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第42話【お掃除組とサボリ組】

 本邸から離れに離れた僕らの住み処、〝件の美術品倉庫〟へと向かう途中でこの家に雇われているメイドさんとすれ違った。軽く会釈はされたものの無言で。あまり良いようには思われていない様子がプンプン。

 振り返れば既にけっこうな距離。すたすた本邸の方へとひたすら歩いている。


 あのメイドさん……確かメイド姿のお姉さんになにか耳打ちをされていた人じゃあ……

 倉庫の様子をうかがいに?


 よく分からないな……そんなことをぼんやり考えながら歩いているうちに住み処に辿り着いた。

「ただいま〜」と言いながら玄関扉(?)を開けるといきなり〝パンモロ〟、真っ先に目に入ってきたのは〝黒いの〟。元女奴隷の皆さんのうち何人かが〝雑巾がけレース〟のように床の水拭きをしていた。

「あっ、ロクヘータさんお帰りなさい」と言ってすっくと立ち上がったのはやっぱりラムネさん。掃除中のためか髪を後ろで束ねている。

 〝黒〟だもんなぁすぐ分か——、という妄念をぶるぶるっと振りほどき、

「あの後なにかあった?」と訊いた。


 それはメイド姿のお姉さんから〝ロクヘータさんだけ〟と言われラムネさんと別行動になってしまったその後のこと。


「ありました。お屋敷の方のメイドさんから、わたしたちのここでの『仕事ぶりを見たい』からとかで、さっきまでこの建物の中を見廻っていました」


 さっきすれ違った愛想の無い人か……あの〝耳打ち〟の中身はこれなんだろうか——なんてことに思索を巡らせているといつの間にか元女奴隷の皆さんがラムネさんの隣に横一列に。さらにその中の一人が、

「待っていてくださいご主人さま、二階でお掃除続けてるコたちにも声かけてきますから」と言い残し勢いよく階段を駆け上がっていく。


 いったい何を?……と思っているうちに上階で声が飛び交い何人かの元女奴隷の皆さんがひとかたまりになって今度は階段を駆け下りてくる。


「えーと、これは?」と訊くなり速攻で一連の行動の〝答え〟が戻ってきた。

「わたし達はサボっていません!」と。

 その短いフレーズで〝ああっ!〟とすぐにピンと来た。

 さっき本邸のトイレ近くですれ違った元女奴隷の皆さんは、長〜い行列を作っていた。同時にあれだけの人間が尿意なり便意なりをもよおすことは不自然だ。

 しかし、中には本当に〝もよおしている〟人もいるかもしれない——

「えーと、」と〝えーと〟を連発してしまう。何か対応を誤ると、とんでもないことになりそうな予感。

「何人いるのかな?」と、取り敢えず無難と思える対応。

「十二人です」と即座に戻ってきた。発言主は『サボっていません』発言をしたのと同じコ。

 ちょうど半分。それで数えやすいように一列に並んでいるのか。そして数えてみるとラムネさんを含め確かに十二人いた。あの〝アザ〟のルディアさんもいる。

 ラムネさんは?、というと向かって左の一番端の立ち位置。こういう時真ん中に来る人と端になってしまう人ってあるよな……と思いつつ次になに言えばいいのか状態。

「ありがとう」、そう言ったが場が微妙な空気。そこはかとなく〝冷気な視線〟を感じる。これだけじゃダメなんだ。

「みんなのことは覚えておくから」、とほとんど反射的な発言。しかも言った直後にもう後悔してる。僕は人の顔をろくに覚えられない。しかもみんな美少女で髪型もロングなんだぞ。

 しかし〝冷気な視線〟はとたんに〝暖気な視線〟に。みんなの顔が笑みになっている。その暖気にこちらの背筋が凍ってくる。もし〝覚えていなかったら〟と。

 せめてこの場で写真でも撮れれば——そう思った瞬間、例の顔認証の正方形が視界に現出する。

 マズイ!

 とっさに自ら地面に伏せる。あの悪漢二人を殺る直前の状態! こんなところであの能力が発動してしまったら、まじめに掃除をしてくれていた元女奴隷のコの頭を吹っ飛ばしてしまう。それが起こったらあまりに残酷であまりにトラウマだ。

「あの〜、どうかされましたか?」と上から声が降りてきた。さっきのコとは別の声だった。

「いや、ちょっと気分が、」と言いつつ伏せた状態で顔を上げると、そこには必然の光景が。

 元女奴隷の皆さんが着ているその服装はミニスカートもどき。下の方から見上げれば——当然正面付近の数名はその中身が見えてしまう。既にそうじゃないかとは感じていたが、見えた範囲、全員その色は違っていた。とっさに、

「そういうわけでこういう体勢をとったわけでは、」と見苦しい言い訳の発動。元の世界では絶対に通じないことば。

 しかし元女奴隷の皆さんからはなぜか嬉しそうな声で、

「ぜんぜんかまわないですよ、そんなの」、とめいめいがそんな意味のことを口にしている。まったくなんという異世界感。

 が、だからといって堂々と鑑賞会を始めてしまったら、そこは人間としてどうなんだ?

「掃除手伝うよ」そう言って立ち上がる。点数稼ぎというか罪滅ぼしの感覚しかない。しかし響くは嬉しそうな声々。

「またご主人さまといっしょにお仕事ができるんですね」とのことばが耳に入ってきた。

 その時勢いよく玄関扉が開いた。トイレの行列に並んでいた方の元女奴隷の皆さんが数名戻ってきた。駆けてきたのか少し息が荒い。

 空気は一転、それがすぐに察せられた。冷気を感じる。

 まじめ組とサボリ組の対立とは。どこの世界でもありそうなこった。しかし本当にトイレに行きたかったってことも考えられるから、なにかを言えるわけなどない。


 それより問題なのは、ここにいて掃除を続けていてくれた十二人が誰だか分からなくなった場合、立場が非常にまずくなるのはこの自分だってことだ。

 すでにトイレ組から何名か戻ってきてしまっている以上、今さら再確認などできない。

 頼りはやっぱりラムネさんしかいない。ラムネさんがお掃除組としてここにいたことを幸運と思うしかない。

 続きは『カクヨム』で連載中です。

お急ぎの方は『無双転生者と24人の女奴隷たち。そこへ悪役令嬢が突っ込んだ!』で検索してみて下さい!

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