『4』GAME START
場面変わって今は教室。
窓際最前列、俗に言う特等席で、
外を眺めながら、購買のパンを食べていた。
研究所から車に乗って直接学校に来た俺は
真っ先に自分の机に直行した。
昼休みに来たのに、
誰にも何も言われないあたり流石俺。
とか考えるのも今日の出来事を考えると
なかなかに苦しい。
っていうのもこの右手首に付いた
超怪しげなリストバンドが物語っている。
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————車内
「申し遅れました、私、加納真紀と申します。
以後、お見知り置きを」
真紀、と名乗った女性は運転しながら言う。
「あっはい、こちらこそよろしくお願いします」
「えぇ末永く」
いやなんか方向違くね?
なに、結婚でもすんの?まじか!
やったー!ぼっち脱出ー!
「では、『CW』の説明に移らせて頂きますね」
真紀は、まあ、対して言う事もないんですけど、と続けた。
「えーっと」
「あの、加納さん」
「はい、真紀でいいですよ」
「いや、それはちょっと...じゃあ真紀さんで...
ではなくて、
説明書あるんだったらそれ渡してくれれば良くありません!?」
真紀さんの手には確かに説明書と思われる1枚の紙が握られていた。
片手運転あぶな!!
「いえ、博士からのお達しですので、一応形式上は、と
思いまして...」
「まあ、いいです。じゃあ、お願いします」
真紀は1度咳払いをして、説明書を読み上げた。
「はい、『フィーリングで頑張ってくれ。』と書いてあります」
「え?それだけですか?」
「はい、それだけですが」
真紀は何か問題でも?という風に言ってくる。
俺は奪い取って確認する。マジだった。
俺は、はぁ...とため息をついて誰が書いたんです?と問うた。
「日向ですけど...」
やっぱり...
まあ、特にないと真紀さんも言っていた事だし恐らく大丈夫だろう。
あっそこ右です。
「まあ、何はともあれ本当にこれからお願いしますね」
俺が言ったのとほとんど同時だろうか、
車が校門の前についた。
「念のため、電話番号交換しておきましょうか」
ん...?なに!?妹以外で初めて女性の電話番号が
手に入るだと!?いや父親以外、野郎の電話番号すら
はいっていないのだが...
「あっ...はいっ...わ、わかりました」
キャッフー!でも、嬉しさのあまりめっちゃキョドっちゃったのは残念!!
遂に...アラーム付き時計と音楽プレーヤーが
本来の仕事を果たす時がきた!
何はともあれ電話番号GET!!
智也に話したらきっと羨ましがるだろーなー。
あっ智也ってのは架空の友達(熊の人形)のことだ。
うぅっ悲しい、
キーンコーンカーンコーン
「あっ丁度昼休みになったみたいなんでもう行きますね
送ってくれてありがとうございました」
そう言って俺はもの惜しげに車を降りて、
地獄(学校)に、向かうのであった。
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以上、車内でのキャッキャウフフ回想であった。
グフフフフ
おっといけない、つい顔にでてしまった。
いやでも、あんな美人な人と電話番号交換できたら、
みんなこうなるよ。
きっと
で、その後も普通に普通の授業を普通に受けて、
帰りの時間になり、帰った。
俺の家は割と学校から近く、
学校近くの閑静な商店街を抜けたらすぐ側だ。
事が起ったのはその閑静な商店街の中である。
スーツを来たサラリーマン風な男性に
すれ違いざまに肩に手を置かれ、ぼそっと呟かれた。
しかも、その内容が尋常ではない。
「ゲームを申し込む。家に着いたらすぐにでてきたまえ」
——ゲーム?
まさか、『干支の器』の事をしっている!?
「あ、あの...!」
振り返って男性に声を掛けようとしたが、
まるで初めからそこにいなかったかのように、
跡形もなく、音もなく消えていた。
仕方がない、ここで抵抗しても母を
助けるのに遠ざかるだけだ。
俺は急いで家に帰り、支度を整えることにした。
日向遥(笑)に貰ったナイフだけをもって家を出る。
やる気まんまんで家の外にでると、先ほどの
男性が家の門の前に立っていた。
「ゲーム内容は簡単、先に相手の頭に触れた方の勝ち。
ゲームは10分後に開始する。ではpreparation time開始」
と言うと、周辺を結界の様なものが覆った。
『CW』を見ると液晶に『9:55』と記されていて、
減っていっている。
こんな機能があったのか!『CW』めっちゃ便利やん!
顔をあげると、先ほどまでの男性はおらず、
白い『寅』が佇んでいた。
俺は驚きのあまり、尻餅をついた。
「なにを驚いている?知っているんだろう?
俺達のことを」
と、先ほどまでの男性と同じ声で寅が言ってくる。
ふむ、なるほど...
いきなり寅かよ!!
めっちゃ危なそうなヤツ引いた!!
しかし、こんな状況なのに何故か落ち着ける要因があった。
それは、
まあ、竜よりはましか、という
謎の安心感からくるものであった。
「私はそこら辺に身を潜めているから
ぼちぼちかかってくるといい」
そういって一瞬にして消えてしまった。
ん?消えてしまった?
そんな相手どうやって頭触るん?
え?終わった?マジで?勝ち目ゼロじゃん!