第38話【Fラン大と難関大附属高】
なぜ素性など明かさねばならないのか。実に、非常にイヤなことを訊かれてる。目の前の小生意気な女子の正体は日本人であるらしいということが分かってしまった今となっては、余計に言いたくない。
だがしかし——僕の立場は弱いぞ。二十四人の元女奴隷の皆さん、ラムネさん一人でもどう養っていけばいいのか厳しい。あのギルドのせいで……
「一応大学生をやっていた。大学生始めてから二ヶ月くらいしか経ってないけど」と、やりたくもない自己紹介。
「へえー、大学生。どこ大学?」
ほうれ来た。
「たいした大学じゃない」
「ほんとうにたいしたことないから名前を言えないの?」
コイツ、どういう性格してやがる。あっ、今さらだけど一歳くらいサバ呼んで『高校生』って言っておけば良かったか? いや、高校レベルの英語や数学の話しを振られたら、それどころかこの両教科については中学レベルすら怪しいのが悲しいかなこの自分。どのみち〝かなり大したことない〟とすぐ見抜かれる。
「そういうそっちこそ、ここに来る前は何を?」
適当な返答を思いつくのに時間がかかってしまった。
「あっ、話しを逸らした」
さすがにこちらの意図などバレるか。
「言いたくないのがお互い様ならお互い言わないようにした方がいい」
「わたし高一。あっ、もちろん女子高生ね。高校は慶墺至塾」
うわっ、なんか聞いただけでイヤな奴そう。しかも三歳も年下かよ。
「しかし今さら証明などできないだろう?」
「言っておくけどわたしは転生してこの顔この姿になったわけじゃない」
「は?」
なに言ってんだ? コイツ。
「『ハ』じゃないわよ。『転生前は美少女じゃなかった』とかいう残念さんじゃないってこと」
「そういう事考えられる方が残念系じゃないか?」
エリタスさまはニヤリと笑い、
「〝証明できない〟って思ってるならどんな難関大学の名でもいいから言っておけばよかったのに。どんな名前出しても確かめようが無いんだから」
クソッ、三歳年下に振り回されてる。確かに理屈の上ではここじゃあ東大生だって名乗れる。だが、何かを質問攻めにされた場合そんな嘘は簡単にバレてしまう。三歳年下の女子相手に嘘ついてそれがバレるってのは最悪に恥ずかしい展開だろ。
しょうがねえなあもう。
「仏蘭大だ」
「〝ふらん大〟って、あのFラン大?」
ちっ、これで確証を得た。コイツ間違いなく日本人だ。
「腐るという意味で通称『腐乱大』って言われてるあの〝ふらん大〟?」
「ダメを押すな。ダメを。他人がどこの大学行ってたって関係無いだろ」
「自分でダメダメ言ってるじゃん」
「同じ『ダメ』でも意味が違ってる!」
「ここではわたしがあなたの雇い主」
「……」
なんてろくでもない者に雇われたんだ。ラムネさんの所へ帰りたい。
「——同じ日本人なら〝分かる〟ことがあるだろう?」そう切り返す。
「なにそれ? 分かり合えるなんて図々しい」
「〝合える〟は言ってねーしっ」
「ロクヘータさん、ことばの使い方には注意を払ってくださいね」またもメイド姿のお姉さんに釘を刺される。
最悪だ。しかもコレを『エリタスさま』と呼べとはなんたるバツゲームか。なるべく名前を呼ばないようにするしかない。
「分かりました。雇われている身です」
「そう言って頂けて胸をなで下ろしています」とメイド姿のお姉さん。
「じゃあそういうことだから覚えておいてね」とこの女。
つたくふざけやがって!
しかしここはぐっとこらえて、
「僕が言ったのは日本人なら年上、年長者にはそれなりの気遣いがあって然るべきと、そういうことです。だからこそ例えば部活動で『センパイ』ということばは不滅です」
「どう考えても大学の先輩になりそうもないし」
ぴきっ、と来るがここも耐える。
「部活動を例え話の例として出したのですが」
「でも部活動って『同じ学校』ってのが前提よね?」
くっそうっ、やたらと弁が立つじゃねーか。女子は口達者というのは都市伝説ではなかったか。
「まあ納得いただけないようですので、この話しはここで終わりましょう」
「そうね」
「ではそろそろ、」
「待ちなさい。まだ話しが終わってない」
「既に自己紹介は終わったと思ったのですが」
「こんな異世界で学歴なんか披露し合って、こんなものが本題であるわけないじゃない」とコイツ(エリタスさま)は言った。
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