わたしとあのこ
何となく私たち3人はそうやって曖昧なまま続いていく気がしていた。
転機は多分、まなちゃんに恋人ができた事。
SNSで見ていたあいちゃんとまなちゃんのお出かけが減って私が誘われる事が増えた。
当たり前なのかも知れないし、私にとっては願ったり叶ったりではあったけど、あいちゃんは本当にそれでいいのか…。もやもやした気持ちが私の中に渦巻いていた。
「あいちゃん、いいの…?」
だからだろう、思わずそんな言葉が零れ出した。
何杯目かのワインを口にしていたあいちゃんはきょとんとした顔でこちらを見つめる。そのままこてっと首を傾げられた、自分の失言に焦る気持ちと可愛いと悶える気持ちが綯交ぜになる。
「んー?何が?」
「……まなちゃん。」
一度言った事は撤回できないと腹を括っていっそ本題を突きつける。まっすぐに見つめた先のあいちゃんは私の言いたい事に思い当たったかの様に一瞬表情を消して、そして何事もなかったかのようにへにゃりと笑った。
その変化を悟れない程馬鹿じゃない、けど、それを本人にぶつける気には流石になれなかった。
「邪魔しちゃうからねー。」
だからいいのー、そう言ってグラスを呷るのを見つめる。あいちゃんは自分の気持ちに自覚があるんだ、その現実は気付いても気付かないフリをしたい物だった。
私じゃ駄目かな、今にも零れてきそうな言葉を飲み込む為私もワインを口に含む。自分で蒔いた種なのに心が折れそうだった。
「さっちゃん優しいなあ。」
「え…?」
手元のグラスを見つめて口に残った渋みと苦い思いを噛み締めてるところであいちゃんがそんな事を言い出した。
目線をあげればムニエルをもぐもぐしながらあいちゃんがこっちを見ていた。
意図する所が分からなくて今度はこちらが小首を傾げてしまった。
「さっちゃんは優しい……。」
2度目の言葉は柔らかかった1度目と打って変わって硬い、その雰囲気に呑まれて目が逸らせない。手に持っていたグラスを取り落すように机に置いた、息も止まってしまいそうだ。
「こんな私なんかに優し「私なんかなんて言わないで…!」
見つめたままだったあいちゃんの目にみるみる涙が溜まっていくのが見えて、紡がれる言葉が苦しくて、どうしようもなく胸が詰まった私は気付いたら立ち上がって手を伸ばしていた。
「私の大好きなあいちゃんなのに、そんな悲しい事言わないで…。」
勢いのままに胸元に収めてしまった頭が小さく振られる、ごめんね、くぐもった呟きが耳に届いた。
じわりとセーターに滲みる冷たさに思わず抱き込む力を強くする、ポタリ、それとは違う雫が私自身の手を濡らした。