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たましいさん

「うーん、どうすればいいんだろう?」


 たましいさんはふよふよと駅の構内を彷徨さまよっていました。

 行きたい駅は覚えているのですが、いかんせんたましいです。

 手も足も在りません。そもそも実体がありません。……そしてお金も持っていません。

 なので、券売機で切符が買えないのです。




 しばらくうろうろしていると、えきいんさんが声をかけてくれました。


「どちらに向かわれるのですか? よろしければ案内いたしますよ」


「ええと、あの駅なんだけどさ。ぼく、見ての通り何もを持っていないんだ……もちろんお金も」


「大丈夫ですよ。たましいさんや、ゆうれいさんは特別に無料で乗車できることになっていますから」


「そうなんだ。じゃあこのまま改札を通ればいいんだね?」


「はい」


 えきいんさんに教えてもらい、改札に向かおうとするたましいさん。

 しかし、


「でも、ちょっと待ってください」


 なぜかえきいんさんに呼び止められました。


「ほんとうにその駅で合っているんでしょうか。確かその駅は山の中にあって、おじいさんとおばあさんの二人しか住んでいません。たましいさんが入ることのできる子供は、生まれてこないはずですが……」


「大丈夫、合ってるよ。とりあえず駅周辺に生っている桃の中に入るつもりだから」


 果物のたましいさん?

 とえきいんさんは最初そう思いましたが、しばらくして納得してように手をぽんっと打ちました。


「ああ、なるほど、そうだったんですか。もしかしてあなたは正義感が強かったりしますか?」


「もちろん! 悪はらしめるべきだと思うよ! でもなんでそんなこと聞くの?」


「実は最近その駅の辺りで悪事を働いているやつらがいるみたいなんですよ」


 えきいんさんはたましいさんに駅周辺の治安を教えてあげます。


「それは大変だ! すぐ懲らしめに行かないと!」


 それを知ったたましいさんは急いで改札を通ろうとします――またもやえきいんさんに止められます。


「まあ落ち着いてください。懲らしめるのもいいですが、まず、なぜ悪事を働いているのか気にはなりませんか?」


「悪いやつだから悪いことをするんじゃないの?」


「いいえ、逆です。悪いことをするから悪いやつと言われるんです。良いやつだって、悪いことをしてしまうことがあるでしょう。なんらかの理由で」


「理由? ……その駅周辺にいる悪いやつらも理由があるってこと?」


「そうかもしれませんし、そうじゃないかもしれません。実際に会って話を聞かないとなんとも言えないですね」


「話か…………」


 たましいさんはぽつりとつぶやいた後、しばらく黙ってしまいました。

 そんなたましいさんにえきいんさんはこう促します。


「気になりますか? 実はあなたが行こうとしていた駅の二つ先にその悪いやつらが住んでいるそうなのです。そちらで降りてみれば何か話を聞けるかもしれませんよ」


「悪いやつらかー、ちょっと怖いなぁ。……でもやっぱり理由は気になる。うん、ぼくそっちに行って話を聞いてみることにするよ!」


 たましいさんは行き先を変えることに決めました。なぜ悪いことをするのか、その理由を知るために。


「そうですか。二駅先でももちろん料金は無料ですので安心してくださいね」


「教えてくれてありがとう。じゃあ行ってきます!」


「行ってらっしゃい」


 えきいんさんはふよふよと改札の向こうへ旅立っていくたましいさんを笑顔で見送りました。


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