ひとりのせかい
うじうじ主人公回です
あの日、あいちゃんに王子さまが現れたと聞かされたあの日、あの後何を話したのかもいったいどうやって帰ったのかも何も覚えていない。
運転は私だったから、事故らず安全運転であいちゃんを送り届けたんだとは思う。
気付けば家にいて、遮光カーテンの隙間をぬった朝日の眩しさに意識が浮上した。
眠っていたような気もするけどただひたすら暗闇を見つめていたような気もする。
とっ散らかった思考はまとまるはずもなく、ただただ流れていくだけ。
ともすればあいちゃんを恨めしく思ってしまう自分がいて、お門違いがすぎるのに、でもだってどうしてと女々しい考えに支配されていた。
「どうすればよかったんだろ……。」
いくら自問してみても答えは見つからない。
普段何か嫌なことや落ち込んだりすることがあればいつものバーに飲みに行くのに、あいちゃんと王子と出会う可能性があると思うと足は向かなかった。
もし、2人が一緒にいるところと遭遇したら、きっと、取り乱してしまう。
せっかく幸せに一歩踏み出したあいちゃんを邪魔してしまうのは本意ではないから。
私がもっと嫌なやつだったらあいちゃんを詰ることができたのに、私がもっといいやつだったら笑顔でおめでとうが言えたのに。
いつまでもどこまでも中途半端な私は1人でただ蹲るだけ。
それでも社会人として、きちんと出社して仕事はこなしていた。
仕事をして、帰って、ただ呆然と過ごしてまた朝を迎える。
あっという間に1週間が過ぎていった、でも1週間では私の中の淀みは何も薄まらずそのまま。
辛うじて出社してる際には何か口にしていたけれど、それもなくなった週末はいつ食事を摂ったのかも思い出せない。
このまま、床に溶けて、消えてしまえたら
冷たい床に寝そべり天井を見上げて思う、溶けられないならいっそこの天井が落ちてこないかなぁ。
ぼんやりした気持ちでそのまま目を閉じようとした時、インターホンが鳴った。
来客の予定はない、セールスか何かだろうと無視を決め込んだ。
ピンポンピンポンピンポンピーンポーン
はずだったのに連打される呼び出し音に仕方なくインターホンに向かう。
「え……?」
真っ暗な部屋の中で唯一光るその画面には⸺⸺