第6話 離脱
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アホみたいに上がったステータスを見て呆然と立ち尽くす俺。その隣で呑気にアクビをしている人型のルル。そのルルをありえないものを見たかのように口を開け見つめる3人。足がプルプル震えている五十嵐1人
中々カオスだな。
「と、とりあえず帰るか?」
チラッと3人を見て苦笑いをする。苦笑いをするしかないだろ、この状況は。
「う、うん…」
それから俺達は、集合場所付近まで一切喋ることはなかった。無言って超辛いね。
「あ、そうだ。一応ルルのこと黙っててくれないかな…?」
もし俺のスキルやルルのことがバレたら面倒なことに巻き込まれるかもしれないからな。
五十嵐を抜いた3人は無言で頷いてくれたが、五十嵐は、チッと舌打ちしそっぽを向いていた。まああのビビリ用じゃ喋るようなことはないと思うが。
「ルル、隠れててくれないか?」
「このワシに隠れろと?まぁいいのじゃ…。この辺にいるからさっさと戻ってくるのじゃ。」
「ありがとうルル。」
一応感謝を述べルルの頭を撫でる。フェンリルと言っても人化していればただのケモ耳少女だ。
「ぬぅ〜…」
少し目を細め気持ちよさそうにしていた。婆ちゃん家の柴犬を思い出す。
そんなルルを後にして俺は集合場所に向かった。
森の奥深くまで入ったからだろうか、空は赤く染まっている。
「お、優太!帰ってきたか。」
集合場所に着いて早々、直也が走ってきた。…ルルより犬っぽいっちゃ犬っぽいよな。
「直也達はどうだった?」
「あぁ、魔法って凄えな!まぁ俺なんかよりも王子の方がよっぽど凄かったけどな。」
王子?直也とイケメン君は班が違うはずだが。
「王子と班同じだったっけ?」
「ん?いや、途中で結構な班が合流して一緒に行動してたんだよ。知らなかったのか?」
どういう事だ?そんな事聞いてすらないぞ。何だよその知ってたよな?みたいな顔は。
「い、いや。知らなかったな。」
「あっ…」
正直に返事をした俺に対し、何か思い出したような声を上げる直也。
「どうした?」
「あ、いや…そう言えば合流した奴らの中に平均以下の奴らはいなかったなと思って…」
…という事は何か?イケメン君は足手まといは放置で使えそうな奴だけで動いてたって事か?
少し癪にさわる話だな。
「やあ!皆集合したね!」
イケメン君が爽やかな笑顔を俺たちに向ける。
「班行動をして思ったんだけど、戦闘できるステータスを持つ人と持たない人で別れたほうがいいと思うんだよね!」
…は?コソコソやるのは勝手だが大っぴらに言うか?
「僕達は帰るためには魔王を倒さなければならない。そのためには戦闘に参加できない子は正直足手まといなんだ。それにこんな所でのん気にしていられない、明後日にでもこの国を出てレベル上げをしなきゃならない。」
勇者のイケメン君がステータス平均以下組を捨てれば俺達はどうなるのだろう。この国も俺達を見捨てるのでは無いのだろうか…。
「そのレベル上げについてきてくれるものはいるかい?」
ほぼ学年全員が手を挙げた。人気者だな。
残りの手を挙げてない奴らはステータス平均以下組と、平均以下組に仲がいい友達がいて困っている組だろう。ちなみに後者の組には直也もいる。
「なぁ、イケメン君。」
俺は挙手をする同級生を無視しイケメン君に直接聞くことにした。
「お前が俺達を放っていけば、俺達は死ぬことになるかもしれないんだけど?」
「僕達も命がかかっているんだよ。そんなに心配なら君がその子達を纏めればいいさ。」
ほんとムカつくなコイツ。
「平均以下の俺が纏められるとでも?」
自分で言ってて泣きそうになってくるがここは我慢する。
「ははっ、そうだね。それに偽装を使っていた君についてくる子なんていないと思うしね。」
イケメン君は爽やかに笑いながら俺の傷を確実に抉ってくる。なんて奴だ。
「誰か数人が守ってやるって手は無いのか?」
「無いね。」
即答だった。未だ爽やかな笑顔をやめないイケメン君。中々腹黒い系イケメンだったか…。
ーーやってられないな…。
イケメン君を視界から外し直也を視界に入れる。
「直也!お前らの班でコイツらを守ってやることは出来ないか?」
直也はステータスから見て平均以上だからソコソコは強いはず。他の班のメンバーも直也とあまり変わらないステータスだから直也達に任せると安心できるはず。
「い、いや。俺はいいけど…」
チラッと直也は他の班のメンバーに目を向けた。他のメンバーも頷いている。いい班だな。
「君らは直也達に守ってもらえ。ステータスが平均以下だろうと、この世界の平均よりは断然上のはずだから、焦らずレベルをあげろよ。」
平均以下組を見てニカッと笑う。
「へ〜、ずいぶん優しいね?」
俺もそう思う。平均以下組には顔は知ってるけど名前は知らない奴とか勿論いる。でも放っておくことができなかった。
俺がそうだから言えるんだけどステータスが平均以下と言うのは大分メンタルにくるんだ。
俺は固有スキルがあったからメンタル的には大丈夫だけど他の奴らは違う。
何も知らない世界で放り出されてみろ。速攻で死ぬぞ?
平均以下組の気持ちが分かるからここまで親身になれるのだろう。
「で、君も守って貰うんだろう?よろしくお願いします。くらい言ったらどうだい?」
コイツ、マジで性格悪いな。日本では猫かぶってたのかよ…。最悪じゃねえか。
「俺はお前とは反りが合わないな。」
「はは、君は面白いから平均以下組じゃなくて戦闘組が守って上げるよ」
ーー何様だコイツ。
自分が最強だと思っている態度がイライラする。勇者ってのは弱い人を守ってくれる職じゃねえのかよ。
「俺は出て行く。」
「は?」
俺の返答にイケメンは驚いていた。
今の提案に喜ばれると思っていたのを断られたことに驚いていたのか、出て行くと言う返答に驚いているのか。
「出て行くって、ここからかい?」
「あぁ。」
疑問に肯定する。
「それこそ死ぬと思うんだけど?」
「かもな?」
確かにここを出ると俺のステータスよりもっともっと倍の敵がいるかもしれない。でもそれはどこにいても同じだろう。
「ゆ、優太!マジで言ってんのか!?」
「あぁ。」
俺が冗談でこんな事を言うはずが無い。そもそも皆、重大な勘違いをしていないか?
俺が出て行くのはルルが人化した時から決めてたぞ。まあこの状況は都合よく出て行けそうなので、あえて言わないが…。
よく考えても見てくれ。どこにでもいる普通で平凡的な高校生が、自ら命を捨てるような真似するわけないじゃん!!
ルルというぶっ壊れキャラがいなきゃ俺なんて即死だよ!!!
「や、やめとけって!他の奴らと一緒に来いって!」
「いや、出て行くよ。」
多分俺の諸事情を知っている奴がこの光景を見たら俺の見方が変わるだろう。
「じゃあ直也。生きてたら会おうぜ?」
満面の笑みを見せ、心配ないってのをアピールするために手をひらひらさせる。
なんで満面の笑みかって?もう少しでケモ耳っ子に会えるからだよ。
「い、いや。でも!」
「いいじゃないか。自分で出て行くって言い出したんだ。放っておこう。」
イケメンが直也の説得を止める。
俺はその様子を見て少し笑い、きていたオンボロの鎧を脱ぎ捨てた。
「返すよ。」
「馬鹿、お前!死ぬ気かよっ!」
俺が捨てた鎧を拾い俺に駆け寄ってくる直也を素通りし、貸し与えられた部屋に戻り、隠しておいた鉄の鎧を着た。
「そんな鎧持ってたのか…」
皆がいる部屋に戻り直也に鉄の鎧を見せる。すると直也は手に持っていたオンボロの鎧と俺の着る鉄の鎧を交互に見てからオンボロの鎧から手を離した。
鎧をつけないなんてそんな馬鹿な事があるか。防具つけるだけでステータスがあがるんだぞ!
「じゃあまたな。」
唖然と見守るクラスメイト&他クラスの諸君、この国の姫さんは唖然と俺を見ている。
「平均以下の君が外でやっていけるとは思わないけど、まぁ頑張りなよ。」
イケメンは爽やか笑顔からニヤニヤ笑顔に進化した。テッテレー。
俺は城をでてルルが待つ方へ向か「渡部君!」おうとするのを誰かに呼び止められた。振り向くと鎧をあげた女の子が立っていた。
「ん?どうした?」
「あ、あの。本当に行くんだよね…その…」
こ、ここ、これはっ、まさか!
「…っ装備ありがとう!」
焦ったぁ!告白かと思ったじゃねえか!!俺のピュアな乙女心を弄びやがって!
「あ、あぁ。気にすんな。あ。」
この女の子の腰にはショボい剣が下がっていた。確か10連で鉄の剣が余ってたよな…。あ、部屋に置いてきちゃった。
今から戻るのは…無いわ。
「あのさ、俺がいた部屋のクローゼットの中に鉄の剣が入ってるから、それ使っていいよ。」
場所だけ伝え、俺は女の子に背を向ける。
「じゃ、頑張れよ。」
あまり知らない女の子なので、そのくらいの挨拶でお別れした。
ちょっと遅くなったかな…。
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