第20話 牢屋再び
受験生と言うのは時間が全然ないですね…。申し訳ございません…。
とりあえず俺は目の前にいる王女2名にニコリと笑い、回れ右をした。
「名乗るほどの者じゃないさ。」
「おー!かっこいいー!」
「えっと、渡部優太さん…でしたよね?」
俺の渾身のやり直しを第二王女は受け入れてくれたが第一王女はそれを許してはくれなかった。
「いえ。違います。それは偽名です。田中太郎と申します。それじゃ。忙しいので。」
俺はペコリと頭を下げ、そのままルルとヨヨを引っ張って歩き出した。深く関わるとケモ耳が遠ざかりそうだからな。
「え?いや、あの!」
何も聞いてないし何も聞こえません。そんなオーラを出しながら出口に向かう。
「ちょ、待ってくださいっ!」
第一王女が俺を追いかけて歩いてくるが何も見えない。
「のぉ、ユウタ。ずっと呼んでるのじゃ。」
流石に第一王女が可哀想になったのかルルが俺の袖をグイッと引っ張りチラチラと第一王女を見ながら言った。
「ルル。それはオバケだ。見ちゃいけません。」
「ふぇっ?オバケなの!?」
ヨヨがオバケと聞いてビクッと体を動かした。
「…ヨヨ。オバケ怖いのか?」
「べ、別に怖くないかな!」
怖くないという割には俺の腕を掴む力が強くなっている。ヨヨはヨルムンガンドだ。俺の腕ヤバス。折れちゃうよ。逝っちゃうよ。
「ふっ、ユウタ。ヨヨは昔、霊種に負けかけたのじゃ。それ以来霊種にはめっぽう弱いのじゃ。ぷぷぷ」
「お姉ちゃんっ!それは違うかな!霊種に私の攻撃が効かなくて泣きかけたとかそんな話は存在しないかなっ!!」
顔を綻ばせ笑うルル。顔を赤くし否定するヨヨ。顔を真っ青にし腕が折れかける俺。た、助けて。
「あ、あの〜…」
俺は忘れていた。こんな会話をしている場所が王城だと。そしてついつい足を止めてしまっていたのだった。腕が痛くて。
「やっぱりユウタって名前が本名なんですね?」
ふ。何度聞かれようと俺の答えは変わらない。違うと言い続ければ、すぐに諦めてくれるだろう。
「いえ、違いま「そうじゃ!」す。」
「やっぱりそうなんですね!なんで嘘つくんですか。」
ルルの突然の裏切りで俺の作戦が失敗した。
「くっ、何故だルル!」
ルルの方をくるっと見ると先程まで持っていなかったはずのお菓子が数個手に収まっていた。
「ルルー…?」
「な、なんじゃ?」
「その手に持ってるものはなーんだ?」
なるべく笑顔を保ったままナゾナゾ風に聞いてみる。
「お、お菓子じゃ。」
「そっかぁ。俺はお菓子で売られたのか…」
落ち込んではいないが落ち込んだ素振りを見せるとアワアワとルルが焦りだした。可愛いなんて思ってないからな?いや、本当に。
「う、売ってないのじゃっ!こ、こんなものこうじゃっ!!」
ていっと言った感じに手の中に収まっていたお菓子を第一王女の足元に投げ捨てた。可愛いけども…。
「ルル。食べ物を無駄にしたらダメだぞ。」
「そうだよ、お姉ちゃん!捨てるならヨヨが食べるかな!」
ショボーンとなってしまったルルを撫で撫でして、投げ捨ててしまったお菓子を拾う。
「お菓子すいません。」
「い、いえ。それは大丈夫ですけど…」
おぉ…王城の廊下でお菓子捨てるなんて激オコだと思ったが案外怒ってなさそうで助かった。
「…すみません。それで、俺に何か用が…?」
一応もう一度謝り、流石にお菓子をポイしてまた無視するのは駄目だろう。という事で聞いてみることにした。
「あっ、えっと〜…何でしたっけ…?」
「はい?」
ルルにお菓子を渡してまで名前を聞き出し俺の歩みを止めたと言うのに忘れたというのか。
「その、呼んでも止まってくれなくてムキになってしまったと言いますか…」
「つまり用事はないと?」
優しい優しい俺は笑顔を作ってあげた。多少顔が引きつっているかもしれないがそれは仕方ないだろう。
「ユ、ユウタ…顔が怖いのじゃ。」
「悪い人みたいな顔してるかな。」
俺は無言で自分の顔を触った。触って分かったのだが、笑っているつもりだったが口角が上がっていなかった。俺のポーカーフェイスが見破られる理由がわかった気がする…。
「そ、その…申し訳ありません…。」
「ねーねー!お兄ちゃん!」
謝る第一王女の隣で第二王女がニコニコと俺に話しかけてきた。
「ユリアと遊ぼ!!」
第二王女、いや。ユリアたんと遊ぼう。遊ばずしてなにが男だ!そう俺は心に決めた。
「いいよ。なにして遊ぼうか?」
「おぉ、怖い顔じゃなくなったのじゃ。」
「い、いきなり表情が変わりましたね…」
俺はずっと優しい顔をしているはずなんだけどな…。
「隠れんぼ!」
「断る。」
「ふぇっ?」
つ、つい隠れんぼと言う言葉に反射的に答えてしまった…。俺の過去のトラウマを何も知らないとは言え抉ってくるとは…流石ユリアたんだ。
「あ、あぁ。ごめんね。いいよ、隠れんぼやろうか。」
なるべく隠れんぼは早く終わらせたい。
俺がまだ小学校低学年の頃に隠れんぼをやって隠れていたのに誰も俺を探してくれず放置され、隠れた場所から出てきた頃にはもう誰もいなかった。と言う辛い過去のせいで俺はそれ以来隠れんぼをすることができなくなった。
放置されるのが怖くてとかじゃないからな?
「じゃあ俺が鬼をするから、隠れていいよ。60秒数えるな。1、2、3、4〜」
顔を壁に向けてカウントダウンを始めた途端にドタドタと足音が遠ざかっていく。あ、あれ。これ一人の足音じゃなくね?
「58、59、60!」
60秒数え終わり顔を上げるとそこには誰もいなかった。
あれ?もしかしてユリアたんだけじゃなくてルルとヨヨも?…もしかして第一王女もか…?いや、まさか。帰っただけだよな…。
一人で自問自答しながらとりあえず探すために歩き出した。
しばらく廊下を探し歩いたが誰もいなかった。もしかして部屋の中とかも有りなのかな。それなら結構キツイな。とりあえず近くの部屋から開けてみることにした。
「失礼します〜…よし。いないな。」
そんな感じでどんどんドアを開けて中を確認しながら進んでいった。
「失礼します〜……ん?」
数個目のドアを開けると大きめのベッドが置いてあった。そこにルルがくつろぎながら寝転がっていた。…これ人の家だよね?自室じゃないよね?
「ルル。」
名前を呼んで頭を撫でてみた。ふわっふわな肌触りですなぁ。
「ふふっ。見つかったのじゃ。」
いや、隠れる気なかっただろ!
「ルル、ヨヨと一緒じゃないの?」
「ヨ、ヨヨなんて知らないのじゃ!」
俺の質問に何故か焦った感じで俺の背後を見ているルル。振り向くとそこには大きいクローゼットが。いや、まさかここまで嘘つくのが下手ってことはないよな。何て思いつつ念のためにクローゼットを確認してみた。
「み、見つかっちゃったかな…」
入ってました。
「な、なぜじゃ!なぜわかったのじゃっ!」
いや、本当に。何でわかっちゃったんだろうね…。
「さて。あとはユリアたんだけか。…ルル、ユリアはどこに隠れたの?」
「し、知らないのじゃ。あっ、隣の部屋は見たらダメなのじゃ!」
流石に教えてくれな…隣の部屋かよ。
ルルの頭を感謝の気持ちを込めてひと撫でする。そして隣の部屋のドアを開けた。
ドアの向こうには不自然にもっこり膨らんだ布が置いてあった。絶対コレだろ。
確信した俺はそのままバサッと布を捲ると案の定ユリアたんがうずくまって隠れていた。
「見ーつけた。」
「…」
なぜかユリアは無反応。あ、あれ?気づいてないのかな。
「見つけたよー…?」
「…」
ユリアたんはうずくまったままモゾモゾと芋虫のように部屋の出口に這っていった。
それを見てホラー映画のワンシーンを思い出して鳥肌がたった。あの映画見た後寝れなかったんだよなぁ…。
芋虫歩行で出口まできたユリアたんは、いきなり立ち上がり走り出した。
「まだ捕まってないよー!!」
「えっ」
ズルくない?まぁいい。ユリアたんがその気なら乗ってやるさ。
「ぐへへぇ!待てええぇ!」
「ユウタ…変態なのじゃ。」
「変態かなぁ…」
手をグッパーグッパーしながら幼女を追いかける様はまさにアウトな奴だった。
「きゃあー!捕まるっ〜〜」
ユリアたんはキャハハと楽しそうに笑いながら廊下を走り続ける。さて。そろそろ捕まえよう。そう思った時に俺のお尻に衝撃が走り転けてしまった。
「痛っ!!」
「貴様!何者だ!どこから入り込んだ!!ユリア王女殿下を追いかけ回すなど万死に値する!!」
声をした方を振り向くと騎士甲冑を着た中年くらいのオッサンと数名のオッサン、つまりオッサン数名がいた。
「えっ、いや。」
「おい!こいつを地下牢に打ち込め!」
数名のオッサンに捕まえられ縄でくくられた。
「何でやねん!!」
俺の叫びは王城に響き渡った。
こうして俺は釈放されてから1日も経たずに別の牢へと打ち込まれたのであった。
更新はします!一応最後まで書くつもりです。
次の更新は、いつでしょうか(((




