『プロローグ』寅の影
———矢代唯希17歳。誘拐紛いの事をされたと思ったら
今度は何やら獣に襲われ死に直面しているようです。
—————————————————————
今日も何の変哲もない通学路を1人歩く。
変わり映えのしない日常が過ぎる。
——そう、思っていた。
まあ厳密に言うとわざわざそんなこと考えることないのだが...
「そんなことはどうでもいい!!」
俺は咆哮する。
「なんだ!この状況!まじで俺の人生これで終わりなんじゃね!?」
死ぬ時は『我が人生に一片の悔いなし』と言って死のうとか
「よくそんなこと考えられてたな!!」
眼前の状況の感じからそんな事言えるわけない。
手足は震え、まるでいうことを聞かない。
いざ死の恐怖直面してみると
『ひっひぇぇぇ!おっ、お助けーー!!』
くらいしか言えなさそうだ。
雑魚キャラかよw
いや全然笑える状況じゃないからね?
現実をしっかり見ましょう。
雪のように、いや純白すら通り越す程に真っ白な体、
岩をも切り裂きそうな爪と牙、
相対する俺を睨めつける赤く赫い双眸
それらを併せ持つ寅
に路地裏に追い込まれてる俺。
毎日の自堕落した生活によって生じた
ひょろっとしたもやしのような体に、
そしてそれに似つかわしい頼りないナイフ1本。
あっこれ終わったわ
まあ、この状況すべて忘れられて、仮に遺言を残せるのなら
俺は確実にこう残すだろう。
「赤い髪のスーツの女には気をつけろ」と