21.彼と彼女の抑情
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相生が、山代の気持ち、同性に対する恋愛感情を、城ケ崎と同じように認めてくれるかどうかが、わからない。
わからなくて、怖い。
もしも、もしもそれを打ち明けたとして、そしてその上で、相生が山代を、それが理由で拒絶してしまったとすれば。
同性間恋愛を受け入れられないが故の、拒絶をされれば。
「きっと私は、堪えられない」
山代は、静かにそう続けた。
「私は、それが一番辛い。何よりも、辛い。美樹に打ち明けずに、私の中で隠し続けることよりも、もっとずっと、辛い」
そうなるくらいなら、と山代は言う。
「そうなるくらいなら………私は黙って、黙ってる。黙って、堪える」
拒絶されるよりは、ずっといい。
「今のまま………今のまま変わらずに、友達としている方が、いい」
「…………………………」
城ケ崎は――――何を言えばいいのか、わからなかった。
とっさには、何も言えない。
だから、考える。
友達のままは、辛い。
でも、拒絶されるのは、もっと辛い。
拒絶されてしまうくらいなら、今の状態に甘んじる。
友達のままでいるという辛さに、堪える。
拒絶される辛さには、堪えられないから。
「…………………………」
「私は、今の関係が壊れちゃうのは、嫌なんだ。今の距離感が壊れちゃうのは、友達のままでいることより、もっと嫌だ。だから、壊れちゃうくらいなら、」
「でも」
城ケ崎は言葉を挟み込んだ。反射的に山代は言葉を止める。
でもさ、と城ケ崎は続けた。
「でもさ………嫌なんだろ? それも」
しばらくの間を置いた後で………山代は、頷いた。
頷いた。
「お前が――――それでいいっていうんなら、それでもいいとは思う。友達のままで、それでお前が堪えられるんなら。お前がそれで納得できるんならさ。でもさ。俺が訊きたいのは、そういうことじゃないんだよな」
下がっていた視線を、山代はゆるゆると城ケ崎まで上げた。
「それでいいのかよ」
容赦なく、城ケ崎は言った。
「それでいいのかよ? って、俺は言いたい。まあ、至極無責任なことなんだけどな。でも俺は言うぞ。いいか?
それでお前は――――いいのかよ」
淡々と、努めて淡々と、城ケ崎は言う。
「友達のままは嫌なんだろ」
淡々と、
「相生の、彼氏との惚気話聞くたびに嫉妬してたんだろ」
あえて黒い言葉を使って、
「彼氏ができるたびに早く別れろって、羨んでたんだろ」
抉り込むように、
「別れたって聞くたびにざまぁみろって喜んでたんだろ」
傷に塩を塗り込むように、
「そんでもって、さ」
言う。
「そういう自分が、嫌だったんだろ」
最低だって、最悪だって、思ってたんだろ。
嫌ってたんだろ。
憎んでたんだろ。
「堪えられるのか、本当に」
ずっとそのままで。
ずっとそんな距離感で。
ずっとそんな関係で。
もう一度、言う。
「友達のままは、嫌なんだろ」
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