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自由と不自由と隷属と

新規の評価、ブックマークありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。


 一人でゆっくり休憩してるところに、金髪ショタが絡んでくる件について。

 鬱陶しい。ウザい。うるさい。どっか行け。

 我ながら言いすぎな気もするけど、心の中だからセーフ。



「そもそもなんの用? 所長さんから伝言でも頼まれたの?」


「別に。ただ、分からなかったから、聞いてみたくなっただけ」


「なにを?」


「いろいろと」



 ……私はアンタの暇つぶしの道具じゃないぞ。

 いろいろとって、理由がフワッとしすぎでしょ。なにこの子。



「アンタの好奇心を満たすためにこんなとこにいるわけじゃないんだけど。もう部屋に戻っていい?」


「うん。でも、もう少しだけ聞いてもいい?」



 『うん』って言っときながら引き止めてるじゃないのさ。なにこの子。

 なによ、好きな食べ物でも聞きたいの? 腕の人の肉が好物ですがなにか。



「……聞くならさっさとしなさい」


「うん」



 溜息交じりにうんざりした様子で促すと、金髪少年が口を開いた。



「『自由』って、そんなにいいもの?」


「……は?」


「君は誰の指示も受けずに、自分の思うように生きてるみたいだけど、それは、そんなに楽しい生きかたなの?」



 待て待て。なんか思ってたのと違うんですけど。

 急にそんな哲学的な質問されても困るんですがそれは。なにこの子。



「施設で働いてれば、誰かの指示通りに生きていれば不安も命の危険だってない。君の生きかたは、毎日傷だらけになって、へとへとになりながら帰ってきてる」


「……それがなに?」


「そこまでして、自由でいたいの? 自由なんて、痛くて苦しくてつらいばかりじゃないの?」



 ………。



「アンタは、誰かの指示を受けて生きてるの?」


「うん。言う通りにしていれば、楽に生きられるから」


「……ふふっ」


「? なにか、可笑しい?」





「不自由しか知らないのに、知ったような口利いてんじゃないわよ。クソガキが」





 それだけ告げて、さっさと部屋に向かって歩き出した。

 言い逃げみたいになってしまったけれど、もうこれ以上なにも話すつもりはない。

 後ろのほうから消え入りそうな声でなにか呟いた気がしたけど、無視。





 部屋に戻ってから、ベッドに突っ伏しながら寝っ転がった。

 あの子の言葉が脳内でリフレインしていて、イライラする。

 ホント、なにあの子。なんのつもりであんなこと言ってきたのかしら。



 ……あの子の言う通り、今の生活は痛いししんどいし疲れるし、決して楽な生きかたとは言えない。

 コミュニティ内で肉体労働でもしていたほうが、まだ安全で楽に生きられるだろう。

 それでも、私は自由に生きたい。自由でありたい。


 少なくとも前のクソコミュニティで浮浪児だったころや、クソ施設で実験体として扱われてたころに比べたら、ずっと充実してる。

 食べ物にも飲み物にも困らないし、冷ややかな視線や罵声を浴びせられることもない。

 それだけで充分幸せだ。あのころに比べたら、ね。

 やっと自分の手で掴んだ私の自由な生活を、あんなふうに言われたらそりゃイラっとくるわ。



 ……でも、人間の欲望っていうものは恐ろしいもので、そんな幸せも当たり前のものになってしまえばなにかしらの不満が出てくるもので。

 もっと快適な場所がほしい、もっと美味しいモノが食べたい、もっと自由気ままに生きたいって具合にね。


 なにが言いたいかって?

 生活をよりよく改善したい。特に食生活を。

 突然なに言いだしてんだコイツとか思われそうだけど、割と切実な問題だったりする。


 というのもですね、最近、夢の中で見たこともないようなごちそうを目の当たりにすることが頻繁にありましてね?

 それがもうどれもこれも信じられないくらい美味しそうで、匂いだけで気が触れそうになるほど食欲を刺激してくる。

 で、いざ食べようとしたところで、目が覚める。そんなことが毎晩のようにあったらそりゃ食生活を改善しようとも考えるのも無理はない。


 あの夢も、腕の人の影響かな。

 もしもあのごちそうも腕の人の記憶なのだとしたら、普段から相当いいモノ食べてるってことなのよね。ぐぎぎ、うらやましいぃぃ……!


 しかも、なぜかほとんどのごちそうの作りかたが分かるっていうね。

 ……腕の人、料理好き説が濃厚になってきたわね。というかほぼ確定かな。


 そのごちそうを自分で調理して再現しようにも、材料がまるで足りない。

 食材も調味料も調理器具も、なに一つ。

 ……お金を貯めて地道に集めていくしかないか。

 まあ、買おうにもそもそも見たことのない調味料がいくつかあるみたいだけど。なんだ『ショウユ』って。


 ああ、お腹空いたなぁ。

 夢の中で見た、『ラーメン』ってスープパスタみたいな料理が食べたいなー。

 ……というか、よく考えたら私ってまともな『料理』を食べたことないかもしれないわ。

 強いて言うなら茶髪(ツヴォルフ)と食べた鳥の鉄筋焼きくらいか? 焼いて塩ふっただけのものを料理と言っていいのか。

 香辛料や調味料がほしいなぁ。どれもとんでもなく高いからなかなか買えたもんじゃないけど……。











 ~~~~~ギフト・ソルジャーNo.1視点~~~~~











 例のバケモノが侵入し、さらにツヴォルフ一等員およびNo.67-Jが脱走した日から半月が経過した。

 あの日は、この施設運用以来の大事件がいくつも重なるという最悪の日だった。


 バケモノにギフト・ソルジャーは一人残らず叩きのめされ、ツヴォルフ一等員により実験記録は持ち出され、挙句の果てに廃棄物指定を受けた実験体の脱走を許すという失態。

 この事件以降ギフト・ソルジャーの、いやこの施設の研究そのものに疑問を抱く者も出始めている。

 『実用化に成功したソルジャーたちがこの有様か』と、深い失望を露わにしながら。


 おそらくあのバケモノも、異獣の力を人体に取り込んだ結果生まれた存在だと思われる。

 他のコミュニティの施設による成功作だとすれば、この施設の研究は他の施設に比べて後れを取っているということだろうか。

 ただでさえ倫理もなにもあったものじゃない非人道的な実験を繰り返しているというのに、他の施設はそれすら凌ぐえげつない実験でもしているというのか?

 ……バケモノが『この施設の実験データには興味がない』と言っていたのは、そういった理由からか。



 まあ、悪いことばかりでもなかったがな。

 あのバケモノが残していった救荒作物の種芋を促成栽培し、食料の供給量の大幅な増加の段取りが整った。

 これにより近いうちに食糧問題は改善され、このコミュニティの寿命を引き延ばすことができそうだ。

 半分ほどはNo.67-Jに奪われてしまったが、それでも栽培して増やすには充分な量があったから助かった。


 

 残された課題は単純明快。


 まずギフト・ソルジャーの強化。

 これは施設の外で異獣と戦闘・討伐することで適合率を上昇させていき、ステータスおよびギフトの強化を継続することで可能。

 決して早いペースではないが、数年も経てばやがてあのバケモノに対抗できるほどに成長できるだろう。


 そして、脱走者の確保。

 実験記録を持ち出したツヴォルフ研究員とNo.67-Jを捕獲せねばならない。

 これまで事後処理に追われ追跡することができなかったが、ようやく一段落ついたので捜索を開始することとなった。



「裏切り者のツヴォルフはともかく、No.67-Jを連れ戻す必要があるのか? 所詮廃棄物指定を受けたゴミだろう」


「……そのゴミに、異獣が一体殺されてるうえにオレとNo.1が昏倒させられてんだぞ。甘く見んな」


「あー……あの時は酷い有様だったな。主にNo.4の顔が」


「髭やら目蓋に瞳やら額に『肉』やら落書きされていたな。意味は分からんが、く、くくくっ……!」


「笑ってんじゃねーよ! くそ、あのクソガキ、わざわざご丁寧に油性で書きやがって! 見つけたらただじゃ済まさねぇ……!!」



 ……No.67-Jが脱走した際に辱めを受けたNo.4が怒りに顔を歪めている。

 落書きだらけの顔でしばらく笑いものにされていたのだから無理もない。




 No.67-Jは廃棄物指定されるほどに見込みのない、痩せ細った浮浪児に過ぎなかったはずだ。

 それが、あのバケモノの腕を食らった影響で凄まじい戦闘能力を発揮するようになったようだ。

 No.67-Jを回収し、急成長した原因を研究すれば、さらなる成果を上げられるだろう。


 よって捜索隊が結成され、本日より回収に向けて動き出すこととなった。



 回収に向かう人員は四人。

 実際にNo.67-Jと戦った経験のある俺とNo.4、戦闘能力は低いが捕獲に適したギフトを所有するNo.13、そして―――



「準備は済んだか」


「……はい」


「では、行くぞ」



 実験体時代にNo.67-Jと交流のあった、桃色の髪の少女『No.77』。

 戦闘による強制確保の前に、説得を試みるために連れていくこととなった。

 最終試験にて覚醒したことにより、上位のソルジャーと遜色ない戦闘能力を発揮できるようになったため、戦闘になった際にもサポートに回ることくらいはできるだろう。



「……お姉さん……」



 小さな声でそう呟くNo.77の顔は、どこか後ろめたさを感じさせた。


お読みいただきありがとうございます。

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[一言] シリアス!?バカな!死んだはずじゃ!?
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