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おおかみさん

「いったいどこに行けばいいんだ?」


 おおかみさんは困っていました。


 行き先をなんとなく聞いただけだったので、駅名まで覚えていなかったのです。路線図にはいっぱいの駅が並んでいてどこがどこだかさっぱり分かりません。


 そこへ、えきいんさんが声をかけてきました。


「お困りのようですね。どちらに向かわれるのですか? よろしければ案内いたしますよ」


 その親切な言葉に、おおかみさんはぷいっとそっぽを向いてしまいます。そして、すぐ「助けは必要ない、あっち行け」と訴える目をえきいんさんに向けました。


「おやおや違いましたか。これは失礼しました。いやあ三十分くらい路線図とにらめっこしていたので、てっきり困っているのかと」


 どうやらずいぶんと前から見られていたようです。言い訳もできず無性に恥ずかしくなったおおかみさんは、


「ああ、困ってんだよ。駅員ならさっさと案内しやがれ!」


 と開き直って叫びました。


 う~っとうなって牙を見せるおおかみさん。

 しかし、えきいんさんは怯えることなく、おおかみさんにもう一度質問をします。


「どこに向かわれるのですか?」


「……近くの田舎だよ。で、トンカツが美味い所だ」


「ふむふむ」


 少ない情報でしたが、えきいんさんにはどこか検討がついたようです。うんうんと頷いて次に確認をします。


「お一人で行かれるのですよね?」


「ああ? なんか文句あんのか?」


 おおかみさんはぎろりと睨みつけます。


「いえいえ文句なんてまったく。ただ、ご飯はみんなで食べる方がおいしいと思いまして」


「……けっ、ひ、一人でも変わんねえよ」


 ぶっきらぼうに言う割りに、どこか寂しそうに目が泳ぐおおかみさん。一匹狼を気取りたいんでしょうが、根は寂しがりやなようです。


「い、いいから早くどの駅に向かえばいいか教えろ!」


「落ち着いてください。ええとトンカツの食べれる場所がある駅はですね……」


 これ以上怒らせると噛まれそうだったので、えきいんさんは目的地の駅を教えてあげました。そして、こう付け加えます。


「でも一つ前の駅もまた田舎でしてねえ、森の中にその駅はあるんですよね。あなたの仲間であるおおかみも結構いますよ。ちょっと立ち寄ってみるのもいいんじゃないかと――」


「必要ねえって言ってんだろ! 俺はもう行くからな!」


 おおかみさんはそう吐き捨てて、切符を買いに行ってしまいました。


「やれやれ」


 えきいんさんは一息つきます。しかし、やはり気になってこっそりとおおかみさんの後をつけてみることにしました。


(あっ……!)


 おおかみさんが口に咥えた切符がちらりと見えました。行先はおおかみ仲間が多くいる森でした。


(ふふっ、友達ができるといいですね。一匹じゃなければもしかすると――)


 えきいんさんは気付かれないよう、小さく手を振っておおかみさんを見送りました。


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