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彼女の事情  作者: FRIDAY
21/28

21.彼と彼女の抑情

 


 ●



 相生が、山代の気持ち、同性に対する恋愛感情を、城ケ崎と同じように認めてくれるかどうかが、わからない。

 わからなくて、怖い。

 もしも、もしもそれを打ち明けたとして、そしてその上で、相生が山代を、それが理由で拒絶してしまったとすれば。

 同性間恋愛を受け入れられないが故の、拒絶をされれば。

「きっと私は、堪えられない」

 山代は、静かにそう続けた。

「私は、それが一番辛い。何よりも、辛い。美樹に打ち明けずに、私の中で隠し続けることよりも、もっとずっと、辛い」

 そうなるくらいなら、と山代は言う。

「そうなるくらいなら………私は黙って、黙ってる。黙って、堪える」

 拒絶されるよりは、ずっといい。

「今のまま………今のまま変わらずに、友達としている方が、いい」

「…………………………」

 城ケ崎は――――何を言えばいいのか、わからなかった。

 とっさには、何も言えない。

 だから、考える。

 友達のままは、辛い。

 でも、拒絶されるのは、もっと辛い。

 拒絶されてしまうくらいなら、今の状態に甘んじる。

 友達のままでいるという辛さに、堪える。

 拒絶される辛さには、堪えられないから。

「…………………………」

「私は、今の関係が壊れちゃうのは、嫌なんだ。今の距離感が壊れちゃうのは、友達のままでいることより、もっと嫌だ。だから、壊れちゃうくらいなら、」

「でも」

 城ケ崎は言葉を挟み込んだ。反射的に山代は言葉を止める。

 でもさ、と城ケ崎は続けた。

「でもさ………嫌なんだろ? それも」

 しばらくの間を置いた後で………山代は、頷いた。

 頷いた。

「お前が――――それでいいっていうんなら、それでもいいとは思う。友達のままで、それでお前が堪えられるんなら。お前がそれで納得できるんならさ。でもさ。俺が訊きたいのは、そういうことじゃないんだよな」

 下がっていた視線を、山代はゆるゆると城ケ崎まで上げた。

「それでいいのかよ」

 容赦なく、城ケ崎は言った。

「それでいいのかよ? って、俺は言いたい。まあ、至極無責任なことなんだけどな。でも俺は言うぞ。いいか?

 それでお前は――――いいのかよ」

 淡々と、努めて淡々と、城ケ崎は言う。

「友達のままは嫌なんだろ」

 淡々と、

「相生の、彼氏との惚気話聞くたびに嫉妬してたんだろ」

 あえて黒い言葉を使って、

「彼氏ができるたびに早く別れろって、羨んでたんだろ」

 抉り込むように、

「別れたって聞くたびにざまぁみろって喜んでたんだろ」

 傷に塩を塗り込むように、

「そんでもって、さ」

 言う。

「そういう自分が、嫌だったんだろ」

 最低だって、最悪だって、思ってたんだろ。

 嫌ってたんだろ。

 憎んでたんだろ。

「堪えられるのか、本当に」

 ずっとそのままで。

 ずっとそんな距離感で。

 ずっとそんな関係で。

 もう一度、言う。



「友達のままは、嫌なんだろ」



 ●



 

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