19.彼と彼女の幽情
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「まず、結論を先に言っておく。────女が女を好きになるのは、変だろうってお前は言ったな」
城ケ崎の言葉に、山代は目に見えて全身を強ばらせた。それに対して、城ケ崎は山代をまっすぐに見据えて、
「俺は、それが変だとは思わない。全く」
一拍置いて、空気が抜けるように山代の肩から力が抜けた。
やはり、相当に不安だったらしい。
「そりゃあ多少は驚くが………好きになるっていうなら、なるんだろう。相手が男だろうが女だろうが」
城ケ崎だって、その当時は、城ケ崎が恋愛していた当時には、純粋に『好き』という感情を持っていた。
はずだ。
今となってはもう、当時の感情など覚えているはずがない。あったはずだと思うばかりだ。
それどころか、逆に、全て嘘だったような気もする。
嘘だったと、言うつもりは毛頭ないが。
なってしまうものは、なってしまうのだ。
望むと望まざるとに関わらず。
「多分、そういうものが恋愛っていうものなんじゃないかと、俺は思うよ」
別に、城ケ崎は恋愛の先達だとか恋愛マイスターであるということはないのだが。
あくまでも、城ケ崎の個人的に思うところ、だ。
いちいちこれを言っているときりがないのだが。
「誰かを好きになるっていう気持ちに、異性も同性も関係ないだろうさ」
言っていて、何だか気恥ずかしいような、むず痒い気持ちになってきた。
歯が浮く台詞、とはこういうものか。
しかし、山代はじっとこっちを見つめながら神妙に聞いている。
やめるわけにも、いくまい。
「それで、だ。お前に、訊きたいことがある」
いいか? と視線で問うと、山代は小さく頷いた。だから、単刀直入に訊く。
「お前は、どうしたい?」
ひくっ、と山代は肩を震わせた。
「俺は、お前が相生を、恋愛的に好きだってことを、変だとは全く思ってない。思わない。その上で――――っていっても、まあ、俺だけじゃあ足りないだろうけども――――まあ、その上で。お前は、どうしたいんだ?」
静かに、ゆっくりと問う。山代は、わずかに視線を逸らし、さまよわせ、
「どう、って?」
「関係の話だ」
人間関係の話。
「素直に素朴に正直に率直に、お前は、相生とどうなりたい」
揺れる山代の瞳を見据えながら、城ケ崎は訊く。
「お前は、相生と、友達のままでいたいのか? それとも、――――そう、恋仲に、なりたいのか?」
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