5.彼と彼女の深情
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「…………」
城ケ崎はまず、何も言わずに立ち上がり、冷蔵庫を開けるとウーロン茶を取り出し、食器籠からコップを二つ取り出すとそれにそれぞれなみなみと注ぎ、一つを山代に、一つを自分が持ったまま椅子に戻って座りなおして、一口飲むとようやく、
「………は?」
レンアイ相談、と言ったか、今。
レンアイ相談?
恋愛相談?
字、合ってるか?
山代は俯いたまま手中のウーロン茶の水面を見つめている。下がった髪に隠れて表情は窺えない。
恋愛相談だって?
変愛相談じゃなくて?
いや、自分でも言ってて意味がわからないが。
人選をミスってないか? と言いそうになった。
「人選ミスってんじゃないのか」
ていうか言った。
「えあー………いやあ、まあそうなんだけど」
認めやがった。
半目で見ていると、山代は慌てたように顔の前でぶんぶんと手を振って、
「いやでも、ほら、他にいなくてさ。こういうこと相談できるの」
「いやいやいや。いるだろ。いまくるだろ。お前友達いないのか? よりにもよって俺って。同性に頼めよ。っていうかそこは相生に相談しろよ」
そういうと、山代は唐突に停止した。曖昧な笑みを浮かべていた顔も凍りついた。
そして、みるみるうちに真っ赤になっていった。
「………は?」
完熟トマトか。
わけがわからずに黙って見ていると、山代は段々と涙目になっていき、ゆっくりと顔を手で覆い隠し、
泣き始めた。
「え、あ、ちょっと、」
もう何がなんだかわからない城ケ崎は、ひたすら慌てるしかなかった。
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