ふたりのせかい
ハッピーエンドにしたい(願望)
夏を感じさせる日中とはうって変わって、日が落ちた今は羽織ものが必要になりそうな風が吹いている。
標高が高い分、平地より気温自体も低いのかなぁ。
そんなことをぼんやり考えながら歩いていると、先を行っていたあいちゃんが振り向いて手招きする。
「さっちゃーん!こっちこっち、綺麗だよ!」
はーい、と返事をしながら少し足を早めた。
らんさんからもらったチケットを口実にあいちゃんを誘い、無事今日1日デート、もといお出掛けしていた。
朝から市場で新鮮な海鮮と酒を楽しみ、昼はご当地グルメとビール、途中ショッピングモールを挟みつつようやく本来の目的地の夜景スポットにたどり着いたところだ。
「わ!ほんと!綺麗〜!」
「ね、ね、綺麗だよねぇ。」
あいちゃんに追いつき視線の先を追うと数多のきらめきが飛び込んできた。
さすが日本○大夜景、180°以上広がった視界の先は想像以上の景色が広がっている。
景色に夢中になっているあいちゃんの横顔を盗み見る、その瞳に夜景が反射して輝いていた。
使い古された言い方をしてしまえば、夜景よりあいちゃんのほうが綺麗、だ。
さすがに口には出せないけれど。
「……っ!」
きっとそれは私の感じ方だとは思う。
でもゆっくり、スローモーションのように、その宝石のような瞳が私のほうを向いた。
思わず息をのむ、そしてそのまま呼吸を忘れた。
何も言わない、言えない、周りの喧騒さえ聞こえなくなっている気がした。
このせかいに、わたしとあなただけだったならどれほどしあわせだろう
叶いっこないそんな想いが溢れだす、大事に大事にしまって小さな箱庭の中で暮らしていければいいのに。
ドンッ、と現実に引き戻す大きな音が響いて闇夜に大輪の花が咲いた。
そこかしこから歓声があがる、あいちゃんも小さく声を上げてからまたこちらを向いた。
「さっちゃん花火!花火!今日あがるって知ってた!?」
「う、ううん、知らなかったよ。」
「だよね!私も知らなかった、見れて嬉しい〜!」
にこにこ笑いながら空を見上げるあいちゃんに私も!と返す。
この景色を一生忘れたくない、何なら死ぬ前の走馬灯はこれだけでいい、なんて馬鹿げたことを思いながらその姿を見つめた。