よわむしなわたし
完結目指します(長期の空白申し訳ありません)
まなちゃんの結婚式、私とあいちゃんはお色直し前の退場にサプライズで呼ばれた。
両手に花と言わんばかりに私たちと腕を組んで退場したまなちゃんはそれはそれは満足そうな笑顔。
『大好きな2人と一緒に退場したかったの!』
何も聞いてないとプリプリ怒るあいちゃんを宥める言葉、他意のないそれをあいちゃんはそのまま受け止めていた。
ねぇ、あいちゃん、大好き
私の大好きは、特別な大好きなんだよ
そう言えたら、どれだけこの胸の中の物が軽くなるんだろうか。
でも、この重くて黒い気持ちをあいちゃんにぶつける気にはなれなかった。
何かが変わっても、日常は何も変わらずただただ流れていく。
私は今日もまたいつものバーのカウンターでくだを巻いていた。
「さつきさん、夜景とか興味あります?」
チケットを2枚ヒラヒラさせながら声をかけてきたのはバーの店長であるらんさん。
「なくはない、です。」
私全く興味なくてとそのままそれを握らされた、手元を見ると隣県の有名な夜景スポットにのぼるロープウェイのチケットだ。
確か近くには海鮮の美味しいスポットや水族館もあった、はず。
「意中のお相手でも誘ってください。」
「あ、りがとうございます?」
何かを知っているのか、と思わずらんさんの顔を見つめてしまった。
ただいつものクールビューティな顔からは何も読み取ることはできない、小さく息を吐いてもう一度ありがとうございますと伝えるとチケットに目を向けた。
有効期限は月末、あと10日しかない。
スマホを出してあいちゃんの名前をタップしたところで手が止まった、遊びのお誘いなんていつものことなのにさっきのらんさんの言葉が脳裏をよぎってしまう。
よわむし
聞こえたのは誰の声だろう
それを振り払うようにスケジュールのお伺いを送信した。
月末まで仕事は詰まってるけど有休が売るほどあるからあいちゃんの予定にねじ込めばいい。
なるようになる!大丈夫!
自分の中のよわむしを追い出せるように、少しずつでも進めるように、一気にあおいだワイングラスの向こうでらんさんの微笑みが見えた気がした。