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1話

「はぁ…はぁ…クソ!まだ追ってきてんのかよしつけぇなぁ!」

 走る、ただ我武者羅に走る。止まったら死ぬ。冗談抜きでそんな状況だ。

 孤児院出身駆け出し冒険者アレク16歳。ただいまレッサーアースドラゴンに追いかけられ鬼ごっこを始めること早1時間。

 何故こんな状況になったのか、それは今朝のことである。


「ミーシャが熱を?」

「ええ、昨晩から…今丁度薬草を切らしていて薬を飲ませてあげることが出来ないの。」

「そりゃ間の悪い…」


 何気なく孤児院に顔を出した時、シスターから妹分が熱を出していることを聞いた。薬草を煎じて飲ませればなんてことは無い症状だ。しかしミーシャはまだ幼くあまり熱を長引かせれば負担は大きい。

 薬屋にでも行けば直ぐに薬は手に入るだろう。しかしここは孤児院。いくら街から支援があれど満足に孤児院を運営させるには些か額が足りない。出費はなるべく避けたいものなのである。


「おっし!じゃあ俺がちょちょいとダンジョンからかっぱらって来ますかね」

「でも…大丈夫?薬草が手に入るのは3層以降よね?1人じゃ危ないんじゃない?」

「大丈夫大丈夫。薬草だけとって直ぐ抜け出すさ。」


 ダンジョン、混沌と成長の神が作り出すとされる魔物の蔓延る地下に広がる空間の事だ。そこには魔物だけでなく鉱石や薬草など貴重なものも手に入る。

 そのダンジョン第3層に薬草の群生地がある。そこから少しばかり薬草を採取してやろうと企んだわけだ。


 そして俺は1度宿に戻り軽く準備を整えダンジョンへと向かった。



 ここまでは良かったのだ。ダンジョンに入ってからは最低限の戦闘しかせず、無事第3層に辿り着き薬草を手に入れることが出来た。


「これでよしっと。さっさと帰りますかね」


 問題はここからだ。帰り道のダンジョン第2層、後ろの方から凄い音ともにクソでかい化け物に追いかけられている冒険者2人組と遭遇したのだ。


「レッサーアースドラゴン!?なんで2層なんかに!?」


 レッサーアースドラゴン。レッサーなどと名前についているが正真正銘ドラゴンの1種だ。普通ならこんな浅い階層には絶対に現れない。

 しかし1つだけ例外がある


「神の気まぐれか…!」


 神の気まぐれ、文字通り神が人々に成長を促すべく行っているとされる現象だ。このように化け物が出てくることがあれば、今までなかったはずの鉱脈が突然現れることもある。他にも隠し部屋やそこに置かれている宝箱などもそうだ。


「しかも追いかけられてるの、女の子じゃないか!」


 追いかけられている2人組はどう見ても女の子。

 そしてその2人組の内1人が逃げる先にいる俺に気が付いた


「!!!そこの人!急いで逃げて!」


 怒鳴りつけるようにこちらに話しかける。その様子は疲れと焦りでごちゃごちゃだ。


「逃げろっつっても…」


 退路はこちら側、逃げようと思えば今すぐ逃げられる。しかしここで逃げてしまっては2人はどうなる?確実に逃げ切ることが出来るのか?そう疑問に思った瞬間、俺は逃げてくる2人組に対し横の方角へ駆け出した。そして


「おらこっちだデカブツ!そっちの2人よか俺の方が食いでがあるぞ!」


 と化け物に向かって思い切り石をぶん投げた。


「ちょ!何やってるの!?」

「こいつを少しばかり惹き付ける!あんたらが先に逃げな!なーに、適当に撒いて俺も逃げるよ!」


 そして思惑通り化け物は俺に目標を変えこちらに走り出した。




 これが今この化け物と追いかけっこしている経緯である。我ながらどうかしている、こんな化け物相手に何が時間稼ぎだ。


「にしても!本当に!しつこい!」


 我武者羅に逃げ回っているために自分でもよく今の居場所がよく分からない。今は上手く逃げれているが行き止まりにでもぶつかれば即おしまいだ。

 しかしそんな嫌な想定は大体現実になる。


「くっそまじか!もう行き止まりかよ!」


 目の前を見れば段々と壁が迫ってきている。周囲はある程度幅があるとはいえ一本道のような場所に逃げ込んでしまっているため引き返すことは難しい。

 俺の逃げ場が無くなったことを後ろの化け物も理解したのか動きが遅くなっているのを感じた。


「だぁぁぁ!もうヤケクソだ!やれるだけやってやらぁ!」


 俺は振り返り、腰に携えていた剣を抜き構える。さーて、どうしたもんかなぁ

誤字等あれば報告助かります。

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