第34話【悪役令嬢、疎外感を味わう】
フォーエンツオラン家本邸——
「なんていうのかさ。」と椅子に腰掛けたままのエリタスが切り出し始めた。
傍らには彼女の専属メイドのルゥン。
「ちょっと、相づちくらい打ってよね」と不機嫌そうにエリタス。
「申し訳ありません、話しは一通り聞いてから、と思ったものですから」
「あの無双勇者と奴隷たち、わたしが養ってあげてるのよね?」
「その通りです。エリタスお嬢様」
「ずいぶん楽しそうに掃除してるみたいじゃない。掃除なのに」
「ああ窓ですか」ルゥンは言った。
開け放した窓から、非常に小さな音だがきゃっきゃ、きゃっきゃ、とした嬌声が入り込んでいる。本邸からあの倉庫までの距離を考えるとかなりのバカ騒ぎをしている、と分析するのが妥当であった。
「では窓を閉めさせていただきます」と窓の方へと歩き出すルゥン。
「そうじゃないっ! そうじゃなくて、もっと別種の腹立たしさがあるの!」
「これはおそらく楽しそうにでもしなければ掃除などやっていられないということなのでしょう」あまり表情も変えずルゥンが言った。
「女奴隷ってそんなデキた人間だったっけ? 〝性〟を売りにしているだけの卑しい人間のはずなのに」
「これはロクヘータさん、いえ、ロクヘータ様が率先して掃除をしているためかと思われます」
「なによそれ、女奴隷の主じゃなかったの?」
「の、はずですが」
「まったく腹立たしいわね。掃除を手伝おうだなんて下心がミエミエ」
「というとどういうことでしょう? エリタスお嬢様」
エリタスはルゥンを一瞥。
「ルゥン、あなたもあの丈の短い服見たでしょ? あの服で掃除なんてしてたらチラチラ・チラチラ履いてる下着が見えまくるに決まってる。きっとそういうのを鑑賞したいに違いないわ」
「そんなことよく想像できますね」
「さっき言ったでしょ! 女奴隷なんて〝性〟を売りにしているだけの人間だって!」
「そこまでのご理解があるのなら、女奴隷などは下着くらい見られても平気なのでしょうと、そう考えるほかありません。よもや履かないで掃除していることもないでしょうし」
エリタスは急に椅子からがばと立ち上がった。
「それよよれ! あなたもよくそこまで想像できたわね! 女奴隷ならそういう使い方してても不思議ない!」
「申し上げます。それはわたし以外の者に言わないようお願いします。そうした〝妄想癖〟は隠しておくのが〝ご令嬢〟というものです。あなたはフォーエンツオラン家の一人娘にして唯一の後継者であることを常にお忘れなく」
「こんな時にわたしにお説教? わたしは〝事実〟を知りたいだけなんだけど」
「それならご安心ください」
「どう安心しろっての?」
「現在掃除中のあの建物には〝御化粧室〟がありません」
「あぁ、トイレが無いってことね」
「そうでした。『トイレ』でしたね。したくなったら、この本邸の方へと来るほかありません」
「それで?……」
「私が直接やって来た女奴隷を調べましょう。エリタスお嬢様は決して何もしないで下さい」
「……」
ちょうどなんというタイミング。キン・コンと玄関の鐘の音が鳴った。
「噂をすれば、みたいですよ」ルゥンは言った。
「でも二十四人もいるんでしょ? その中の一人じゃない」エリタスが否定的なことばで返す。
「しかしまずは〝とっかかり〟です」
「まあ、そうね、」
ここでエリタスは考える風。
「でもこんなのにしょっちゅう来られたら、それはそれでたまったもんじゃないわね」
「それはそれです。そちらの対策はおいおい考えるとして、いまエリタスお嬢様に必要なのは〝きっかけ〟なんじゃないでしょうか?」
「すぅいませーん!」との〝響く声〟が邸内にまで届く。
「ロクヘータ様の声ですね」ルゥンは言った。
「ちょうどいいわね」とエリタスの顔にようやく笑顔が戻った。少しばかり影のある笑顔ではあったが。
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