第22話【部屋割り】
一人の美少女元女奴隷さんが「はい!」と手を挙げ、指名もしてないのに喋り始めた。
「部屋割りってどうなってます?」
自分はこれを言われ脱力した……。一気に脱力した。このような超高級ホテルにはこの後は滞在できないのである。滞在し続けることは無理なのである。解っているのか?
「のんきね、」と別の美少女元女奴隷さんが口にしてくれたが、こちらの意見への賛意は広がらない。
「この階のお部屋は三部屋ですよね」とラムネさんが切り出してきた。「——すごく広い部屋ひと部屋に、広い部屋がふた部屋です」
「それで?」と棘を感じる反応が誰かから戻ってくる。
「わたしたちはロクヘータさんを含めて二十五人ですから、十一人と七人と七人で部屋を割ったらいかがでしょう?」
「なにその〝ロクヘータさん〟てのは?」
「え? はい?」
「〝ご主人様〟と呼びなさいよ。あなたもわたしたちも女奴隷でしょ」
こちらの意見への賛同者は目を覆うばかりにひどく多い。
「待った待った! みんなっ。みんなは〝元女奴隷〟でもう奴隷じゃない」
ラムネさんに突っかかっていった美少女元女奴隷さんのヒトはスカートをつまみ会釈をし、下品な服を着ているのに上品そうに振る舞った後、こう言った。
「ご主人様のわたしたちに対する気持ちはありがたく感謝いたします。しかしそれはそれ。わたしたちの身分は女奴隷です。一人、女奴隷の分限を超える者を許してはおけません」
うわ、嫌だなー。
「わたしにも部屋割りについて考えがあります。もしよろしければわたしのことばにも耳を傾けてくれたら嬉しく思います」
そう言われると断りにくい。
「どうぞ、」と口にする。
「ありがとうございます」と言うや結論「ご主人様はこの広いお部屋をお使いになってください。残りのふた部屋を十二人と十二人で分けます」
「なっ、なにそれ⁉」
僕はこの広い部屋で独りきりなのか?
「いや、それにはちょっと心配が」
「なんなりと」
「ラムネさんが少し心配なんだけど」
どうも〝元女奴隷の皆さんVSラムネさん〟という勢力構図ができているような気が……、ラムネさんが激しく心配だ。
「元々ラムネもわたしたちも同じ女奴隷商館にいたのです。わたしたちはもう見知った中であり、既にある種の仲間です」
「しかし、」
「ご主人様が〝初めての女〟に心奪われるお気持ちはよく解ります。だけど、平和のためにここは我慢を」
『初めての女』ってなにその下品すぎる表現は! ぜんぜんそうなってないんだけど!
我慢なら既に風呂場で我慢大会を克服した身だぞ。積極的に言いたくないけど。
「殿方は〝可哀想な女の子〟に心惹かれるようですね。それを同情と言います。わたしたちがラムネをそんな良い立ち位置に立たせるわけないじゃないですか。すご〜く仲良くしますよ」
この一連の発言に対するブーイングはまったく起こらなかった。そしてこの口達者な美少女も自分の名を名乗らない。髪型もほとんど同じ。こちらが誰が誰だか分からないのを良いことに悪い意味(?)での記憶に残らないよう、敢えて名を言わないようにしている、としか思えない。
お、女の子に対する、幻想が——。
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