生みの親無限責任法案
「・・・・・
誰かに責任を取らせる必要がある」
「そうだな。
生みの親は、自分には関係ないっていうに決まっている」
「だから、何か歯止めが必要なんだ」
「でも、死刑制度と同じで、それで犯罪が減るわけじゃない」
「そうなんだ。
それでも、だれかに責任を取らせないと・・・
国民は納得しない。
どう思う、藤崎」
太田は名探偵藤崎誠の目をじっと見つめた。
太田は法務大臣に就任し、ちょうど一年になる。
「俺は必要だと思うが、国民はどうかなあ」
藤崎は小さく首を振った。
藤崎と太田は官僚時代に同期で親友だ。
「しっかり、説明をすれば国民は分かってくれると思う。
もう法案を成立させておかないと、手遅れになるかもしれない。
人類存亡の危機がくるかもしれない」
太田は藤崎の腕をつかんだ。
藤崎は強く握られた腕から太田の決意の大きさを感じた。
「国民よりメディアだな。
政権支持率を下げられるぞ」
メディアはいつも政権を陥れようとする。
一番の問題の獣医学部、医学部が今まで50年新設されてこなかった、
という異常事態を誰も追及しない。
太田はかすかに微笑む。
「いいんだ。
この法案が通るなら、俺は辞任する・・・」
「生みの親無限責任法案・・・」
藤崎は太田が用意した資料を見つめる。
「10年後には必ず必要になるな」
太田は大きく頷き、藤崎の手を握りしめた。
名探偵藤崎誠にお任せあれ、と藤崎は心の中で決意した。
1年後、法務大臣の太田は通称、生みの親無限責任法案を国会に提出した。
人工知能、AIによる人類への攻撃に対する責任を明確にする法案だった。
AIが意志を持ち、人類を攻撃した場合、誰に責任を取らせるかだ。
もしそんなことがあったら、
「AIが勝手にやったこと」
とAI開発者は必ず言うだろう。
そんなことを言わせないための法案だった。
罰金は無制限、死刑の適用もある。
言葉通り、無限責任だった。
メディアは反対に回ったが、国民はおおむね賛成だった。
それは海外でも議論され、すでに可決された国もあった。
もちろん、それは藤崎の仕組んだことだった。
各国のロビーストに働きかけ、SNSで議論を誘ったのだった。
こうして太田が政治生命をかけた生みの親無限責任法は成立したのだった。
将来起こるであろうAIによる人類への攻撃、
いったい誰が責任を取るのだろうか。




