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文字化けギフト『逶エ謗・謫堺ス』

新規のブックマークありがとうございます。

お読みくださっている方々に感謝します。



 コミュニティの外壁にある緊急用の通路から、例の施設から茶髪が盗み出したカードキーを使って脱出。

 門番っぽい人が引き止めてきたけど、殴り倒して無理やり押し通った。

 なにも悪いことしてないのにね、ごめんね。



「さて、早く行きましょう」


「……躊躇なく問答無用で殴り飛ばしやがったなお前」


「躊躇する必要なんてないでしょ? ここから出るしか私たちには先がないんだから。邪魔するならそりゃぶっ飛ばしてでも先に進まなきゃ」


「ごもっとも。まあ、殺してないだけまだ優しいか……?」



 茶髪男が顔を引き攣らせながら、のびてる門番を眺めつつなんかブツブツ言ってる。

 こいつ、あの施設でジヴィナたちにあんな脅し文句垂れてたクセに、今更になってなに小心者ぶってるのかしら。


 コミュニティの外へ出るのは、これが初めて。

 出入りが厳しく制限されているし、そもそも『外』なんてものの存在すらよく分かっていなかったし。

 分かっているのは、『外』はこのクソみたいなコミュニティが安寧の地に思えるほど過酷な環境だということだけだ。




 何重もの分厚い扉を抜けた先には、地平線まで広がる荒野が広がっていた。

 地面には枯れた植物が点々と生えているくらいで、そこらに立っている木々は葉っぱ一枚すら生えていない。

 乾いて枯れ切っていて、まさに『死の大地』と呼ぶに相応しい光景だ。



「これが、外の世界……」


「ああ。なんだ、まさか緑溢れる綺麗な草原でも想像してたのか? んなもん、とっくの昔に無くなっちまってるよ」


「知ってるわよ。あの拷問機械でアンタに無理やり書き込まれた知識のおかげでね」


「で、どうだ? 初めての外の世界の感想は」


「別に。ゴミ溜めからなにもないところに移っただけでしょ」


「ま、そりゃそうか。やれやれ、こっからどんだけ歩き通さなきゃならんのか、考えただけで憂鬱だぜ……」



 苦笑いしながらも、歩き始めた。

 足になるような乗り物でもあればいいんだけど、そんな都合のいいものはこのコミュニティにはない。


 もしかしたら、コミュニティ同士を繋ぐ交通手段みたいなものが他の場所にはあるかもしれないけど、ここは孤立無援だ。

 まあそもそも交流しようにも、こちらから出せるものなんかたかが知れてるだろうけど。

 あの施設っていうかあのコミュニティ自体、人も物も基本クズばっかりだったし。





 休憩を挟みつつ、ひたすら荒野を歩き続ける。

 なにもない平原をただ歩いているだけで、疲れるし足はだるいしお腹が空いてくる。


 でも、不思議と悪い気分じゃない。

 鬱々とした荒野ばかりが目に映るのに、心の中は実に晴れやかだ。



「随分と機嫌が良さそうだな。こちとらそろそろ足が棒になりそうだってのに」


「あのクソみたいな施設から解放されれば機嫌よくもなるわよ」


「それにしたって元気すぎだろ。いったいどんだけステータスが上がってんだ……」


「勝手に見れば? そっちのも勝手に見させてもらうけど」



 そう言いながら、茶髪男のステータスを確認しようと『アナライズ』を発動させたけど、なにも表示されない。

 ……? あれ、おかしいな。何度見ようとしても、この茶髪のステータスを見ることができない。



「オレのを見ようとしても無理だぞ。『アナライズ・フィルター』っていうステータス隠蔽効果のある装備をしてるからな」


「え、なにそれずるい。そっちばっか見て不公平じゃないの」


「ゴネるな。お前の分も持ってきてあるから着けとけ」



 懐から腕時計のようなものを取り出し、押し付けるように差し出してきた。

 なるほど、これを着けていたからこの茶髪とギフト・ソルジャーたちのステータスは見られなかったってわけね。



「そいつを着けときゃ、自分以外の奴にステータスを見られることは無くなる。異獣やギフト・ソルジャーみたいな連中を相手にするには必須の装備だ」


「異獣も、こっちのステータスを見てくるの?」


「当たり前だろ。アナライズってのは元々異獣の使う能力だっての。どんな風に見えてるかは知らねぇが、それで相手の強さや能力を測っているのは確かだ」


「見た目はデカい動物みたいに見えるのに、割と頭いいのね」



 施設で戦ったゴリラも、砂を掴んで浴びせてきたりとかマジカが切れそうになったら節約しながら戦ったりとか、結構頭を使って戦っていたわね。

 戦うことに限って言えば人間と大差ない知能を持っているかもしれない。

 ま、それ以上に考えて戦えばいいってだけの話だけど。



「随分歩いたが、これでもまだ四分の一も歩いていないってんだから、やんなるぜまったく」


「もう日が暮れそうね。そろそろ野営の準備でもする?」


「野営っつーか、確かこの辺に廃墟がいくつかあったはずだから、今日はそこで休むとするか。やれやれ、異獣に絡まれなかった分平和だったが、とにかく歩き疲れたよ」


「このあたりは異獣が少ないのかしら?」


「多くはないが、何日もうろついてたら遭遇する可能性が高い。今日はホントに運がよかっただけだ。ま、この辺の異獣は比較的弱いし、バッタリ遭遇してもお前がいれば倒せるレベルのやつくらいしか出てこないだろうけ――――」




『キョォォオオオオアアアアアァアアアッ!!』




 茶髪男が話してる最中に、どこからか変な鳴き声が聞こえてきた。

 あたりを見回してみたけど、なんの姿も見えない。……いや、上か?



『クルルル……!』



 空を見上げてみると、大きな鳥がこちらを睨みながら羽ばたいているのが見えた。

 デカっ。なにあれ、体長5mくらいはあるんじゃないの?



「くっそ! 言ったそばから出てきやがった!」


「ああもう、アンタが余計なこと言うから……」


「いやオレのせいじゃねぇだろ!? たまたまタイミングが悪かっただけだっての!」



 いいやアンタのせいよ。『腕の人』の謎知識によると『フラグ』というものを立てたのが原因だとか。

 ……意味分かんないけど、こんな状況に陥ってたら八つ当たりの一つでも言ってやらないと気が収まらないわ。

 とりあえず、あのデカい鳥のステータスでも確認してみるかな。






 アレフドーバ


 ランク4


 状態:空腹


 【スペック】

 H(ヘルス)  :563/563

 M(マジカ)  :469/488

 S(スタミナ) :67/213


 PHY(膂力)  :631

 SPE(特殊能力):697

 FIT(適合率) :34%


 【ギフト】

 火炎放射Lv5 望遠Lv3

 






 うわ、つっよ!?

 いやいやいや、ふざけんな。あのゴリラよりもずっと強い数値が羅列されてるんだけど。

 いくら強くなったとはいえ、あの鳥相手だとちょっと厳しくない……?



「ありゃ無理だ! 死にたくなけりゃ走れぇぇぇええっ!!」


「くっそ! 誰よこのへんの異獣は弱い奴しかいないなんて言ったのは!」


「うるせぇ! 無駄口叩いてねぇで走れ!」


『ギョォァアアアアアアッ!!』




 ちょちょちょ、速い速い! 飛ぶの速すぎでしょ!

 こっちは膂力強化まで使って全力疾走してるのに、まるで引き離せないんだけど!



「なにモタモタしてんだ! 追いつかれるぞ!」



 てかこの茶髪もさらに速い!? 私の倍近い速さで走ってるんですけど!

 なに? 逃走用のギフトでも使ってるの? ならちょっとアンタの肉齧らせろ。私も使いたいから。



『ギョォォオオオオッ!!』



 うわ、なにあれ火ぃ吐いてるんだけど!?

 空から炎の雨、いや滝が降り注いでくる!



「前ばっかりに逃げるな! 横方向にも動いて撹乱しろ!」


「わ、分かってるわよ! てかアンタなんでそんなに逃げ足速いのよ!」


「『速度強化』のギフト使ってんだよ! マジカが少ないから長くは使えねぇけどな!」



 やっぱこいつもギフトを使えるみたいね。

 『一等研究員』って言われてたけど、例の注射を受けてギフトを授かったのに、なんでギフト・ソルジャーにならずに研究者に登用されたのかしら。



『ギョワァッ!!』


「がはっ!!?」



 とか余計なこと考えてたら、腹部に強い衝撃と鈍痛。

 こ、このデカ鳥、炎を目くらましにして、急降下して体当たりしてきた……! 



「No.67っ!!」



 体当たりを受けて吹っ飛ばされた私を見て、茶髪が叫ぶ。

 ……いつ聞いても、無機質で嫌な名前ね。



『ギョゴァァァアアアッ!!』



 衝撃でうまく動けない私に向かって、デカ鳥が再び突っ込んできた。

 鋭いクチバシを、まるで槍のように突き出して串刺しにする気か。

 いけない、このままじゃ、今度こそ殺られる……!



 避けようにも、近すぎて私の膂力じゃもう間に合わない。

 あのゴリラみたいに速さに特化して動けたりすれば話は別でしょうけど、膂力強化のレベルが低いからそんな芸当は無理。

 防ごうにも、相手の力が強すぎて無理。膂力強化しても、焼け石に水。



 ……まずい、意識が朦朧としてきた。

 くそ、なんで、私ばかりこんな目に……!


 死にたくない、死にたくない!

 諦めるな、今、私にできることを考えろ!




『ギョォォオオオオオァアアアアッッ!!!』


「う、あ、ァアアアアアアアッ!!!」




 デカ鳥のクチバシが私の身体を貫く寸前に、私のステータスがまた勝手に開いたのが見えた。

 そして、ギフトの項目の『膂力強化Lv1』と文字化けしている『逶エ謗・謫堺スLv■』の文字が同時に光ったのが見えた。





「うぐううぅぅっ……!! ………え?」


『ギョバァッ……!!?』



 お腹をクチバシで突かれた時、異変に気付いた。

 ……あれ? 全然痛くないんだけど。



『ギ、ギギャッ!!』 


「おっと、逃がさないわよ!」



 飛び上がって再び空に逃げようとしたデカ鳥の足を掴む。

 ……軽い? さっきの体当たりは、まるで満タンのドラム缶でも叩きつけられたんじゃないかってくらい重い一撃だったのに、コイツの飛び上がろうとする力が弱く感じる。

 色々確認したいことはあるけど、その前にこのデカ鳥を叩きのめしましょうかね。



「ぉおりゃぁあっ!!」


『ヴァギャッ!!』



 足を掴んで、そのまま地面にデカ鳥の身体を叩きつけた。

 何度も何度も、地面に小さなクレーターがいくつもできるくらいぶちのめしてやった。


 ……いやいや、いくらなんでもおかしいでしょ。

 こいつ、下手すりゃ私の倍くらい強くなかったっけ? なんでこんな圧倒できちゃってるのよ。

 デカ鳥のステータスには特に異常はない。急に弱くなったってわけじゃなさそうだ。


 となると、変化があったのは私のほうか? ちょっと確認。






 NO.67-J


 ランク■


 状態:軽傷(腹部打撲) 膂力強化(逶エ謗・謫堺ス)(×3.0)


 【スペック】

 H(ヘルス)  :227/312

 M(マジカ)  :121/317

 S(スタミナ) :213/315


 PHY(膂力)  :385(×3.0)

 SPE(特殊能力):378

 FIT(適合率) :■■%


 【ギフト】

 摂食吸収Lv1 逶エ謗・謫堺スLv■ 膂力強化Lv1






 な、なんか膂力強化の補正がとんでもないことになってるんだけど……? 三倍ってアンタ、いくらなんでもおかしいでしょ。

 原因は……状態欄の項目を見る限りじゃ、この『逶エ謗・謫堺スLv■』ってギフトの影響みたいだけど、これって本当になんなのかしら。


 今の状況を見る限りじゃ、他のギフトの効果を強化することができるみたいだけど……。

 ってマジカの消耗ヤバい! 一秒に1しか消費しなかったのが、10倍くらい早く減っていってるんですけど!

 ……どうやら、他のギフトの出力を強化できるかわりに、マジカの消費量がはね上がるのがこのギフトの特徴みたいね。




 なら、手早くさっさと仕留めないとね!



「あんグッ!!」


『ギョビャァアアッ!!』



 デカ鳥の喉に思いっきり噛み付いて、肉を齧りとった。

 うわ、羽毛が絡んでめちゃめちゃ食べづらい。飲み込もうとしても喉に引っかかるし。

 まあ、味自体はゴリラよりは濃くて美味しいかな。食感と喉越しは最悪だけど。




『ギキィイッ! キャァアァアアアッ!!』



 デカ鳥が蹴爪で私の身体を蹴って離れ、すぐさま炎を吐いて反撃してきた。

 ……調理するのに便利そうね、そのギフト。




「がぁああっっ!!!」


『ギイイィィイッ!? ギ、ギャァァアアアアアアッ……!!!』



 こちらも口から炎を吐き出し相殺、いや押し切ってデカ鳥の身体を丸焼きにしてやった。

 デカ鳥の肉を飲み込んだ時に『摂食吸収』の効果で、デカ鳥の『火炎放射』を使えるようになったようだ。

 ギフトのレベル自体は向こうが上だけど、文字化けギフトで強化した私の炎のほうが強かったみたいで、どうにか勝てた。



 デカ鳥が死んだのを確認したところで、茶髪男が近付いて声をかけてきた。

 ……一人だけ安全圏まで逃げやがって。



「おいおい、マジかよ。いったいなにしたんだお前……?」


「知らないわよ。この変な文字化けのギフトの効果じゃないの? ギフトの出力を強化できるみたいだけど」


「ギフトの出力強化? 『特殊能力強化』の使い手は他のギフトを強化できるらしいが、あんな圧倒的な力は発揮できないはずだぞ?」


「あっそ。言っておくけど、ホントに私にも分からないからね」


「そ、そうか。……にしても、髪の色がさっきまで黒くなってたが、また銀髪に戻ったな。いや、前髪に少し黒いのが残ってるか?」



 へ? 髪の色? あ、ホントだ。白に戻ってる。

 前髪の、右目の前あたりが黒いままだけど、他は元通りになってるわね。

 ……元に戻ってホッとしたような、腕の人の痕跡が無くなってちょっと寂しいような。



「やれやれ、こんなバケモンに襲われた時にゃ死んだかと思ったが、やはりお前を連れていて正解だったみてぇだな」


「アンタもちょっとは戦いなさいよ役立たず。その拳銃は飾りなの?」


「こんだけデカい異獣相手じゃ大して効かねぇっての。オレに強さを求めるな、オレはすごくか弱いんだ」



胸張って言うことか、ヘタレ。


お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 文字化けスキルの内容が気になって調べてみたけど魔力とかそういう単語は抜きに『直接操作』的な言葉なの意外 魔力とか異世界由来の単語があるから文字化けしてるんかと思った
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