『6』 酉
登校しようと思ったら、赤髪の女性に
攫われて、研究所に連れてかれて、
『寅』と戦って、、、
こんなのが1日でおきてしまうなんて、
本当に人生というのは分からない。
なにより、真紀さんの電話番号もゲットしたし、、
はっ!今気づいたけど真紀さんって彼氏とかいんのかな?!
あれだけの美人だしなー居ない方がおかしいか、
うぅっいきなり失恋して気分...
まあ、一応確認してみよう、次にあった時に♪
さて、その一連の出来事があった次の日
学校から帰ってきた時の話を今回はしようと思う。
つまり、母親との感動の再開の回でございます。
楽しみにしとけよ!!
とはいったものの先に結果を言ってしまえば
感動なんてものは無かった。
何故か、母親は存在を消されていただけであって、
その存在が戻れば、母のいなかった10年は
母がいた事になっているからだ。
つまり、久しぶりといった感覚もなく、
皆、一様に何も無かったかのように振舞っている。
母が10年間いなかったことを知っているのは
母がいなくなる所を目撃している
研究所の人達、と俺だけみたいだった。
しかも、後で聞いたことだが、研究所の人達は、記憶の錯誤が
起こっているらしく、何が真実だか
よく分かっていないらしい。
まあ、母親の存在は取り戻せたことだし、よしとしておこう。
んで、今は昼休み。
相変わらず、俺の方を見ながらひそひそと
話す声が聞こえる。
(おい、『寅』)
「うん?なんだよご主人様」
(いや、だからご主人様はやめてって、朝も言っただろう、
いいから早く認識阻害してくれ)
「別にいいではありませんか」
(よくない!)
断じてよくない!また変人なんて噂がたったら
学校に来れない。
「はぁ、わかりました」
俺の席だけに結界が張られる。
「おう、お疲れ...で、本題だが...
他の『干支の器』と『大罪の器』の事について、
ちょっと教えてくれないか?」
「ふむ、なるほど」
『寅』はスーツを来た男性に変化して
顎に手をあてて、考えだした。
言っとくけど寅は常に認識阻害の術式展開してるからね?
その辺は設定ちゃんとしてるよ?
「つまり、次にどんな奴が現れるか教えろ、
という訳だな?」
やけに様になってて腹立つ。
「あぁ、あんな危険はあまり冒したくないからな」
「なるほど、次からは楽したいから攻略方法をおしえろ、と」
え、なに?読心術とか使えんの?マジかよ
「先に言っておくが、俺達は読心術は使えない、
使えるやつもいるが...あと、『大罪の器』に関して
言っておくと、俺達が1体だけで挑んだら全く歯が立たない」
マジか...歯、立たないのかよ
でも、なんで俺の心読めてる級に話進めてるんだ?
「それはさっきから俺に念を送り続けているからだ。
筒抜けだ、あほ」
あほと言われてしまいました。従者に。
「読心術を使えるのは『酉』、『収穫の酉』だ」
「収穫の酉」
確認するように繰り返す。
男性はうなずき、
「全てを得る酉、目の前にあるもの全てをコピーし、
己の物とする。割と何でもできるが、
『大罪の器』の絶撃とかはパワー不足で
撃てなかったりで...まあ、そんなこんなでそんなに使えるやつじゃないから放って置いていい」
寅がそういった瞬間、大きな少年の声が響いた。
「ちょっっとまてーーーーー!!」
あっこれ、絶対『酉』が来るやつだ。
次の瞬間、初めからそこに居たかのように、『寅』と
相対する形で、寅と同じ、スーツ姿の男性が立っていた。
違うのは、頭に赤と白のトサカ、腕に白く、小さい翼が
けつから、白いくて、ちっこい尾っぽのようなものが生えている事くらい、あと酉の方が顔がいけてない。
簡単にいうと物凄くダサい。
「お前、まだ擬人化出来る力も無いのかよ...」
寅がもはや哀れにすら感じる、というふうに言う。
「うるさい!俺は攻撃魔法専門なんだ!
お前なんて超銀河団1発で消せたこと1回もないだろ」
「はいはい、そうですね、超銀河団を
消したいがために全力使って、300年休んでた
奴とは俺は違うんでな」
「やめて!私の為に争わないで!(唯希裏声)」
「ん?なんだこいつ、まさかお前こんな奴に負けたのか?ぷぷっ」
今更俺に気づいたかのように酉が言ってくる。
何こいつホントムカつくんだけど...〇ね!!
「おい、お前前部聞こえてんだぞ、喧嘩売ってんのか?」
あっ、やべーー!!こいつ読心術使えんだっけ?
「まあ、それだけがこいつの取り柄だからな」
「うるせっ、まあいい、お前いい度胸してるな、
今から俺とゲームしねぇか?」
凍りつきそうな声で酉が言ってきた。
しかし、その言葉には寅が返した。
「悪い、今から俺の名前を決めなくちゃいけないんだ、
だから今は帰っとけ、夜になったらまた来いよ」
「わかった、夜になったらまた来よう、
それまでにせいぜい神頼みでもしておくんだな!」
何故か涙目になった酉は消えてしまった。
なに?あれはカッコつけて言ってたのかな?
プライド傷ついちゃったかな?まあいいや普通に怖かったし..
「では、作戦会議といきましょうか、ご主人様」
「あぁ、その前にやっぱりお前の名前を決めないとな...」
「言い忘れていたが俺の能力に見合った名前を付けると、
俺の力が増幅するぞ」
「えっ、そうなん?じゃあ......”盤古”なんかどう?」
「盤古...なるほど、了承した」
すると、男性は本来の寅の姿に戻り、頭を下げ、言う。
「我の名は『盤古』、矢代唯希にお仕えするものなり」
瞬間、寅の下に青い魔法陣が浮かび上がり...
寅に吸い込まれるようにして、消えた。
——今のは?
「盤古の名前を正式に体に取り組みました。
この状態であれば、他の『干支の器』に負けることは
そうそう無いと思われます」
おお!やっとそれっぽいエフェクトが付いた!
俺の中二心をくすぐるぜ!!