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拝啓、私に裏切られた貴方へ

作者: Mea
掲載日:2023/06/19

お楽しみいただければ幸いです。



私に裏切られた貴方へ。


体調にお変わりはないでしょうか?


今も変わらず笑っておられますか?


貴方を見捨てた裏切り者からの最後のお手紙です。


どうぞ、破り捨てて燃やして頂いてかまいません。


ただ、許されるなら。


いいえ、決して許されることはないのですけれど。


一度だけ。一度だけ、この手紙を読んでいただけませんか?


そして、手紙を読み終えた時、最後に。


本当の本当に、最初で最後に、私の名前を読んでいただけませんか?


それだけで、十分です。


それだけで、十分なのです。


私が貴方の元を離れてから。


貴方と私が別々の道を歩んで、早5年。






おかしいですか?


おかしいでしょう?


死ぬ時の手紙を、貴方に送る最初で最後の手紙をこんなに早く書くなんて。


でも。


きっと、数年後には書けなくなると思うのです。


今しか、今だからこそ、書けるのです。


だから。だからどうか。


全てを知った貴方が傷つきませんように。


貴方のせいではないのです。


全ては私の選択なのですから。









そうだわ。


また、あの木の下で笑ってくださいませんか?


笑って、笑って、幸福に包まれて、そして、そっと私とお別れして下さい。


きっとそれが、ーーー。


きっとそれが、私にとっての最高の贈り物になるでしょう。



ああ、それから。


貴方が一番お好きな花を貴方に。


私はもう、貴方に直接これをお渡しすることは叶いませんから。


貴方の一番お好きな、いえ、お好きだった、かしら?


とにかく、一番素敵な花の種を貴方に。


一番、素敵だった、一番、美しかった花の種を貴方に。






もう、紙がないわ。


そろそろ、お別れですね。




では、最後に。


私の名前を。


ーーー。覚えていらっしゃるかしら?


私の名前を、呼んで頂けませんか?



貴方の裏切り者より。








文字がぼやけて、インクが滲んだ。


色褪せた紙の上に美しい文字が並んでいる。


懐かしくて、優しくて、残酷なあの人の。


傷つけて、傷つけられて、消えてしまったあの人の。


懐かしい筆跡だった。


懐かしい言葉遣いだった。


あの人を感じるその手紙は、色褪せていて。


所々塗りつぶされた文字があった。










ああ、そうか。


「・・・そうか。」


最後に。


名前を。


「ーーー、アネモネ。」















手紙には、昔、私が好きだった、いや、今でも一番好きな、マリーゴールドの花の種が入っていた。

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