第36話【悪役令嬢の秘密】
「ではこちらへ、」とメイド姿のお姉さんから独り案内を受け通されたのは打って変わって明らかに先ほどの造りとはまるで違っている居住スペース。さっき通ったばかりだから知っていたとは言え、改めて感じるなんというこの格差感。
石造りの階段を二階へと昇らされ、〝或る部屋〟へと案内された。そこに『エリタスさま』が立ったまま待ち構えていた。
しかし……この部屋はいったい……? エリタスさまの素性を思い知らされる造りの部屋へと通された。
なんということか! そこにあったのは〝日本感〟!
エリタスさまは意味深な笑顔を浮かべ話し掛けてきた。
「どう? ロクヘータ。あなたならこの部屋の意味は解るわよね?」
「なんで、〝障子戸〟がこんな異世界に……」
その〝エリタスさまの部屋〟は床こそ絨毯敷きであるものの、窓にはカーテンは無く、障子戸がその代わりをしていた。ただ、天井が高いせいかその障子戸が普通の大きさじゃない。あまりに背の高すぎる障子戸、その点ずいぶんと違和感を感じる。
エリタスさまは意味深な笑顔のまま喋り続ける。
「障子紙なんてこの世界に無くてさ、それっぽいものをわざわざ造らせたの。この家、お金あるし」
「……いったい……何者なんだ、あんたは?」
「わたしは〝あんた〟なんかじゃない。わたしのことは『エリタス様』と呼ぶことになってたでしょ」
なんか、この呼び方、抵抗があるな……まあこちらは〝養われている身〟。我慢しろということか。くっそー、なにが異世界で無双だか! 異世界で使用人とは!
「じゃあルゥン、あなたは立ち去ってくれてかまわないから」エリタスさまは命じた。
なんだこれ? いきなり〝ふたりきり〟シチュか?
「そうは参りませんエリタスお嬢様、お父上から言づてを受けた身ですから」
「今の会話で察しなさいよ。『ショージド』とか『ショージガミ』とか、あなたたちは言わないでしょ?」
「察する以前にエリタスお嬢様、私は事情についてだけは最初から聞かされていて知っていましたが」
「そうじゃないっ、これじゃ秘密の話しもできないわねって!」とエリタスさま。
「したいんですか? 二人で秘密のお話しを」
「そんなことより、女奴隷達の様子を見てくるよう頼んでるんだけど」
「私が行く必要はありません。既に別の者に様子を見てくるよう頼んでおきました」
さっきの別のメイドさんへの〝耳打ち〟か。
エリタスさまの顔に明らかに不満げな表情が現れたが、
「しょうがないわね、じゃあドアをしっかり閉じておいてよね」と不承不承に承諾した。
「かしこまりました」とメイド姿のお姉さん。
直ちにこの部屋のドアが閉められ、この部屋はこの自分と、お姉さんと、『エリタス』というおよそ日本人の名前とも思えないが日本人であるらしい同世代の女の子一人となった。
つまり三人だけ。
とは言え部屋がやけにだだっ広いため密室感がまるで無い。ただ〝秘密の話し〟というのは表現として穏やかじゃない。
「ではこちらへ、」とメイド姿のお姉さんに円形の小テーブルへと案内された。そこには椅子が二脚。そのうちひとつへ座るよう促される。
エリタスさまがさっそくそのひとつへと座り、もうひとつへと自分も座る。向かい合う形。メイド姿のお姉さんはエリタスさまの斜め後ろの立ち位置をとる。
「ロクヘータ、あなたは転生者よね?」とエリタスさまが訊いてきた。
「そうですが」
なぜかエリタスさまはニカッという笑いをした。優しそうな笑みだとかそういう手の笑顔ではなく〝ニカッ〟なのである。
「そう、わたしも、」
エリタスさまは確かにそう言った。〝わたしも〟と。
「言いたいこと、解る?」
「やっぱり日本から、なんですか?」そう訊いた。
「そう、わたしも、」と、また同じことばを同じ表情のまま繰り返すエリタスさま。
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