行きますよ」とルゥンさんが薪を持ったまま円盤投げのようにその場でくるくる回り始める。接近する目標ならAFモード・AF–Cだ。
いまリリース!
ひゅんひゅんひゅんひゅん、音を立て回転しながら薪が飛んでくる。正確無比にあたかも誘導弾のように僕の立ち位置目がけて飛んでくる薪。視界に現れる正方形は薪をロック! 次の瞬間薪は空中で四散した。
やった!
しかしルゥンさんは無言でいま一本立ててある薪を手に取った。
「もう一度やっていいですか?」そう訊いてきた。
一度できれば自信回復だ。〝来い!〟ってもんだ!
「いいですよ! いつでもどうぞ!」とつい声にも勢いが出る。
再びルゥンさんが薪を持ったまま円盤投げのようにその場でくるくる回り始める。AFモードそのまま。
いまリリース! しかし薪は明後日の方向へと飛んでいく。
あれっ⁉ 薪を空中で撃ち落とせない。回転しながら薪は地面に着地してしまった。
「ロクヘータさん、もう一度試していいですか?」とルゥンさん。
そもそも〝拒否〟という選択肢が無いのは十二分に理解している。
「どうぞ」
再び薪が誘導弾のようにまっすぐ僕の立ち位置に向かって飛んでくる。ルゥンさんの投擲は普通じゃない。その正確さ、凄すぎる。だがその薪は僕の無双能力によって木っ端微塵に。
しかしルゥンさんは誉めてくれるでもなく、
「では次行きます」
ルゥンさんが新たな薪を手にしてくるくると回り始める。なにをやらんとしているのか既に予想はついている。やはり投擲された薪は明後日の方向へ向かって飛んでいく。
撃墜に失敗した。
薪は薪の形をとどめたままそのまま地面に落ちた。
「なるほど、解りました」ルゥンさんが言った。
嫌な予感がした。
「ロクヘータさんの能力はご自身に危険が及ばない限り発動できません」
「なによそれ、わたしを守るためには発動できないことっ? だったら〝護衛〟としては役立たずってことじゃない!」エリタスサマの甲高い声が芝生公園のような庭に響き渡る————
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