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WHITE  作者: シュミル
3/19

『1』矢代唯希

話はおよそ8時間前に遡る。


俺がいつも通りイヤホンを耳にぶっ刺して

スマホを弄りながら、

だらだらと学校への道のりを歩いている時のことだった。


誰かに声をかけられた。


万年ぼっちの自分には考えられない事である。


話しかけられることに慣れていない俺は

イヤホンをしていたのも相まって最初は気が付かなかった。


だが、立ち塞がれてしまえば話は別だ。

自然、意識は話しかけてきたであろう人物の元へと向く。


俺はスマホから目をあげ、

イヤホンを片耳だけ外し、

何か用かと彼女をまじまじと見つめた。

とても整った顔立ちをしていて、如何にも

美人、といった人だ。


矢代唯希(やしろゆうき)さんですね」


立ち塞がってきた赤髪の女性が澄んだ声で問う。


「...は......はい」


俺は少し戸惑いながらも即答...出来なくて、

コミュ障がここに来て発動してしまったのが

何故か以上な程恥ずかしい。


「今から私と一緒に来てもらいたいのですが、

よろしいでしょうか?」


すると女性はスモークガラスの

怪しげな黒のスリーボックスカーをどうやってか呼び出し、

俺を乗せた。否、無理やり押し込んだ。


かくして俺は誘拐されたのであった。ギャース。


抵抗出来ず、みすみす相手の思い通りに

させてしまうとは一生の不覚!!

ちっ、しかもチャイルドロック付きか..

用意周到だな(ドヤッ)


なぜ俺がよくこんな状況でこんなこと考えられるか

不思議か?


ふっなんてことは無い

彼女にはまるで悪意というものが感じられないのだよ。(ドヤッ)


とか言ってるけど、俺そういうの全然わかんないし、

もうパニクりまくって現実逃避してるだけだから..(泣)


しかし、こんな状況なのだ。とことん現実逃避して、

妄想に浸ろうではないか。


—————————————————————


ある日俺は臓器密売業者に捕まってしまった。


んだがしかし!!


なんと俺は誘拐に使われた車から逃げだす事に成功したのだ!


さらに車に落ちていた髪の毛を警察に持っていき、

そこから組織名を割り出し、手口などを暴いた!

そこからは芋づる式に組織を崩していき、組織は壊滅!


その発端を作った俺は警視庁に呼び出され、

警視総監から感謝状と金一封を貰った。


こうして矢代唯希少年は幸せに暮らしたのだった。


めでたしめでたし


—————————————————————


はぁほんとにめでたいな、俺の頭が。


現実に思考を戻すそう。


—————————————————————


あれ?考えてみたら、この人めっちゃ美人じゃね?

高めに結んである赤髪のポニーテールに

引き締まったウエスト、出るところは出ている

まさしくBON!KYU!BON!!


yesナイスバディ


ってかスタイルがいい人のスーツ姿っていい!

特にタイトスカートとか神じゃん!

とんでもないエロスを感じる!!


「あ...あのっ」

「ふっ何かな?子猫ちゃん」


すると女性は顔を真っ赤にして言ってきた。


「私実は貴方に一目惚れしてしまいました//、

本当は連れていかないと行けない場所があるんですけど...」


続けて、

「よ...良かったからこの後ホテルにでも行きませんか?」


———————————————————


いやいやいやいや違うでしょ!

自分を誘拐した相手とナニしようとしてんだよ!

いやほんとすみません欲求不満なんです。

思春期なんです。


いやそもそも思考は自由だ!

人権で守られている!中学校の時そうやって習ったもん!


そう考えるだけなら、考えるだけ...なら。

ゔっ、胸が苦しい。現実を見たくないよ。


あれ?おかしいな、何かが頬を伝っているよ。


すると突然女性が声をかけてきた。多分、そんな気がする。


いやだって話しかけられることなんてないし、

それで返事して、

「いや、独り言だったんだけど、ていうか誰?」

とか言われた時の痛みを知っているか!


あれあれ?おかしいよ、前が見えないよ。


「あの」


あ、やっぱり声かけられてた。無視してごめんなさい。


「到着しました」


人生の終点にですか、そうですか、

いやほんとどこにだよ。まさか、「お前の墓場に着いた」

とか言わないですよね?


ともあれ、本当に取り返しのつかないことになると

まずいので車窓越しに外を眺める。


あぁ、なるほど地下駐車場ですかー、これはますますまずいですねー


ほら地下ってだけで怪しいじゃん?

いやでも地下って、なんかワクドキするよね?

すなわち、


地下は男のロマンである!!

ここに明言する!



「こっちです」


1人で盛り上がっていたのに淡々と打ち切られてしまって勝手に傷心であるよ。私は。


そんなこととは知りもせず、

女性はカツカツとヒールを鳴らしながら

エレベーターと思われるものがある方向へ歩き出す。


俺は警戒しながらも後からついて行くことにした。


いやー、やっぱりまじまじと見ると本当に素晴らしい

HIPでありますなー。


おっとあぶない、俺の右手がついつい

前にでてしまうところだった。

警察沙汰は勘弁だぜ。


エレベーターに乗り、女性が『1』と書かれたボタンを押した。

目的地に着くと、

扉が開き...


「えっ?」


そこに広がっていたのは俺が予想していた怪しげな物とは

全く異なっていた。


そこは絵に描いたような研究室で、

白衣を着た研究者と思わしき人達がキーボードを叩いていた。


いや、これはこれで充分怪しいのだが...


その中の1人、なにやら気の良さそうな

白髪の老人が俺に話しかけてきた。


「君が、唯希君かね?」


「はい」


今度こそ戸惑いながらも即答できた。

内心ガッツポーズ。


「そうかそうか聞いていた通り好青年といった感じじゃの、

唯くんにそっくりじゃ」


いきなり母の名前が出てきたことに俺は驚きを隠せない。


「母を...母を知ってるんですか?」


「ん?聞いてないかの?」


「いえ、全くこれっぽっちも」


「まあよい、それについては後々話すとしよう

今は今のことを話すぞ、話は聞いているな?」


「何のですか?」


釈然としないが、とりあえず話を進める事にした。


「適性検査の話じゃ」

「はい?適性検査?何のですか?」

「おいお前さん説明してから連れてこいといっといたじゃろ」


そう言われて赤髪の女性は少し申し訳なさそうに、


「いえ、何故かとても怯えた様子でしたので、

面ど...じゃなくて、気を使ったまでです」


言い訳をした。


「はぁ...まあよい、儂から話すかの...」


そこで老人は1度言葉を切った。

俺たちに応接用のものだろうか、

ソファを勧め、その向かいに自分も座った。

俺の隣には、赤髪の女性が座った。


「さて...どこから話すかの...」

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