表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

童話

アリとキリギリスと、翔太のお菓子とお味噌汁

翔太が食べた後は、汚い。


味噌汁は、床に散り、デザートは、ボロボロとこぼれている。ポチは、それをよく知っており、死ぬ間際まで、座る場所は、翔太の真下と決めていた。


それでも、ポチが死ぬまでは、床は、きれいであった。全てをポチが舐めとっていたからだ。


そして、今日の夕食の後の床は、この冬最大の汚れ方だ。


味噌汁は、散っているのではなく、こぼれているという表現が正しいだろう。そして、食後の甘いお菓子が、ボロボロと、床に広がっていた。



  ☆彡



キリギリスは言いました。


「冬なんかまだまだ先じゃないか。

 なんで、今から冬の心配なんかするんだ?」


アリは、答えます。


「冬が来たら、食べ物はなくなってしまいますよ。」


キリギリスは、笑います。


「ははは。今から冬のことを考えるのかい?

 それに、あの川を渡るのは 大変だよ。」


そうなのです。先ほどまでなかった味噌汁の川が、アリの巣穴への道を塞いでいるのです。


「大丈夫です。働きアリですから。」


アリさんは、お豆腐をよけ、ワカメの森を抜け、タマネギを乗り越え、必死でお菓子の欠片を巣穴に運びます。


キリギリスさんは、アリさんのことを可哀そうに思ったので、持っていたバイオリン・ストラディヴァリウスで、アントニオ・ヴィヴァルディを弾いて応援しました。


どれほどの時間、演奏は続いたでしょうか?


チャイコフスキーの弦楽セレナード ハ長調 作品48 第1楽章が終わりに近づいたころには、日も暮れ、辺りは暗くなり始めていました。


アリさんは、せっせとお菓子を運びます。


疲れたキリギリスさんは、言いました。


「じゃ、ボクは帰るね。アリさん、頑張れっ。」


その時です。二人の頭上に、流れ星がひゅんと流れました。


キリギリスさんは、願います。


「明日も、楽しく遊んで暮らせますように。」


アリさんは、願います。


「慎ましくて良いので、幸せな暮らしを。」



やがて、雪つもる 冬がやって来ました。


もう、外には、食べ物はありません。


しかし、キリギリスさんは、その美しいバイオリンの音を評価され、コンサートツアーで大忙し。


そして、アリさんは、今日もお菓子を運びます。


冬になっても、翔太君の食べ方は、汚いまま。床には、お菓子が落ちていたのです。


味噌汁の川は、前より深くなり、今日は、油揚げまで落ちています。


障害物をよけながら、巣穴へ。


アリさんの頭上には、星が、キラキラと 瞬たきます。


夜空には、どこからともなく 美しいバイオリンの音が響くのでした。

文字数(空白・改行含まない):1000字

こちらは『冬の童話祭2022』用、超短編小説です。

くわえて、こちらは『第3回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』用、超短編小説です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 翔太くんエチケットを身につけないとね!
2021/12/28 15:55 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ