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次から次へと

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。


 新規のブックマークありがとうございます。

 お読みくださっている方々に感謝します。



 銀髪の隊長さんが放った弾丸は、私の頭を過たず正確に打ち抜いた。

 はず、だった。



「いたっ……! ……?」


「……は?」



 確かに頭に着弾した。

 頭にすごい衝撃が走ったのが確かに感じとれたし、こんな威力の弾が命中したら私の頭くらい簡単に粉々にできるということも分かる。


 でも、おかしなことにほとんど効かなかった。

 せいぜい投げられた小石が当たった程度で、致命傷には程遠い。


 もしかしてこれも警告で、手加減した弾を撃ってきたのかと思ったけれど、違う。

 だって、さっきまで余裕の表情だった隊長さんが、呆気にとられたような顔をしているし。



「……おかしいな。確かに当たったはずだけど、どうやって防いだんだい? 『念動力』か、いや、君のギフトの出力で僕の弾を防げるはずが……っ!?」


「が、ガルス、どうした?」



 私のほうを見ながら首を傾げている隊長さんの顔が、険しく歪んだ。

 それを見て、隣に立っている陰気な男の人が困惑したような声をかけている。



「なんだそのステータスは、どうなっている……!」


「え、え?」



 ス、ステータス?

 私のステータスが、どうかしたんだろうか。

 ちょっと自分で見てみよう……え?








 ナナ


 ランク5


 状態:正常(逶エ謗・謫堺ス)


 【スペック】

 H(ヘルス)  :620/628

 M(マジカ)  :634/869

 S(スタミナ) :368/412


 PHY(膂力)  :4530(逶エ謗・謫堺ス)

 SPE(特殊能力):710

 FIT(適合率) :49%


 【ギフト】

 治癒Lv7 念動力Lv3







 ……あれ? なにこれ。

 状態と膂力の項目に、なにか変な文字が表示されている。

 というか、膂力の数値がおかしい。私、確か1700くらいしかなかったはずなのに。4000を超えてる……?

 ど、どうなってるの?







「……あーあ。こんなことなら最初っから自分に使っときゃよかったわ」




 自分のステータスの異常に困惑していたら、目の前から誰かの声が聞こえた。



「くそ、下手にスタミナをケチったせいで、メンドクサイことに……」


「! お、お姉さん、まだ起きちゃダメ!」



 お腹から血を流しながら、なにかを呟きながら起き上がろうとするお姉さんを止める。

 やっと穴が塞がり始めたところなのに、こんな状態で起きたらまた傷が……!



「No.77、そのまま治療を続けて」


「え? ……あ、あれ……!?」



 お姉さんの手が私の手に触れた直後、傷を癒す『治癒』のギフトの光が急激に強くなった。

 それと同時にみるみる傷が塞がっていって、数秒後には何事も無かったかのように全ての傷が綺麗に治ってしまった。



「思った通り、他人の膂力を強化できるなら他人のギフトの強化もできるみたいね。ホント便利な力だこと」


「他人の膂力を、強化……!? バカな! 『膂力強化』のギフトは自分自身にしか使えないはずだ!」


「アンタらは知らなくていいことよ。黙って死んどきなさいクズども」



 な、なにがなんだか分からないけど、どうやらさっきから私のステータスがおかしくなったり『治癒』のギフトが強力になったりしてるのは、お姉さんの力みたい。

 ……施設を脱走してから、いったいなにがあったんだろうこの人……。

 隊長さんたちに罵り混じりの言葉を吐いて、こちらのほうを向いたかと思ったらバツの悪そうな顔で溜息を吐いた。



「はぁぁ……結局またアンタに助けられちゃったわね」


「え、えっと……」


「借りは後で返すわ。協力してくれるっていうのなら、今はこの場を切り抜けるために力を貸しなさい。あと……」


「……?」


「……ありがと」





 最後にそっぽ向きながらなにかを呟いた気がしたけれど、よく聞こえなかった。

 顔がちょっと赤くなってたけど、どうしたんだろう。血を流し過ぎて貧血なら青くなるだろうに。


 ……ところで、二人だけでこの状況をどうやって切り抜ければいいんだろう……。













 ~~~~~ロナ視点~~~~~














 あーもーくっそぅ! 悔やんでも悔やみきれん!

 スタミナとマジカを温存しながら戦おうと思ってたのに、結局どっちも大幅に消費するハメになっちまったわ。


 そのうえNo.77にまた助けられちゃったし。

 前回のはこっちが庇って傷を負ったのを治してもらったからおあいこみたいなもんだったけど、今回は完全に借り一つだわ。

 ……仕方ないわね。ケリがついたらK2のラーメンでも奢ってやるか。




「さて、仕切り直しよ」


「……へぇ、まだやる気かい、レディ」


「当たり前よ。……皆殺しにしてやるわ」


「お、お姉さん怖い……」



 殺気バチバチで啖呵を切ると、大きく怯んだ。No.77が。

 いやアンタに怖がられても困るんだけど。私味方なんですけど。



「正気かい? その子が加わったところで、戦力差はさほど縮まっていないように思えるけど」


「はっ。この子の頭にまともにブチ当てといて、傷一つ負わせられてないくせによく言うわ」


「どうやったかは分からないが、君がその子の膂力を強化したんだろう? 膂力強化とは違う、その文字化けした妙なギフトによって」


「さて、どうかしらね」



 ちょっと前にあのデカ亀に殺されそうになって、前髪の黒い部分が増えてから文字化けギフトによってできることも増えていた。

 『膂力強化』のギフトとは違う、膂力そのものの数値を一時的に上昇させる能力だ。




「そんな力があるのなら、なぜ今まで自分で自分を強化していなかった? 自分自身は強化できないのか、それとも他に理由があるのかな? 長続きしないとか、何かしらの代償が必要、とかね」



 んー、当たらずとも遠からずってとこね。

 この『文字化けギフトによる膂力の強化』と『膂力強化のギフト』は、同じようでちょっと異なる点がある。


 まず、膂力強化のギフトは『マジカ』を消費するのに対し、文字化けギフトによる膂力の強化は『スタミナ』を消費する。

 つまり、使い過ぎると腹が減る。そりゃもうえげつないほどハラペコになる。


 マジカは尽きてもギフトが使えなくなるだけで他に悪影響ないけど、スタミナは尽きたらまともに動けなくなるから極力節約したかった。

 で、スタミナをケチった結果、腹に風穴開けられてNo.77に借りができてしまう始末。アホか私は。


 ま、要するに貧乏性拗らせた結果出し惜しみしすぎてたってだけで、特に大きな代償があるわけでもない。

 さっき強化したNo.77も、5分くらいは強化が維持されたままのはずだ。




「隊長、指示を」


「ルーヴァはブルースとともにレディを押さえて。ミリルの耐久強化を忘れるな。ルガールは引き続き僕の傍でマジカとスタミナを供給してくれ。そっちの隊長はさっきと同じように銃撃の支援を―――」


「させないわ」




 銀髪キザ男隊長が指示を完了する前に、保存用の謎バッグから『あるもの』を取り出した。





「……え?」


「なんだ、ありゃ……?」




 バッグから取り出したのは、なんの変哲もない岩。

 パイシーズへ向かう道中でいくつか確保しておいたものだけど、さして特別なものでもない。

 ちなみにサイズは直径1mくらい。


 さっきまで二人相手にやり合ってたから取り出す暇が無かったけど、今は違う。

 取り出した岩を、銃を構えている連中相手にぶん投げた。



「せいっ!」


「う、うわぁぁあああっ!!」



 たった一つ投げただけで、何人も潰れていく。

 ギフト持ちでも当たればやばそうなこの大質量。ただの人間が喰らえば即死でしょうね。



「い、今の岩、どっから出しやがったんだ……!?」


「落ち着け、あんなものそうホイホイと投げられるもんじゃない。一発限りのコケ脅しだ。怯まず冷静に……え?」


「はい、次ね」



 ちなみにバッグの中にはさっきと同じくらいの岩があと20個ほど入ってます。

 あと20発今のを凌げば全滅せずに済むぞ。頑張れ。


 次々と取り出して、銃撃してくる連中にぶん投げまくる!



「オラオラオラァ!!」


「う、嘘だろ ゴギャアァッ!!」


「うぎゃあああ!!」


「お、お姉さん、やりすぎだよぅ!」



 シャラップ! やらなきゃやられるのに容赦なんかしてられるもんですか!

 大体、こいつらだってさっきまで私に向かって銃弾を容赦なく浴びせまくってたのよ! 超痛かったわ!

 よってコレは正当防衛である! 異論は認めん!



「と、止めろっ!」


「やめろこのメスガキがぁっ!!」


「くたばりやがれぇっ!!」


「無理はするな! 『設置』が終わるまで時間を稼ぐだけでいい!」



 次々と銃撃隊をミンチに変えていく私を止めようと、ギフト持ちの連中が襲いかかってきた。

 しかも、なんかキザ男隊長が移動しながらバスバスとこちらに向かって銃撃してる、いや弾丸が空中で止まってる? なんだあれ。


 んー、もしかして発射した弾丸を『設置維持』のギフトで止めてんのかな?

 なんだってそんなことを……あ、なんかスゲー嫌な予感。



「お姉さん! 多分あの人、弾丸をいっぱい設置して、それを一斉に発射しようとしてる!」


「その通り。さて、ナナちゃんはともかくレディはこれを防ぎきれるかな?」



 ちっ、キザ男隊長を止めようにも、つかず離れずで纏わりつくように攻撃してくるギフト持ちたちが鬱陶しい。

 次々設置されていってるけど、あんな数の弾丸をまともに受けたらただじゃ済まない。下手したら粉々だ。


 No.77は元々の膂力がアホみたいに高いからちょっと強化するだけでも相当頑丈になったけれど、私はこの子の半分ほどの膂力しかない。

 『膂力強化』と重複して強化すれば耐えられるだろうけど、これ以上マジカとスタミナを消耗するのは避けたいし、いやでも出し惜しみしてさっきの二の舞になるのもなー。

 せめてあの弾丸を防げるほどの盾でもあれば、いや並の盾じゃ防げない。岩を遮蔽物にしようにも余裕で貫通してくるでしょうね。


 いや待てよ、盾?



 あるじゃん。おあつらえ向きなのが目の前に。



「さて、準備は整った。ブルース、ルーヴァ! すぐに離脱―――っ!?」




 チマチマ近接攻撃してくるギフト持ちたちに『磁力付与』を発動。

 私とこのギフト持ちたちの身体に引力を発生させて、引き寄せる!



「ぉわぁっ!?」


「ぬぉおっ!?」


「オラァッ!!」


「「ぶほぁっ!!」」



 引き寄せた勢いのまま、両方の顔面を死なない程度の力でぶん殴って気絶させた。

 ノビたギフト持ちたちの身体を盾にして、そのままキザ男隊長に向かって突進する!



「ほらほら、撃てるもんなら撃ってみなさい!」


「くっ……! お転婆すぎるぞ、レディ!」



 こんな状態で弾丸を発射したら、まず間違いなく盾にした二人も死なせてしまうでしょうね。

 それが分かってるから撃てないようで、躊躇した様子で苦虫を噛み潰したような顔で悪態を吐いている。



「っ! ガルスを守れ!」


「た、隊長に近付くなっ!」 



 キザ男隊長の横にいる陰気な男が周りにいるギフト持ちたちに声をかけて、それに応じてすぐさまこちらを迎撃しようと動き出した。

 どうやらあの陰気な男は参謀かなにかみたいね。

 隊長一人だけに指示を任せず、有利な状況が崩れそうになったのをどうにか踏みとどまらせようとする姿勢は悪くない対応力だわ。


 でもね、一人じゃないのはそっちだけじゃないのよ。



「No.77!」


「は、はいっ!」


「馬鹿め、貴様如きに止められるものか!」



 目にも留まらないスピードで走り出してきたNo.77が、私を迎撃しようとする連中の攻撃を防ぐ。

 どれもこれも一筋縄では防げないような、強力な攻撃だった。

 普通に考えたら、防ぎきれるようなもんじゃない。



「えいえいえい、えいっ!!」


「ば、かなっ……!?」



 それを当たり前のように弾き飛ばし、受け止め、叩き落としていった。

 いや、動きはっや!? てか強っ!? 

 ……強化した私が言うのもなんだけど、この子ちょっとフィジカルお化けすぎない? なにこの幼女怖い。


 っといけない、私は隊長のほうを叩きのめさないと!



「うらぁっ!!」


「なっ……!?」



 隊長に向かって肉盾一号をぶん投げて牽制。

 避ければ多分、遥か彼方まで飛んでいった挙句墜落死するわよ。さぁどうする?



「ぐ、ぅうっ……!!」



 避けずに受け止めて、肉盾一号が死ぬのを防ぐ隊長。

 その瞬間、決定的な隙ができた。

 この機は逃さない!



「おおぉおおりゃぁぁああっ!!!」


「おぐはぁっ!!」



 肉盾二号をハンマーのように振り降ろして、キザ男隊長の頭に叩きつけてやった。

 頭にクリーンヒットして、完全に気絶してしまったようだ。

 辛うじて生きてはいるみたいだけど、そう簡単には起きないでしょうね。



「が、ガルス……! よ、よくも……!!」


「アンタも寝てろ!」


「ごはぁっ!!」



 で、そのまま隣にいた陰気男も撃沈。

 司令塔が潰れて、これで残るは烏合の衆だけね。



「ナイスワークよ、No.77」


「う、うん……ちょっと、可哀そうだけど……」



 甘いわー。焼き芋より甘いわー。

 ちょっと優しすぎるでしょこの子。向こうは殺す気でかかってきてるってのに。

 いや私が殺されそうになってた時には容赦なく蹴っ飛ばしてたりしてたけど。




「さぁて、次は誰? アンタか? アンタか? それともアンタ?」


「うっ……!」


「お、応援を呼べ! 我々だけでは手に負えん!」



 ふーん、応援ねぇ。

 隔壁で道が塞がれてる状況でどうやって呼ぶつもりなんですかねぇ。

 壁をすり抜けでもしない限り無理だと思うけどねぇ。


 さてさて、残った連中もまとめてボコボコにでもしながら時間つぶししてますか。











「見つけたぞ、『No.67-J』」







 その声に、全身が総毛立った。


 その若々しくも低い声も、私を示す『No.67-J』という名称も、聞いているだけで虫唾と悪寒が走る。


 あー、そういえばいたわね、壁抜けできる奴が。



 でもなんでよりによってこのタイミングでこんなところにくるんですかねふざけんな。帰れ。




「お前を迎えに来た。大人しく投降しろ、No.67-J」


「頼んでもいない出迎えご苦労様。私の尻を追いかけるのもいい加減にしてほしいものね、『No.1』」




 いつの間にか、なんの予兆もなく気が付いたら私たちの後ろに見覚えのある金髪の青年『No.1』が立っていた。

 ……スコーピオスだけでもうお腹いっぱいだっての。

 勘弁してくださいクソども。

 お読みいただきありがとうございます。

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